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「流れる星は生きている」藤原 てい

2012/03/10公開 更新
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流れる星は生きている (中公文庫)


【私の評価】★★★☆☆(77点)


要約と感想レビュー

■戦後、満州から6歳、4歳、生後半年の
 乳のみ子を抱えながら、日本への
 帰還を果たした藤原さんの一冊です。


 4歳の子は、数学者 藤原正彦として
 「日本の品格」を著しています。


 満州からの引き揚げは、
 団体で移動しましたが、
 食い物がない。
 寒い。


 最後に38度線を越えるときには、
 足には石が食い込み、
 血と砂で黒ずみ痛む状態でした。


 家族4人が日本に帰れたのは、
 一つの奇蹟だったのでしょう。


両足の裏に血と砂と泥がこびりついたまま、はれあがっていた。・・・「痛い痛い」と泣く正彦を、蹴とばし、突きとばし、ひっぱたき、私は狂気のように山の上を目ざして上っていった(p216)


■この本でわかるのは、
 まず引き揚げたのは関東軍関係者、
 政府関係者ということ。


 政府関係者であっても、
 事前の情報は少なかったようです。


 移動が遅れた民間人は、
 さらに悲惨だったのでしょう。


 福島の原子力事故で、原子力安全保安院
 職員が3月15日には福島県庁に
 退避していたのが頭に浮かびました。


・私たちの観象台団体が最も貧乏であることがわかってから、私たちはなぜ計画的に荷物を輸送して貰えなかったかを嘆き、そして観象台の指導者たちの無能を非難した。私の夫もその無能の一員であった。(p27)


■そして避難において、
 必要なのは"金"。


 移動にも食料にも
 すべて金
がかかります。


 金を持っている人が、
 より安全に引き揚げることができるのです。


 金のない人は、
 自分で稼ぐしかないのです。


・私たちの共同の糧食は十日間で尽きることになっている。それまでに自活の道をたてねばならない。米が一升45円する、とうもろこしが一升15円する、私の四人家族で最低生活をするには一日二十円はどうしてもかかる。(p123)


■この本を読んで、
 組織のトップが間違うと、
 とんでもないことになる。


 満州にしても、
 原子力にしても、
 最悪を想定できていないリスクは、
 恐ろしい結果を生み出します。


 それは、どんなに現場で、
 努力しようと、
 カバーできるものではないのですね。


 藤原さん、
 良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・私がこの崖の下を出て見たものは、一人の気の狂った女であった。「う・・・あ・・・坊やが死んだ!」と絶叫している一人の女が狭い道に倒れていた(p190)


・でも私が想像する場面はいつも親子四人で死ぬところであった。咲子は黙って死ぬだろう。正広は私の眼をとがめるように見つめて死ぬだろう。正彦は最後まで死ぬのはいやだと泣くだろう。私はこんなことを想像していつの間にか自分が泣いているのに気がついては現実にかえるのだった。(p93)


・日本人、ほんとうに気の毒だと思っています。だが、今あなたにものを上げると、私は村八分にされます。今まで私たちが苦労していたのは日本の政府が悪かったからだと、日本人をみんな恨んでいます。でも、あなた方には何の罪もありません。今、私がものを捨てますから、あなたは、それを急いでお拾いなさい(p144)


・私は朝誰よりも早く起きて、行く処があった。市場へ行くのである。・・およそ食べられるものは拾うのである。ネギの葉、大根の屑、芋の捨てたの、これらを縄で作った手提げ籠にぶち込んで急いで帰ってくるのである(p138)


▼引用は下記の書籍からです。
流れる星は生きている (中公文庫BIBLIO20世紀)
藤原 てい
中央公論新社
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【私の評価】★★★☆☆(77点)



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