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「水道民営化で水はどうなるのか」橋本 淳司

2020/07/25公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(71点)


要約と感想レビュー

水道事業が曲がり角にさしかかっているのだという。人口減少、水の使用量減少、職員減少、過去の過大投資による借金の負担で水道料金は上げざるをえないというのです。さらには設備の老朽化に対応するための設備投資資金を、どのように出していくのかが問題です。


1980年代に全国に7万6000人いた水道職員は、2014年には4万7000人になったという。人口減少と水の使用量が効率化されたため、設備の稼働率が低下して、水道事業の固定費を回収しにくくなっているのです。同時に法定耐用数40年を経過した水道管は15%で、こうした老朽化により、破裂事故は毎年1000件を超えているのです。設備のすべての更新には130年以上かかるといわれているのです。


この本では、現状を冷静に説明し、国内外の事例を紹介しています。例えば、宮城県では上下水道、工業用水道の運営を一括して民間委託するコンセションを検討していますが、上迎水道、工業用水道で年間60億円かかっている費用を1~2割削減できるとしています。具体的には、遠隔監視システムの導入、IoT活用、浄水にかかる薬品を一括購入するなどです。


今後の水道事業は何かを変えていかなくてはならないのは明白であり、それは民営化とか公営といった手段だけの議論では不十分なのでしょう。答えを提言するわけではなく多くの人に現状を理解してもらい議論に入ってもらいたいという一冊でした。橋本さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・一人あたりの生活用水使用量は減っています。2000年頃は一人一日322リットルほどでしたが・・・現在は297リットルほどになっています(p4)


・PFI(プライベート・ファイナンス・イニシャチブ)を導入していたロンドンの鉄道事業、マンチェスター市のごみ処理事業は失敗し、自治体の業務を請け負っていたカリリオン社は経営破綻しました(p29)


・岩手県北上市、花巻市、紫波町・・・水道事業の統合案が出されました・・・肝心なのは人材の確保です。一部事務組合の場合、職員は管轄する役所からの出向が一般的です。出向の場合、約3年の人事異動で職員が代わるため専門性が蓄積されません。そこで菊池さんは「新しい企業団は専任職員だけで」と決めて、北上市長に「3年だけでいいという根性のないやつやいらない」と直談判し了承してもらいました(p37)


▼引用は、この本からです


【私の評価】★★★☆☆(71点)


目次

第一章 水道は大きな曲がり角――現状と法整備
第二章 水道法の改正で何が変わるか――コンセッション方式とは
第三章 水道再公営化に向かう世界――イギリス,フランスの場合
第四章 小さな自治体でもできること――さまざまな選択肢
第五章 新時代のまちと水道――市民参加の現場から
第六章 「水点」からの発想――少数居住地域でも柔軟に



著者経歴

橋本 淳司(はしもと じゅんじ)・・・1967年生まれ。学習院大学卒業。水ジャーナリスト、アクアスフィア・水教育研究所代表。水と人の未来を語るWEBマガジンaqua‐sphere編集長。現在、NPO法人ウォーターエイドジャパン理事、NPO法人地域水道支援センター理事、水循環基本法フォローアップ委員会委員


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