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「松岡洋右と日米開戦: 大衆政治家の功と罪」服部 聡

2020/07/18公開 更新
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【私の評価】★★☆☆☆(61点)


要約と感想レビュー

ヒトラーを模倣する松岡洋右

ちょび髭の松岡洋右(まつおか ようすけ)とは何だったのか、考えるために読んでみました。歴史的事実を見ると、松岡はナチスのヒトラーに似ているように見えます。


政友会代議士となった松岡は、1931年5月の衆議院本会議において「満蒙は我が国の生命線」であると表現したうえで、日本が経済的困難の中で満州権益を確保するよう主張しました。また、松岡はナチスを模倣して、既存政党を解消して、全体主義的な挙国一致体制をつくりあげることを主張しました。


さらに松岡は。日独伊の三国同盟を締結しました。その目的は対英米戦争の回避でした。ヨーロッパを支配しそうなドイツと組むことで、英米をけん制しようと考えたのです。また、ヨーロッパを支配しそうなドイツと組むことで、大英帝国を解体しアジアのイギリス権益を手に入れようとしたのです。


・すでに大国となっている日本には、国際社会において相応の地位と待遇が与えられるべきであるという共通の意識があった(p36)


三国同盟で英米戦争は不可避となる

松岡は満州鉄道の理事、副総裁を歴任しており、満州利権に固執したため、アメリカによる中国利権の放棄要求は絶対に飲めなかったように見えます。


つまり松岡は、もはや英米の陣営に妥協することは難しく、また、英米の主張に従って「満州」などの植民地を放棄することも不可能であるため、日本には独伊と提携して英米と交渉していく以外の選択肢はないと考えたのです。実際には、三国同盟を締結したことによって、日本と英米との対立は決定的となり、英米戦争へ突入していくことになります。


・中国大陸で得られる戦略物資は乏しく、石炭と鉄鉱石以外には見るべき資源はなかった。その結果、日本は、「東亜新秩序」をめぐって英米と対立する一方で、その英米への貿易依存度を高めるという矛盾に陥った・・・石油に至っては総輸入量の90%以上を対米輸入に依存していた(p43)


なぜ三国同盟を締結したのか

疑問点があるとすれば、ドイツはイギリス本土上陸作戦ができない状況にあり、ドイツがイギリスを攻めるという南進政策の前提条件は、日独交渉の時点で崩れつつあったにもかかわらず、三国同盟は成立したことでしょう。そもそも日本は英米に石油などの戦略物資を依存しており、対立することはできなかったのであり、自己矛盾に陥っていたといえます。


日本国内には、日独伊ソの4国同盟を推進するグループがいましたが、松岡はソ連を信じられないと考え、4国同盟には反対であったというのです。


本書では歴史の流れをたどるだけで、松岡という人間を研究しているようには思えませんでした。松岡という人間を深く調べ、その考え方、思想、経験という状況証拠を集めることで何かしら見えるものがあるはずなのです。もう少し松岡洋右という人間を調べてみたいと思います。服部さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・民主主義と資本主義経済が世界に浸透し、国際分業の進展によって世界経済が多極化した時代こそ、1920年代であった。ところが、大恐慌の発生によって暮開けた1930年代の国際社会では・・高関税や非関税障壁による保護貿易主義が世界的に広がり・・(p3)


・近衛は、講和会議の開催に先立つ2018年11月に「米英本位の平和主義を排す」と題する論文を発表して・・帝国主義の排斥と人種の平等を追求すべきであると主張したのである(p12)


・満州事変以後の外務省は、親英米派、アジア派、革新派に分かれていた・・・(p106)


・1940年9月16日の臨時閣議と19日の御前会議おいて提起された疑義、すなわち三国同盟の成立にともなって発生が予想される諸問題は、松岡らが展開した強気と楽観に満ちた答弁によって押し切られた(p119)


▼引用は、この本からです


【私の評価】★★☆☆☆(61点)


目次

松岡洋右という人物―外交官・満鉄・代議士
現状打破で行き詰まった日本
「自主外交」から南進政策へ
日独伊三国同盟
破綻した南進政策
破綻した日米関係



著者経歴

服部聡(はっとり さとし)・・・1968年、群馬県生まれ。1993年、新潟大学法学部卒業。1999年、神戸大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。現在、大阪大学外国語学部非常勤講師


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