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「世界の中の日本 これからを生き抜くエネルギー戦略」金子祥三,前田正史

2016/05/15公開 更新
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世界の中の日本 これからを生き抜くエネルギー戦略


【私の評価】★★★☆☆(71点)


要約と感想レビュー

日本では電力の全面自由化が2016年4月からスタートしました。さらに、再生可能エネルギーの固定価格買取制度により太陽光、風力が大量導入されています。このままいくと、日本の電気はどうなるのでしょうか。


まず、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)は家庭用電気料金がkWh30円くらいなのに同じかそれ以上の価格で買い取る制度です。その差額は賦課金として利用者が負担するのです。ヨーロッパでは、すでに同じFIT制度が採り入れられており、ヨーロッパでは電気料金が上昇し、特にドイツでは電気料金が2倍になっているのです。


さらに、ヨーロッパでは強制的に負荷変動の大きい風力、太陽光を大量導入した結果、電気が余る時間が多くなり、電力卸市場の価格が下落しました。このため価格競争力を失った最新鋭ガスコンバインド火力発電所が停止しています。


残った石炭火力発電所といえば、不安定な再生可能エネルギーが大量導入されたことによる負荷変動をカバーするために、石炭火力の最低負荷を、従来の30~40%から15%まで切り下げる設備投資が必要となっています。これは、石炭火力は一度停止すると、再稼働させるのに時間がかかり、負荷変動に追従できないからです。


再生可能エネルギー買取制度が電気料金を上昇させ、電力自由化によって、燃料費が高い火力発電所を廃止せざるをえない状況となることが予想されています。これは日本のエネルギーの安定供給を不安定にすることでしょう。そうした状況をしっかり教えてくれる本でした。良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・年間平均設備利用率・・日本では太陽光で約12%、風力で約22%(p38)


・水素の時代は来るか・・天然ガスの値段より高くて、本当に成り立つのでしょうか(p54)


・power to gas・・再生可能エネルギーで電気が余り、それを水素に変える・・保有エネルギーが7割になり、それを天然ガスに変えると保存エネルギーが56%くらいになる・・大きなロスが出てきます(p55)


世界の中の日本 これからを生き抜くエネルギー戦略
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【私の評価】★★★☆☆(71点)


目次

日本のエネルギー戦略を考える視点
戦略的技術革新 これが日本の生きる道
米国既設火力排出源規制案の概要と今後の見通し
欧州における発電事業の現状―電力市場への再生エネルギーの浸透から学ぶ影響と教訓
これからの電力を考える
日本の火力発電技術の世界展開



著者経歴

金子 祥三(かねこ しょうぞう)・・・三菱重工業取締役技師長や東京大学生産技術研究所エネルギー工学連携研究センター副センター長を務めた。元日本機械学会動力エネルギーシステム部門長。


前田 正史(まえだ まさふみ)・・・京都先端科学大学学長。1976年東京大学工学部卒、1981年同大学院工学系研究科博士課程修了。工学博士。東京大学生産技術研究所所長などを経て、2009年4月から東京大学・理事副学長を歴任。2019年3月まで日本電産株式会社 生産技術研究所 所長(非常勤)。2018年4月本学副学長就任を経て、2019年4月より現職。


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