「現代日本文学「盗作疑惑」の研究―「禁断の木の実」を食べた文豪たち」竹山 哲
2016/03/03公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(70点)
■多くの小説が出版されていますが、
種本のあるもの、リライトしたものが
かなりあるらしい。
つまり,外国の本を翻訳しただけ、
昔の本を現代語訳しただけ、
他人の日記を書き直しただけ。
どこからが盗作で、
どこからが改作で、
どこからが創作なのでしょうか。
・むかしの著作物をリライトした例は,
洋の東西を問わず,枚挙に暇のないくらいである。
それらをすべて「盗用」と呼ぶのには,
いささか違和感があるだろう・・
既存の詞では,「改作」が
いちばん近いかもしれない(p171)
■面白いのは,森鴎外,太宰治
井伏鱒二、田山花風といった
大物がリライトしているということ。
人の書いた日記や小説を
リライトする。
筋書きを考える必要がありませんので、
作家としては編集に集中するだけで
作品らしいものを作ることができるのです。
・リライトの問題はいまに始まったことではない。
森鴎外,田山花風,徳冨蘆花などの名前を耳にするが,
いちばん堂々とやったのは鴎外である(p32)
■シェイクスピアも,モーツアルトも
人の作品をパクッていたらしい。
ウェブサイトでも、
まったく同じ内容を
リライトしただけの
コピーサイトがあります。
どこからが盗作で、
どこからが創作なのか。
難しい問題だからこそ、
やる人がいるのでしょう。
竹山さん、
良い本をありがとうございました。
────────────────────────────
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・『羽鳥千尋』で味をしめた鴎外は,以後,しばしば,
他人の書いた文書に手を入れて作品にする。
構想を練る必要はないし,
アイデアの枯渇も苦にならない。(p8)
・井伏鱒二の『青ヶ島大概記』は
『八丈実記』の一部である
「伊豆国付八丈島持青ヶ島大概記」の
ほぼ六割を写し取った盗用である(p9)
・井伏の『ジョン万次郎漂流記』は,
石井研堂の『中浜万次郎』の文語調を
口語調に直しただけである(p9)
・「阿部一族」の文章の大部分が「阿部茶事談」の
書き替えに近いことは,藤本千鶴子校訂・熊本県
図書館本「阿部茶事談」で知れるようになった(p92)
・『青ヶ島大概記』は昭和九年三月の『中央公論』に
発表された。井伏が始めてリライトに手を染めた
作品である。こともあろうにリライトの作業を
太宰治が手伝った(p166)
・彼(シェイクスピア)には三十七本の作品が
あるんですけれども,そのほとんどに何か種本,
下敷きの話があるんです。(松岡和子)(p225)
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【私の評価】★★★☆☆(70点)
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■目次
第1章 リライトとは何か―詞の定義
第2章 著作権法とは何か
第3章 田山花袋
第4章 森鴎外
第5章 徳冨蘆花
第6章 井伏鱒二
第7章 太宰治
第8章 創作性の検証
「盗作」難しい問題ですね。
それにしても、文学の世界でも盗作が
横行していたのにはびっくりしました。
「リライト」とはうまいこと言ったものですね。
でも、当時今のようなネット社会だったら
文豪が文豪たりえなかったかと思うと、
その時々の時代背景(状況変化?)の恐ろしさを
改めて感じます。