「論より詭弁 反論理的思考のすすめ」香西 秀信
2014/01/12公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★☆☆☆(69点)
要約と感想レビュー
生きていると、人と議論する必要が出てきます。特に会社では、会議や打ち合わせで一定の方向性を決めなくてはなりませんので、結論とその理由が必要です。そこに、レトリックで相手を押し込む技術を持っている人が有利になる場合があるのです。
これはテレビでの議論を見ていると、よくわかります。靖国神社に行くべきか、行かざるべきか。テロリストの要求に屈するのか、拒否するのか。捕鯨が止めるのか、続けるのか。そこには、正しい正しくないより前に、結論があり、その結論を補強する論理があるようにさえ思えます。そういった点では、特に日本人はこのレトリックを学ぶ必要があるのでしょう。
著者のアドバイスは、理由をたくさん説明しないことです。理由が多すぎると説得力が落ちるのです。例えば、総理大臣の靖国神社参拝に反対する根拠として「憲法で規定した政教分離の原則に違反する」「中国をはじめとるすアジア諸国の反発を招く」と説明するのは、前者だけで説明するより弱くなってしまうのです。
・人に訴える議論・・・彼の人格等を攻撃することによって否定しようとする。・・・彼の行動との不一致や過去の発言との矛盾を指摘・・・彼の立場が偏向している、あるいは公平でないことを指摘・・・類似した行為を相手もまたなしていることを指摘して、その非難を骨抜きにしようとする・・・(p119)
性格の悪い人は、言動不一致や発言の矛盾を指摘したり、そもそもの定義を説明するよう要求したりして、論争での武器の一つとして使用することがあります。そうした議論は意味のないものですが、議論で負けたように見えないように、事前に準備しておく必要があるのでしょう。やや学術的で、まじめな本でした。もっと議論や人を説得する本を読んでみたいと思いました。乞うご期待。香西さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・テロリストの卑劣な要求に屈しないことと、屈することの、どちらが正しいのか?(p61)
・議論に世の中を変える力などありはしない。もし本当に何かを変えたいのなら、議論などせずに、裏の根回しで数工作でもした方がよほど確実であろう(p9)
・先生が、徴兵制に気軽に賛成できるのは、自分はもう兵隊にとられる年ではないという安心感があるからではありませんか。」これを聞いたA教授は即座に言い返した。「それなら、君が徴兵制に反対するのは、自分が兵隊にとられる年だからではないのか。」(p120)
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【私の評価】★★☆☆☆(69点)
目次
序章 論理的思考批判
第1章 言葉で何かを表現することは詭弁である
第2章 正しい根拠が多すぎてはいけない
第3章 詭弁とは、自分に反対する意見のこと
第4章 人と論とは別ではない
第5章 問いは、どんなに偏っていてもかまわない
著者経歴
香西秀信(こうざい ひでのぶ)・・・昭和33年香川県生まれ。筑波大学第1学群人文学類卒。同大学院博士課程教育学研究科単位修了。琉球大学助手を経て、宇都宮大学教育学部教授。専攻は修辞学(レトリック)と国語科教育学
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