「財務官僚の出世と人事」岸 宣仁
2010/10/15公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(84点)
要約と感想レビュー
番記者による財務省のキャリア人事の「よもやま話」といった一冊です。財務省官僚も、普通の会社のサラリーマンと変わらず、人事には非常に興味を持っています。「なんであいつが」「オレがなぜ」といった不満は、どこの組織にでもあるのでしょう。
・若い頃はキラキラ輝いていたのに、上に行くほど守りに入って光を失うタイプと、逆にポストや年齢を積み重ねるごとに光を増し、いぶし銀のような輝きを放つタイプの二つがある(p76)
私が興味を持ったのは、こうした大きな力を持つ財務官僚でも、政治家をコントロールできなかったということです。もし、官僚がすべてをコントロールしているとすれば、これだけの財政赤字はなかったというのは説得力があります。政治家に対して強い態度で臨みながらも、政治家に「敵ながらあっぱれ」と思わせるだけの力量が出世の秘訣のようです。
・われわれが本当に強かったら、日本の財政なんてこんなふうになっていませんよ。国、地方合わせて八百兆円の借金なんてね。要するに主計局は、常に敗戦、敗北の歴史です(武藤敏郎)(p177)
財務省の人も普通に人事を気にしていることがわかりました。だれでも人から認められたい、というのは変わらないのですね。岸さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・政府系金融機関のトップにも序列があって、最も上位が輸銀総裁、二番目が開銀総裁、次いで海外経済協力基金総裁、国民金融公庫総裁の順であった(p150)
・課長は課長同士、局長は局長同士と、役職の同格の者がカウンターパートになるのが原則だ。ところが、大蔵省主計局だけは、他省庁の一ランク上の者と対等の立場で交渉することが認められている(p100)
・族議員の筆頭格が、公共事業をあやつる建設族であることは誰の目にも明らかだった。田中派から竹下派にかけてのほぼ二十年間、ひとつの派閥が建設省(現国土交通省)を牙城にしてきた結果、配分シェアは硬直化した(p29)
【私の評価】★★★★☆(84点)
目次
第1章 十年に一人の大物次官・斎藤次郎
第2章 花の四十一年組
第3章 大蔵一家のドン・山口組
第4章 大蔵vs.日銀
第5章 非主流の国際派とミスター円
第6章 入省成績と出世の相関関係
著者経歴
岸 宣仁(きし のぶひと)・・・1949(昭和24)年、埼玉県生まれ。ジャーナリスト。東京外国語大学卒。読売新聞経済部で大蔵省や日銀などを担当。財務省のパワハラ上司を相撲の番付風に並べた「恐竜番付」を発表したことで知られる。『税の攻防―大蔵官僚 四半世紀の戦争』『財務官僚の出世と人事』『同期の人脈研究』など著書多数。
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