「戦時演芸慰問団「わらわし隊」の記録―芸人たちが見た日中戦争」早坂 隆
2010/06/17公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★☆☆☆(66点)
要約と感想レビュー
日中戦争中、朝日新聞社が資金を出して、吉本興業の芸人からなる「わらわし隊」という慰問団を戦地に送っています。この本では、「わらわし隊」の記録から、日中戦争当時の日本と戦地の様子を再現していきます。
「わらわし隊」は、朝日新聞が戦争に協力することをPRすることが目的でした。現代社会では朝日新聞は、権力と対決する姿勢をPRするために「従軍慰安婦」というものを創作したのと同じなのでしょう。
・わらわし隊の派遣は、朝日新聞社や吉本興業にとって、戦争に協力する姿勢を公けに見せることで社会からの評価を獲得し、企業価値を高めるという目的があった(p56)
歴史というものは、その場にいるとよく見えないと言われますが、当時の雰囲気からは拡大する大日本帝国の未来を全員が信じているように感じました。皇軍は負けないのだと誰もが信じている時代なのです。
そうした時代の流れだったのでしょうが、やはり何かが足りなかったのでしょう。今の時代を反省する材料になると思います。早坂さん、良い記録をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・わらわし隊一行は、戦線における食料不足の現状を各地で耳にしている・・・「一流の軍師は補給を語り、三流の軍師は戦略を語る」とも言う(p250)
・わらわし隊が慰問演芸のために南京に滞在した昭和13年1月23-27日という時期は、ちょうど「何千という婦人が強姦され、十万人以上の人々が殺害され、無数の財産が盗まれたり、焼かれたりした」まさにその最中ということになる(p163)
・日中戦争において初めて慰安所(陸軍娯楽所)が開設されたのは、昭和12年末の上海だったとされている。戦地での強姦防止、性病予防などを主な目的として、軍が民間業者に要請し、北九州の遊郭から娼妓を集めたのがその始まりであった・・・当時の日本は、現在のドイツなどと同様、公娼制度の下にあった(p270)
【私の評価】★★☆☆☆(66点)
目次
第1章 わらわし隊、中国へ
第2章 エンタツ・アチャコと柳家金語楼
第3章 柳家金語楼一行の足跡
第4章 わらわし隊の見た上海・南京
第5章 戦場にある笑顔と涙
第6章 深まる戦火
第7章 漫才「わらわし隊」
第8章 笑って死んでくれ
最終章 ミスワカナの死
著者経歴
早坂 隆(はやさか たかし)・・・1973年、愛知県出身。旅行雑誌の編集を経て、フリーのライターとなる。現地に密着したルポから旅行エッセイ、スポーツエッセイなどを手掛ける。2001年から2003年ルーマニアに居住。
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