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「日本人ルーツの謎を解く―縄文人は日本人と韓国人の祖先だった!」長浜 浩明

2015/11/09公開 更新
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日本人ルーツの謎を解く―縄文人は日本人と韓国人の祖先だった!


【私の評価】★★★★☆(88点)


要約と感想レビュー

 日本人の祖先は朝鮮からの渡来人・・皇室は朝鮮からやってきた・・という説があります。理系の著者がこうした説の元となったDNAや考古学のデータを再検証してみたところ、結論は真逆でした。日本と大陸とは、若干の交流があった程度で大量の渡来人の流入はなく、日本人は昔から日本人ということだったのです。


 例えば、成人T細胞白血病(ATL)ウイルスのキャリアが東アジアでは日本人しかいない事実から、日本人と大陸の交流はそれほど大きくなかったことが想像されるのです。ALTウイルスは母親から子どもに40%くらいの確率で遺伝するので、人的交流が大きければ、一定数のキャリアが存在するはずだからです。


・日沼教授はATLウイルスのキャリアが、東アジアでは日本人にしかいないこと、日本以外では沿海州からサハリンに分布している少数民族に発見されているにすぎず、中国・韓国には如何に調査しても全くいないことを発見した(p110)


 また、DNAからわかることは、日本の男性のY染色体は大陸とは異なり、日本の女性のmtDNAは大陸と類似しているという事実です。この事実から推定されるのは、外国から来た男性が地元の女性と結婚し子どもを作ると仮定すれば、大陸では男性が移動・定着したものの日本には男性は来ていないということなのです。


 女性についてはアジア全体で長い時代にわたって均一化されているということであり、古い時代に日本に女性がやってきて、その後、大陸との交流は少ないということがわかるのです。


日本人男性のY染色体は韓国人や中国人(北京)とは大きく異なり、しかも遺伝的に遠く離れた関係にあるのに、日本人女性のmtDNAは類似し、近いのは何故か。・・私たち日本人の主な祖先は一万年以上にわたり日本列島の主人公であり続けた縄文時代からの人たちだった(p262)


 なお、縄文時代と弥生時代とで骨格が変わっていることについて、渡来人の影響という説があります。この説については、現代人の骨格が生活習慣の変化で大きく変わったことから、生活の変化による影響と考えると、説としては信頼度が低いことがわかります。


 骨格による変化をすべて人の移動の結果とするのは無理筋であり、稲作導入などにより食糧や生活が変化し骨格が変わったということも含めて議論すべきことなのでしょう。データによる検証が必要と考えられます。


・弥生時代以降の人骨を見て、縄文系とか渡来系とかを論ずることは困難であることは、明治以来、150年足らずで私たちの骨格は大きく変わったことからも実感できる(p228)


 とはいえ、朝鮮半島と日本とは土器や前方後円墳など文化的共通点もあり、交流はあったはずです。言語はまったく違いますので、現代のように通訳などを通じて意思疎通したのでしょうか。こうした研究は興味深いですね。


 長浜さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・弥生時代から奈良時代にかけて日本にやって来たとされる渡来人の影響は、その人数であれ、人口増加であれ、大きくなかったからこそ、氏が渡来系としたY染色体のO系統頻度は、日本中何処でもほぼ均一、と考えざるを得ない(p254)


・では何故、韓国人のY染色体は中国人(北京)に近くなったのかを考察してみよう。・・・多くの被征服民族の男性は奴隷になったり殺されたりしたが、女性は同じ運命を辿ることなく生き延び、征服者=男性の子を産んだということだ(p264)


・東アジアの女性のmtDNAが似ている理由・・女性が大虐殺されるのは希で、彼女らは征服者の男性との間で子供を遺して行くことで生存が保証されたと思われる(p265)


・1998年、青森県大平山元Ⅰ遺跡の無文土器の炭素14年代が13000年前、暦年に較正すると16000年前になると発表された。(p77)


・半島南部の土器を見た韓国の学者は「これは日本の弥生土器だ」と認識していた。つまり縄文時代に続き、弥生時代にも多くの人々が日本から半島へと進出し続け、その地に住んでいたことになる(p96)


日本語と中国語(北京語、広東語、上海語など)や朝鮮語との共通性を感じることはない・・・「日本人のルーツは半島だ、大陸だ」といくら叫んでも、多くの人にとって実感が湧かないのは当然であろう(p271)


・日本の品種の多くはaまたはbに限られている。・・「b変形版」のイネは朝鮮半島には存在しないから、仮に水稲が朝鮮半島から来たのなら「b変形版」のイネは日本に存在しないはずである。だがこのイネは、最初の渡来地とされた北九州を始め日本列島に隅無く広がっている(p59)


日本人ルーツの謎を解く―縄文人は日本人と韓国人の祖先だった!
長浜 浩明
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【私の評価】★★★★☆(88点)


目次

第1章 司馬遼太郎・山本七平の縄文・弥生観は失当だった
第2章 縄文時代から続く日本のコメづくり
第3章 縄文・弥生の年代決定に合理的根拠はあったのか
第4章 反面教師・NHK『日本人はるかな旅』に学ぶ
第5章 もはや古すぎる小山修三氏の「縄文人口推計」
第6章 机上の空論・埴原和郎氏の「二重構造モデル」
第7章 統計的「偽」・宝来聡氏の「DNA人類進化学」
第8章 為にする仮説・中橋孝博氏の「渡来人の人口爆発」
第9章 「Y染色体」が明かす真実
第10章 言語学から辿る日本人のルーツ



著者経歴

 長浜浩明(ながはま ひろあき)・・・昭和22年群馬県太田市生まれ。同46年、東京工業大学建築学科卒。同48年、同大学院修士課程環境工学専攻修了(工学修士)。同年4月、(株)日建設計入社。爾後35年間に亘り建築の空調・衛生設備設計に従事、200余件を担当


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