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松本清張賞受賞作品「火天の城」山本 兼一

2016/10/19公開 更新
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火天の城 (文春文庫)


【私の評価】★★★★☆(86点)


要約と感想レビュー

 勢力を拡大する織田信長は、天下統一を見据え安土城の築城を決意します。信長の要求は南蛮風にすること。山の周囲には石垣を積む。西洋の城を目指したのです。主人公である宮大工にとっては、一世一代の大仕事です。


 信長の無理な要求に、設計変更を繰り返す。職人間のいざこざを、納める。スパイの謀略にひるまず作業を続ける。総責任者である棟梁には、トラブルに対してどうするのか考えるべきことが多いのです。


 毎朝、誰よりも早く作事場に入り、入口で深々と拝礼し、柏手を打つ。木を組むのが番匠の仕事で、人を組むのが棟梁の仕事という言葉が、現代社会の管理職のなすべき仕事と全く同じだと感じました。


・お前のはただの私憤だ。わしのはだ。作事場の法は、戦陣同様厳格でなければならぬ(p293)


 総棟梁は、荒立つ大工たちをなだめ、不公平が出ぬように目を配っています。城は腕で建てるのではなく、メンバーたちの心を組んで建てるのでしょう。


 棟梁というプロジェクトマネジャーの立場の辛さと、人を育てる難しさが伝わってきました。昔も今もものを作るのは、人間なのです。安土城は信長の死によって燃えてなくなりました。木造の悲しさですね。山本さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・なにか心に乱れることがあると、台鉋(だいがんな)や鑿(のみ)の刃を研ぐ。鋸の歯を鑢(やすり)で目立てする。(p130)


・角材に拝礼し、柏手を打った。八百万(やおよろず)の神々に祈った。一厘の狂いもなく墨を打つのだ、と自分に言い聞かせた(p202)


・胴突で土を突き固めていく。これは、近江の百姓女たちの仕事だった。男が急いで突き固めるより、女の力でなんども突いたほうが、土がよくしまる(p55)


火天の城 (文春文庫)
火天の城 (文春文庫)
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山本 兼一
文藝春秋
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【私の評価】★★★★☆(86点)


目次

江戸庶民のラクに生きる知恵
カンニング女子
立派な計画はいらない
ときには、羽目を外すのも
言い争いの無意味
「天気味報は当たらない」と言われたときに
本当の「友だち」って?
オーディションに、2度やって来た男
練習が好きな理由
さらけ出せる人 他



著者経歴

 山本兼一(やまもと けんいち)・・・1956年、京都市生まれ。同志社大学文学部美学及び芸術学専攻卒業。1999年「弾正の鷹」で小説NON短編時代小説賞を受賞。2004年「火天の城」で松本清張賞を受賞、同作は直木賞候補にもなった


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