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「経済は感情で動く―はじめての行動経済学」マッテオ モッテルリーニ

2013/07/20公開 更新
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経済は感情で動く―― はじめての行動経済学


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

市場経済においては、経済合理性が最優先される傾向にあります。しかし、そうした市場経済の中でも、人間がかかわることで、合理的でない結果がでる場合があります。そうした人間の感情と錯覚について実例を示しながら研究する一冊です。


例えば、商品は松竹梅というふうに3種類準備すると、中央の竹が売れる傾向になります。つまり、竹梅だけだと梅を50%の人が選んでいたのに、上級クラスの松を設定すると、梅は20%の人しか選ばなくなってしまうのです。これはアンカリングという思い込みの効果なのです。


・消費者は割合の表示に容易に乗せられやすい。・・・携帯電話を買うときには1000円節約したくて十分走るが、テレビを買うときは同じ金額の節約になっても走らない)のように、矛盾した結論を出すこともある(p151)


この本のすごさは、日常の中の矛盾から、お金の錯覚、リスクの錯覚、感情による間違いなどを大量の実例で説明してくれるところ。私が一番共感したのは、リスクのところで、報道によって人のイメージが操作されるということです。


例えば、飛行機が墜落すると、糖尿病で数万人の人が毎年死んでいるのに、年数百人しかしなない航空機事故で死ぬ確率のほうが高いと思ってしまうのです。これはいかに、マスコミ報道が力を持っており、統計的にいい加減なのか、ということなのでしょう。


同じように、ドイツでは毎年10万人の女性が、癌がないのにマンモグラフィーでみつかったとして乳房切除の手術を受けているとか、毎年何千人という男性が、前立腺の早期診断が死亡率を減らすという確証もないのに検査を受けているなどの指摘は、日本にも適用できるのではないかと思いました。


私たちは錯覚の中で生きているということがよくわかりました。それにしても内容が充実しすぎで、読むのに疲れました。これは本というより論文でしょう。モッテルリーニさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・「コンコルド機にはずいぶん投資したのだからそれをスクラップに回すことはできない」とはいうべきではない・・投資を注視してその計画を放棄するのが将来の利益につながるなら、そうすべきなのである。(p61)


・ニューヨークのタクシー・・・運転手たちは毎日の目標額を決め、その日の売上げがその額に達すると仕事をやめていた・・・しかし経済的観点あらすれば、運転手は売り上げが多い日によく働き、少ない日にはさっさと引きあげて自由時間を楽しむべきなのだ(p106)


・磁気共鳴画像によれば、金額が同じなら、宝くじで当たった人からもらったりした場合より、自分で稼いだときのほうが、報酬に関連する脳の部位が活発になる(p289)


▼引用は下記の書籍からです。
経済は感情で動く―― はじめての行動経済学
経済は感情で動く―― はじめての行動経済学
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マッテオ モッテルリーニ
紀伊國屋書店
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【私の評価】★★★★★(90点)


目次

パート1 日常のなかの非合理
1 頭はこう計算する
2 矛盾した結論を出す
3 錯覚、罠、呪い
4 「先入観」という魔物
5 見方によっては得
6 どうして損ばかりしているの
7 お金についての錯覚

パート2 自分自身を知れ
8 リスクの感じ方はこんなに違う
9 リスクとの駆け引き
10 知ってるつもり
11 経験がじゃまをする
12 投資の心理学
13 将来を読む

パート3 判断するのは感情か理性か
14 人が相手の損得ゲーム
15 怒れるニューロン
16 心を読むミラーゲーム
17 理性より感情がものを言う
18 人間的な、あまりにも人間的なわれわれの脳

おしまいに 怠け者の経済学



著者経歴

マッテオ・モッテルリーニ(Matteo Motterlini)・・・1967年ミラノ生まれ。ミラノ大学で科学哲学、ロンドン大学で経済学を修める。カーネギー・メロン客員准教授などを経て、現在はミラノのサン・ラファエレ生命健康大学の准教授。科学史・科学哲学、認識論、論理学、ミクロ・マクロ経済学などを研究分野とする。著書に『方法論のプラスとマイナス』(1990)『医学的判断の合理的限界』(共著、2005)『経済の合理性批判』(2005)『認知と実験の経済学』(2005)などがあり、本書を2006年10月に刊行、たちまちベストセラーとなった。


行動経済学関連書籍

「NUDGE 実践 行動経済学 完全版」リチャード・セイラー, キャス・サンスティーン
「今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「意思決定」」佐藤 耕紀
「9割の買い物は不要である 行動経済学でわかる 「得する人・損する人」 」橋本之克
「経済は感情で動く―はじめての行動経済学」マッテオ モッテルリーニ


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