「米露開戦1~4」トム クランシー
2019/12/04公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(86点)
要約と感想レビュー
ロシアによるウクライナ侵攻をアメリカ大統領の息子を主人公にアメリカの諜報機関が阻止するという一冊です。本書出版されたのが2013年12月、ロシアがウクライナ侵攻に動き出したのが2014年2月以降ということで、未来を予言していたことになります。最終的にロシアはクリミア併合で侵攻を止めましたので、本書のストーリーどおりとなったのです。
・ロシアはウクライナに侵攻します・・まずはクリミア半島の併合。次いで、欧米による抵抗がなければ、そこからさらにウクライナの領土を獲りにいきます。はるかドニエプル川までね(1巻p93)
この本の面白いところは、ロシアの行政を支配する元諜報人脈、ロシアの経済だけでなく、軍や諜報機関、マフィアの現実をトレースしているところでしょう。放射性物質による暗殺、ウクライナへのガス供給停止、マフィアを使った暗殺。合法的な企業の乗っ取り。こうしたロシアの現実をうまくストーリーの中に盛り込んでいる。おそロシアなのです。
・ロシアに出入りする投資資金の出所および行き先のトップ5はすべて租税回避地(タックスヘイブン)です・・ロシア経済の稼ぎの三分の一が腐敗によって吸い上げられている(2巻p92)
本書はトム・クランシーの遺作となりました。その後は、ハーバード大学卒のマーク・グリーニーがジャック・ライアンシリーズとして継承してくれています。ヘタな国際政治や、地政学の本よりぜんせん面白い。クランシーさん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・ウクライナの人口は約5000万人、その六分の一はロシア人です・・・クリミア半島には黒海艦隊が拠点をおく基地があります。ウクライナには、ロシアにとって重要きわまりない市場であるヨーロッパへ石油と天然ガスを供給するパイプラインがあります(3巻p147)
・反国営天然ガス企業ガスプロム・・・コマンドをいくつかコンピューター端末に打ち込むだけで、ヨーロッパ中の多くのエネルギー供給をストップさせ、何千万人もの人々を寒い暗闇に追いやり、産業と輸送機関を麻痺されることができるのだ(3巻p44)
・現在、行政府および立法府で働く者の大部分が、対内保安か対外諜報を担当する機関、すなわちFSBかSVR、またはGRU(ロシア軍参謀本部情報総局)の出身者になっている(1巻105)
・外国の民間投資家たちが数十億ドルを投入して利益があがるまでにした会社を、ロシアという国家の諸機関が恥ずかしげもなく共謀して国有化してしまったのだ(1巻p145)
・この種の乗っ取り屋にうまく買収されてしまう会社は年間400社にものぼる・・・これによって外国の投資家が怯え、ロシアへの投資が控えられる(1巻p192)
【私の評価】★★★★☆(86点)
著者経歴
トム・クランシー(Tom Clancy)・・・1947年メリーランド州ボルチモア生まれ。1984年『レッド・オクトーバーを追え! 』が大ベストセラーとなり、流行作家の仲間入りを果たす。同作の主人公ジャック・ライアンが活躍するシリーズのほか、『オプ・センター』シリーズや『ネットフォース』シリーズ(いずれも共著)など、数々のヒット作を生み、ゲーム制作にも乗り出した。2013年死去。
マーク・グリーニー(Mark Greaney)・・・1967年生まれ。アメリカ合衆国の小説家。ミステリーおよびスリラー小説を手掛け、トム・クランシーの共著者としても知られている
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