「会社にお金を残す経営の話」椢原浩一
2020/07/17公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(80点)
要約と感想レビュー
固定費と変動費を分ける
黒字化再建コンサルタントを自称する椢原(くにはら)さんの一冊です。その手法は「限界利益」に注目し、「限界利益」で固定費を回収するという考え方で利益を正確に把握するもの。「限界利益」とは、1つの商品を売ったときの利益で、商品の売価から原価(コスト、変動費)を引いて求めます。
つまり、固定費と変動費を分けて、売上から変動費を引いた限界利益を把握する。その限界利益で固定費が回収していくという考え方です。固定費は商品が売れても売れなくても出ていくお金ですから、営業活動自体には影響はないのです。
「限界利益だけをみる」・・「節税をしても会社にはお金が残らない。納税をすればお金が残る」(p3)
限界利益で固定費を回収する
そして大切なのは、固定費を除いた限界利益に注目することです。もし事務所や総務・経理といったバックオフィス費用をそれぞれの商品や事業別に配分するなら、配分の考え方を明示し、見えるようにしておくことです。固定費の割り振りが適切でないと、本来利益が出ている商品も利益が出ていないように見える場合があり、経営判断を間違える要因となりえるのです。
利益がでているのか、いないのか。固定費をどう回収するのか。こうした判断を現実を把握し、適切に判断するのが経営者の役目なのでしょう。一部の会社では、本来は利益が出ているのに、赤字の事業として扱っているために見当違いの経営判断をしてしまい業績が悪くなっている企業もあるらしいのです。
著者の言葉を借りれば、利益そのものは通帳のどこを見てもわからないのであって、限界利益という正しい利益があるからこそ、未来に事業を存続させるためのコストをかけることができるのです。
限界利益が固定費を上回れば、その瞬間から利益が出る・・・だからこそ、社員と今どれだけの利益が出ているかということを月中で共有することがとても重要だ(p125)
経営状況を会計で把握
アメーバ会計に近い手法だと思いました。会社のどの部分が利益を出して、損失を出しているのか把握することで、正しい経営判断ができるのです。いかに真実の経営状況を会計で把握できていない会社が多いのか、ということだと思いました。
特に、節税をしすぎてはいけないというアドバイスが印象的でした。いかに納税を嫌い、節税に走る社長が多いのかということです。節税のために無駄なお金を使うくらいなら、納税をして、税引後利益をしっかりと内部留保するほうが会社を強くし、企業継続のコツなのです。椢原さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・変動費は「売上」に比例するものではない・・・「変動費」は数量に比例すると考えるのが最も妥当だ(p118)
・会社のビジネスプロセスを明確にし、そのプロセスでどういう業務があるのかを調べ、その業務が必要なのか、止めることができないのか、代替できないのかを検討することが重要なことで、科目だけを眺めていても何も発見できない(p106)
・会社にとって大事なことは、経営者が直接社員に話をすること・・・組織のカタチや役職を使って、何かをするのは中小企業には向かない(p129)
・いつ何が起きるのかは誰にもわからない以上、経営者の責任で、年齢に関係なく、自分にもしものことがあったときはどうするのかを決めておくこと(p156)
【私の評価】★★★★☆(80点)
目次
プロローグ 破たん会社から再スタート、超黒字会社に
第1章 遼、経営者としてゼロからの出発
第2章 遼、会社にお金を残す仕組みを理解する
第3章 遼、奮闘し超黒字企業にする
第4章 武志、最後の意思決定
第5章 〈まとめ〉櫻田ノートで復習する
著者経歴
椢原浩一(くにはら こういち)・・・経営コンサルタント。KRB コンサルタンツ株式会社代表取締役社長。認定事業再生士(CTP)。黒字メソッドR 実践会主宰。1964 年大阪生まれ。指導社数1019 件、相談件数3575 件、再生件数352 件、一年黒字改善率91.3%の実績を持つ。なかでも、「黒字化」は、一年で黒字にする「黒字メソッドR」を確立し、9割を超える。「リスケからの再建」については、黒字メソッドR によるBS、PLの改善、金融機関との信頼構築を指導し、数多くのリスケ脱却を実現。「第二会社による事業再生・事業承継」は、100%の成功率を誇り、債務ゼロ化の再生社数は、日本トップクラス。
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