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「支配の構造 国家とメディア―「世論」はいかに操られるか」堤未果、中島岳志、大澤真幸、高橋源一郎

2019/08/11公開 更新
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支配の構造 国家とメディア――「世論」はいかに操られるか (SB新書)


【私の評価】★★☆☆☆(63点)


要約と感想レビュー

一部切り取って批判する手法

これまで共産勢力は新聞、テレビといったマスメディアに細胞を配置することによって、日本の国民をコントロールして言うことを聞かない政権を潰したり、日本の政策を左右していました。ところがインターネットの登場で、その支配構造が崩れてきただけでなく、重要なポストを失うようになってきたようです。


それに対する最後の抵抗が、このような本となって出版されているように感じました。この本の特徴は、表面的な事実だけをもっとらしく並べて、結局、報道の自由が制限されたなどと政権を批判する形となっています。実は官邸記者会見で仲間の記者がわざと理不尽な質問を繰り返しているのも、官房長官をイライラさせる作戦なのです。


官房長官が反論したり、会見を打ち切ったところだけ切り取って、言論の自由が制限されたと批判する。そんな工作活動であることはユーチューブで記者会見を見ればわかることなのです。


邸記者会見で官房長官が記者の質問を理不尽に制限したとして、新聞労組が「報道の自由」を訴える反対声明を発表。それを見て、発言制限どころか記者会見自体に入場制限をかけられている海外メディアや独立ジャーナリストたちから、そもそもの情報アクセスが不平等であることへの不満の声が上がる(p7)

安倍政権は極右とレッテル貼り作戦

また、共産主義者にマスコミが支配されていることに危機感を持った一般の人が、安倍政権を支持しているという現実があります。そこを逆手に取って、安倍政権は極右であり、そのような思想が社会を覆っているなどと現実と乖離したことを平気で主張しています。この手の人たちのいつもの手口なのです。


中島岳志氏は、NHKなどのマスメディアが「これをやったら抗議がくる」と勝手に自主規制している。そこに権力が内在していると、人の主張を引用する形で批判しています。権力でも権力でなくても、偏向報道はやっていはいけないのです。事実や現実を伝えるのがジャーナリストの役割であることを理解していないのでしょうか。


右翼的で単純な思考の党派が社会を覆っているにもかかわらず、みんなそのことに気づいていないのが今の日本だと思います(高橋源一郎)(p114)

偏向報道も議論の場?

この本の中で、堤未果氏は、個々のジャーナリストはそれこそ極左、左派、中道左派、極右、右派、中道右派など、様々なスタンスがあって当然とし、だからメディア自身が中立になることよりも、様々な視点を排除せず、議論のテーブルに載せる「場」を提供することが大事と主張しています。中立でない偏向報道を説明すると、こうなるのでしょう。


よくこんな説得力のない本を出版できるものだと感心しました。世論をコントロールする仕事ととして書いているので、この程度で十分通用すると思っているのでしょうか。良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・仮に今、日本の自衛艦が中国の船と衝突して、現場でにらみ合いが続いているという事態になったとして、日本のメディアが「実はあれば日本側から仕掛けたものだ」という情報をつかんだとします。果たしてジャーナリストがその公表のために動けるか。まず無理でしょうね(高橋源一郎)(p63)


・ネーションに内在している人々はみんな、「自分たちのネーションは古い」と思いたがり、そのように自己主張するのです・・たとえば、「3000年近く前に最初の天皇が即位して・・」みたいなことを、ネーションの起源の歴史的事実だと言ったりする。・・・「天皇」と呼ばれるものにつながった支配者が存在したかもしれませんが、その人は「日本」に君臨したわけではないし、ネーションとしての「日本」の自覚など微塵ももっていなかったはずですが(大澤真幸)(p132)


支配の構造 国家とメディア――「世論」はいかに操られるか (SB新書)
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【私の評価】★★☆☆☆(63点)


目次

プロローグ VRが世界を変える
第1章 VRの最前線で一体何が起きているのか!?
第2章 5Gで加速するVR社会
第3章 VRで変わる業界図鑑
第4章 VRで新しく生まれる仕事
第5章 VRで変わる働き方
第6章 こんなことまでVRが変える
第7章 VRを始めよう



著者経歴

堤未果(つつみ みか)・・・国際ジャーナリスト。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業。 ニューヨーク市立大学院国際関係論学科修士号。国連、米国野村證券を経て現職。 米国の政治、経済、医療、福祉、教育、エネルギー、農政など、 現場取材と公文書分析による調査報道を続ける。 「アメリカ弱者革命」で日本ジャーナリスト会議黑田清賞。


大澤真幸(おおさわ まさち)・・・1958年、長野県松本市生まれ、社会学者。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。社会学博士。千葉大学文学部助教授、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を歴任。専門は理論社会学。


高橋源一郎(たかはし げんいちろう)・・・1951年生まれ。1981年『さようなら、ギャングたち』で第4回群像新人長篇小説賞優秀作受賞。1988年『優雅で感傷的な日本野球』で第1回三島由紀夫賞受賞。2002年『日本文学盛衰史』で第13回伊藤整文学賞受賞。


中島岳志(なかじま たけし)・・・1975年大阪生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。北海道大学大学院准教授を経て、2017年8月現在は東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。2005年、『中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義』で大佛次郎論壇賞を受賞。著書に『インドの時代』『秋葉原事件』『パール判事』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『ナショナリズムと宗教』『アジア主義』など。


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