「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門」 森岡 毅
2019/05/24公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(91点)
要約と感想レビュー
倒産の危機にあったユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下USJ)をP&Gから転職してきた38歳のマーケッター、つまり著者が蘇らせました。年1000万人あったUSJの集客数は、2009年、2010年には700万人代に下落。そこで2010年、38歳の著者がP&Gから引き抜かれ、マーケッティングの視点から他の部門に口出しするようになりました。
日本では他の部門から口出しされることを非常に嫌がりますので、部門間で対立が起きたといいます。外から口を出されると、自分の能力がないことがバレるので能力のない人ほど怒るのです。マーケッティング担当の著者の場合も、現場担当の部署と対立するようになっていきました。
・2010年の入社当時マーケティング部長だった私は、横の関係である他部署の部次長クラスと頻繁にバトルになりました。それまでは好きなように作れていたのに、私が来てからはマーケティングがどんどん口出しするので、快く思われていなかったに違いありません(p31)
それまでのUSJの中では、各部門が作りたいものを作っているだけでした。誰も集客に責任を持っていなかったのです。そこで著者は、顧客に求められるものを提供するようにしました。徹底して顧客目線でサービスできるよう口を出し、変えていったのです。
USJでは情緒的意思決定が横行しいたという。突き詰めて合理性を分析し、検証する客観的な姿勢がなかったのです。そのかわり、周囲への配慮と属人的な人間関係とか全体の和が重視されていたという。その結果、全体にとっては正しいことでも、誰かを殺すようなことができていなかったのです。
著者が社内の反対勢力に負けない精神的な厚かましさがすごいのか、著者を採用し支えた社長が偉いのか、私にはわかりません。ただ、リーダーが変わり、戦略が変わり、打ち手が変わるだけで、USJはディズニーランドを超えるまでになったのです。消費者が求めるものをつくる、というこの一点に絞ることで、成果が出始めたのです。
具体的には、USJのターゲット客層が「映画ファンだけのパーク」では狭すぎるので、「家族向けのパーク」に方向転換しました。また、大人5800円(当時)というチケット価格は国際的な他社比較をしてみると、あまりに低すぎるので、毎年値上げをしていったのです。
最も入場者数が落ち込んだ2009年度に比べて、年間600万人以上増えていますが、その半分以上は予算のない中で数多くの新企画を立ち上げ、毎年値上げをしながら100万人ずつ集客を増やしています。そして2014年のハリーポッターによって300万人増やして、軌跡のV字回復を果たしたのです。
・人というものは、できるだけ他人との 衝突を回避したがる性質を持っています。その結果「皆の意見」という利害を足し合わせて頭数で割ったような妥協案を求めがちです。いわゆる「落としどころ」です。しかい「落としどころ」は、ほとんどの場合において消費者目線ではありません(p36)
JALが稲盛さんが経営者として介入してから優良会社となったように、USJも著者が入っただけでこれだけ変わるのだ、とびっくりしました。
この本では、USJには優秀なメンバーと優秀な指揮官(ブランドマネージャー)がいるとしています。この本自体が、USJに人材を集めるためのマーケッティングツールとなっているのでしょう。何事にもムダがないですね。森岡さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・やることを選ぶということは、同時にやらないことを選ぶということ。それが戦略の核となる考え方の「選択と集中」です(p104)
・戦況分析を本気でやる理由は、市場構造に逆らって確実に失敗する「地雷」を避けるためです。そしてできればその市場構造を自分の味方につけられるような戦略がないかを考えるためです(p140)
・広告の唯一無二の目的は、その企業のブランド価値を向上させて売上を伸ばすこと。にもかかわらず、現在はビジネスを伸ばさないTVCMがあまりに多すぎます(p44)
・TVCMを使用している多くの企業のうち、一体どれだけが自社のTVCMの効果をきっちりと測定分析できているでしょうか?(p47)
・相手が大軍であったとしても、大軍である強みの裏に必ずある弱点(統率が難しい、速度が遅い、補給が難しい、油断しがちである)を衝くべく戦略を立てるのです。物事には必ず二面性があります。強みの裏には必ず弱みがあります(p127)
KADOKAWA/角川書店 (2016-04-23)
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【私の評価】★★★★★(91点)
目次
プロローグ USJがTDLを超えた日
第1章 USJの成功の秘密はマーケティングにあり
第2章 日本のほとんどの企業はマーケティングができていない
第3章 マーケティングの本質とは何か?
第4章 「戦略」を学ぼう
第5章 マーケティング・フレームワークを学ぼう
第6章 マーケティングが日本を救う!
第7章 私はどうやってマーケターになったのか?
第8章 マーケターに向いている人、いない人
第9章 キャリアはどうやって作るのか?
エピローグ 未来のマーケターの皆さんへ
著者経歴
森岡毅(もりおか つよし)・・・1972年生まれ、神戸大学経営学部卒。1996年、P&G入社。日本ウィダルサスーン、北米パンテーンのブランドマネジャー、ウェラジャパン副代表等を経て、2010年にユー・エス・ジェイ入社。革新的なアイデアを次々投入し、窮地にあったUSJをV字回復させる。2012年よりUSJチーフ・マーケティング・オフィサー、執行役員、マーケティング本部長。2017年にUSJを退社し、マーケティング精鋭集団「刀」を設立。
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