「今日の風、なに色?―全盲で生まれたわが子が「天才少年ピアニスト」と呼ばれるまで」辻井 いつ子
2013/03/02公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★☆☆☆(68点)
要約と感想レビュー
盲目のピアニスト、辻井信行さんの2000年、12歳までの成長の記録です。辻井信行さんは、9年後の2009年、アメリカで開催されたヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールにおいて日本人として初優勝しました。
この本が出版されてから、ピアニストとして、いくつもの壁を乗り越えたということがわかります。目が見えないというハンデにもかかわらず、超一流のピアニストと戦える実力をつけるのは簡単なことではないのです。
・今、信行くんの年齢で、彼くらいのレベルでピアノを弾ける人は、世界中で数千人ほどいるはずです・・・この小さなピアニストがこれから乗り越えなければならない壁はいくつもあります・・2000年7月(三枝成彰)(p3)
子どもの頃から大好きな音楽の環境を与えられた辻井信行さんは、幸せものです。親が押し付けるのではなく、あくまでも自分がやりたい曲を弾く。だから、音楽というものを純粋に美しいものとして感じながら、演奏できるのです。
目が見えないからこそ、音そのものを評価して、楽譜で弾くのではなく音楽としてピアノで表現できるのです。全盲がハンデとすれば、音だけで勝負することができるのはメリットなのでしょう。
・有名な作曲家の曲だとか、高度な曲だとか、そういう基準がありません。ただ自分の耳で聴いてきれいなのか否か。きれいだと思えた瞬間に、音楽が身体のなかにドクドクと流れ込んでくるようなのです(p150)
子育て記録のような内容でした。信行くんの伝記として読みごたえがありました。辻井さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・「伸行君は演奏がうまいだけではなくて、音と心が美しい」ロシアのモスクワ音楽院教授、ワレリー・カステルスキー先生からはそんな言葉もいただきました(p25)
・グリーグの『風の精』は、僕は小さい頃から風が大好きで、風が吹いてくるといつも立ち止まって、今日の風はどういう風かと想像するので、そんなことを考えながら弾きました(p26)
・私は伸ちゃんに対してはピアノの先生という意識を捨てました。それよりも、この才能を上手に引き出しながら、次の上のクラスの先生に引き渡すのが私の役割だと思うようになったんです(増山真佐子)(p145)
・「僕、眼が見えたらよかったな」ある日そんなことを言いだして私をドキッとさせたことがあります。ところがすぐに「でもいいや。僕はピアノが弾けるから。他の子より上手に弾けるんだから」と言って、一人でうなずいているのです(p193)
▼引用は下記の書籍からです。
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【私の評価】★★☆☆☆(68点)
目次
第1章 音楽の天使が微笑んだ日
第2章 伸行誕生、運命の宣告
第3章 音楽の花が開きはじめた
第4章 人々の喝采が喜びに
第5章 演奏家へのステップ・バイ・ステップ
著者経歴
辻井いつ子(つじい いつこ)・・・1960年(昭和35年)、東京生まれ。東京女学館短大卒業後、フリーのアナウンサーとして活躍。1986年、産婦人科医の辻井孝と結婚。1988年に生まれた長男・伸行が生後まもなく小眼球症により全盲とわかり、絶望と不安のなか、手探りで子育てをスタート。伸行は8歳にしてモスクワ音楽院大ホールで演奏、10歳でピティナ・ピアノコンペティションのD級で金賞を受賞。また、アメリカ(カーネギーホール)、チェコ、台湾(国家音楽庁)などでも演奏し、絶賛される。2000年(12歳)サントリーホールで初リサイタル、2002年(13歳)フランスで佐渡裕指揮のラムルー管弦楽団と共演、同年10月(14歳)東京オペラシティ・コンサートホールで東京交響楽団と共演、2003年(15歳)やまと郡山城大ホールでピアノリサイタル、2004年(16歳)東京交響楽団の定期演奏会のソリストに抜擢、2005年(17歳)ポーランド・ワルシャワで行われた第15回ショパン国際ピアノコンクールに最年少で出場し、「ポーランド批評家賞」を受賞。2007年(19歳)エイベックス・クラシックスよりデビュー・アルバムを発売。2009年(20歳)アメリカ・テキサスで行われた、第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝。日本人初の快挙として、多数のマスコミに取り上げられる。
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