「議論術速成法―新しいトピカ」香西 秀信
2014/05/08公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(72点)
要約と感想レビュー
人が集まると、グループが形成され、グループの中で意見交換が行われます。グループでの意見交換では、正しい人が勝つ場合もあるでしょうが、議論のうまい人が勝つということがあります。この本では、議論のうまい人に、どのように対応するのか基本を学びます。
この本で面白いのは、言い返すパターンを具体的に示しているところでしょう。たとえば、「ああいえば上祐」という人がいましたが、同じようにノーベル文学賞の大江 健三郎さんも「ああいえばこういう」パターンを持っていました。口のうまい人は、結論ありきで、相手にもっともと思わせるパターンを持っているのです。
まず、相手のロジックをひっくり返して矛盾を指摘する方法です。例えば、日本の企業がアメリカの映画会社を買収しようとして「映画はアメリカの魂だ。日本人は、経済力にものをいわせて、アメリカ人の魂を買うのか。」と批判されたら、「それではアメリカ人は、自分たちの魂を金で売るのか」と反論する方法。
次によくあるのは、定義を確認する方法です。例えば、「そんな考えは、世界では通用しない」などと批判してきたときには、「"世界"というのは、具体的に誰(どこ)のことですか」と反論するのです。
また左側の人がよく使うロジックは、どうやっても自分にとって都合のいい結論を導き出す方法です。例えば、自衛隊反対について、批判する投書が匿名でなされたとしたら、「暗やみから石を投げてよこす」その卑劣な行為を批判すればよい。仮に、その投書が署名入りであったときには、自衛隊に賛成の意見を公然と発表するような危険な風潮が一般化しはじめていると批判するのです。
・小林秀雄氏は、議論で相手が何かを言い返すと、「そう言うだろうと思ってた。そういうのが一番つまらん、愚劣な奴のすることだ」と切り返すのを常としていた(p98)
私の職場にも、口だけがうまい人が実際に存在しています。例えば、具体的に提案しているのに、「しっかり整理しないと」という人がいるとします。その場合には、「ではどこを整理すればいいか具体的に教えてください」と言うようにする。そうすると、二人の間の雰囲気はかなり悪くなります。
相手は単にやりたくないことを遠回しに言っているのに、反論されて困っているのかもしれません。もっと良い言い方はないだろうか・・・。もっと議論術を学ぶ必要があるようです。香西さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・「誰が語るか」が説得を左右する(p64)
・沈黙に陥らないためには、論法を蓄えるだけでなく、議論の展開をさまざまに想定して、相手の攻撃に即座に応戦できるような具体的な議論を前もって用意しておくことも必要となる(p92)
・例えば、日本に滞在する外国人の犯罪が増加しているという統計が示されたとき・・・「すべての外国人が犯罪を犯しているわけではない。」・・・「こうした調査そのものに外国人に対する偏見がある。」このような発言は、思考の結果というよりも、<常套句>の反射的使用と見たほうがよい。(p110)
・優れたものは常に少数であるが、少数であるものが常に優れているとは限らない -これは使い古された常套句であるが、それでもなお、ある人々は少数派でいたがる(p140)
筑摩書房
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【私の評価】★★★☆☆(72点)
目次
序章 ギリシャの舌はまだ動いている
第1章 論法を蓄える
第2章 「常套句」を操作する
第3章 選ばれるための条件を知る
第4章 自分の「議論的」気質を発見する
著者経歴
香西秀信(こうざい ひでのぶ)・・・昭和33年香川県生まれ。筑波大学第1学群人文学類卒。同大学院博士課程教育学研究科単位修了。琉球大学助手を経て、宇都宮大学教育学部教授。専攻は修辞学(レトリック)と国語科教育学
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