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「鴎外の恋 舞姫エリスの真実」六草 いちか

2017/01/09公開 更新
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鴎外の恋 舞姫エリスの真実


【私の評価】★★★★☆(87点)


要約と感想レビュー

小説「舞姫」は森鴎外の体験談

森鴎外といえば、小説「舞姫」を代表作とする明治の小説家です。「舞姫」では踊り子のエリスに主人公が恋をし、妊娠。ところが、主人公は日本へ帰国する決意をし、彼女は気が変になってしまいます。現実世界でも森鴎外は、エリーゼという恋人がいて、彼女は森鴎外の帰国後に来日しているのです。ところが、日本では鴎外の縁談話が進んでおり、エリーゼはドイツにとんぼ返りすることになってしまうのです。


今も当時も、日本人駐在員が滞在中にドイツの女性と家庭を築き、帰任に際して母子を捨てて帰国してしまうケースがあるのです。森鴎外もこれだけ有名な小説家であったのに、脇が甘いというか、残念な男性であったのです。


・二人が知り合ったのが鴎外のベルリン滞在期間(1887年4月16日~88年7月5日)であるなら、彼女は二十歳かもしくは二十一歳だった。『舞姫』の草稿は当初、エリスの年齢について「まだ二十にはならざるべし」と書かれ、のちに「十六七なるべし」に訂正されている(p290)


エリーゼの出生を調査

これまでエリーゼは、娼婦ではないのか、ユダヤ人ではないのか、下宿の娘ではないか、他いろいろな説がありました。また、エリーゼの出生を調査した人もいましたが、推測の域でしかなかったのです。


証拠がなかなか見つからないとはいえ、推測で話を公にするとは、失礼な話ですよね。この本では、ベルリン在住のエッセイストが、エリーゼの出生のナゾを協会簿まで調べて、ほぼ解き明かています。


・エリーゼのフルネームはElise Marie Caroline Wiegert。1866年9月15日、シュチェチン生まれ・・父はフリードリッヒは、ベルリン銀行家クッブファーの下で・・(p275)


エリーゼは普通の女の子

エリーゼは、軍人から銀行家の下で事務を手伝う父を持ち、14歳の頃には父を亡くします。そして、その後は母の手一つで妹と共に育てられたのです。実際には、普通の手芸のうまい女の子であったということです。


点と点がつながり、エリーゼに行きつくまではまさに、推理小説を超える調査報告書でした。六草(ろくそう)さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・ベルリンに初の火葬場が建設されたのは1912年のことだった。ということは『舞姫』の時代は土葬しかなかったわけである(p100)


・これまでの各氏の研究の中で、十分な調査が行われていなかったものとして教会簿調査を挙げることができる(p321)


▼引用は下記の書籍からです。
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六草 いちか
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【私の評価】★★★★☆(87点)


目次

森鴎外とベルリン留学
鴎外と『舞姫』
獣苑からクロステル巷まで
クロステル巷の教会
「エリス」の実像
エリーゼがユダヤ人である可能性
オーガイという軍医とその人の恋人
ヴィクトリア座
エリーゼ探しの第一歩
乗船者名簿



著者経歴

六草いちか(ろくそう いちか)・・・1962年大阪市吹田市生まれ。1986年ドイツに語学留学。ゲーテインスティトゥートおよびウィーン大学でドイツ語を学ぶ。1988年よりベルリン在住。2000年より雑誌等に記事を執筆するようになる。寄稿雑誌「PEN」「マリ・クレール」「オブラ」「キネマ旬報」等多数。音楽、映画、トラベルガイド等でドイツ関連の著作・執筆がある


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