「もう銀行はいらない」上念司
2020/10/26公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(74点)
要約と感想レビュー
日本が勝っていたのは精神力
日本長期信用銀行から独立して、経済評論家として活動している上念さんが教える銀行の現状です。護送船団方式が長かった銀行経営において,預金をある程度集めれば,銀行経営は非常に簡単でした。
なぜなら利率は横並びであり,貸し出しする場合は担保を取ればいいからです。担保や個人保証を必ず取る,設立1年未満の法人は口座を断るということが,現在も行われているのです。著者の後輩も、信用金庫の窓口で「設立1年未満の法人は新規口座開設できません」と言われたという。
銀行が融資をする判断する基準は極めて単純です。大変残念ですが,もともと返せるお金を持っている人かどうかを判断しているだけなのです(p20)
国債だけでは儲からない
そうした固い経営を行う一方で,これだけ公定歩合が下がってしまうと国債を買うだけでは利益を確保することが難しくなってきました。ところが銀行には、ベンチャー企業など将来性のある事業を見極めるノウハウがまったくありません。
だから、今の銀行は怪しげなサブリースによる賃貸不動産に貸し付けたり,高い手数料の投資信託を売りつけるようになってしまっているというのです。銀行の良心はどこにいってしまったのか,というのが上念さんの思いなのです。
つまり、賃貸アパート経営の「サブリース」とは、建設業者が30年とか35年一括で全室を借り上げ,さらに空室があっても家賃を保証をするというものです。しかし,これには裏のカラクリがあり、建設業者はしばらくすると家賃を値下げすべきだと提案するという。そして、提案を無視した場合,実は一括借り上げが打ち切られることが契約書に書いてあるわけです。
投資信託の手数料はぼったくり・・・三井住友銀行の公式サイトで2019年4月の販売額ナンバー1だったのは「ダブル・ブレイン」という投資信託です・・・1億円未満の場合,購入時に3.24%,それに加えて毎年約2%の手数料が抜かれることが明記されています(p79)
ベンチャーに金を貸さない銀行
銀行マンであったからこそ,今の銀行のあり方に疑問を持たれるのでしょう。まじめなベンチャーには金を貸さず,怪しげな企業に金を出す現状もいずれ変わっていくのでしょうか。
著者が残念に思っているのは、2017年の北アメリカにおけるベンチャー企業の資金調達額は,世界全体の半分の8.4兆円なのに対し、日本におけるベンチャー企業の資金調達額は過去最高のたった2717億円という事実です。
著者も2018年に銀行融資を受けたときに、担保の代わりに個人保証を要求されたという。日本ではベンチャーは個人保証が必要で、失敗すれば復活できない仕組みになっているのです。
地方銀行が危ないとの話もありますので,もう少し銀行経営を見ていきたいと思います。上念さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・信金や銀行の融資は事業の中身や将来性よりも,「誰の紹介か」ということが重視されている(p17)
・「ゆとりローン」・・・6年後とか11年後から金利が上がって返済額が大幅に増えるローン・・・破産件数全体に占める住宅ローン破綻の割合は,1997年は5%でしたが,2000年には7%,2002年には9%と,右肩上がりで増加しています(p143)
・速水優・・・2000年に早すぎるゼロ金利解除をして金融引き締めに向かい,消費税増税から立ち直りかけた日本経済を奈落の底に突き落とした張本人です(p170)
・白川方明(まさあき)日銀総裁・・・リーマン・ショック発生後,主要先進国の中央銀行がケタ違いの金融緩和を行って景気回復を図ったのに,白川日銀は頑なに金融緩和を拒否したのです。その結果,ドルやユーロやウォンが大量発行されているにもかかわらず,日本円だけが不足する・・・1ドル80円台,70円台といった超円高を招き,輸出関連企業が軒並み収益を減らします(p184)
上念司、ダイヤモンド社
【私の評価】★★★☆☆(74点)
目次
序章 質屋と同じ銀行なんていらない
第1章 非効率極まりない銀行業務
第2章 銀行の消える日がやってくる
第3章 消費者金融も焼け石に水
第4章 銀行経営はがんじがらめ
第5章 銀行と裏社会
第6章 何も変わらない銀行の体質
第7章 「銀行大崩壊時代」の結末
終章 日本の銀行が変わる究極のプラン
著者経歴
上念 司(じょうねん つかさ)・・・1969年東京都生まれ。1993年中央大学法学部卒。日本長期信用銀行から,学習塾「臨海セミナー」に転職後,独立。2007年より、経済評論家。勝間和代と「株式会社監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任。現在は代表取締役。
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