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「毛沢東 日本軍と共謀した男」遠藤 誉

2017/06/21公開 更新
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毛沢東 日本軍と共謀した男 (新潮新書)


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

 第二次世界大戦終戦のとき、著者は、満洲国にいてソ連軍の侵攻、その後の共産党軍と国民党軍との戦いを目撃しました。長春市の国民党軍は、共産党軍に包囲され、家族の多くは餓死しました。どうしてこうなってしまったのでしょうか。


 著者が明らかにするのは、滅亡寸前だった中国共産党を日本軍が救ったということです。つまり、日本軍と国民党軍とを戦わせ、両者を消耗させることで、中国共産党が中国を占領することができたのです。中国共産党は、敵同士を戦わせることで、漁夫の利を得たのです。


・毛沢東が1950年代半ばに元日本軍人だった遠藤三郎(元陸軍中将)に会い、「日本軍が中国に侵攻してきたことに感謝する」と言ったという話はあまりにも有名だ(p237)


 中国共産党は、日本と戦うという名目で国民党と国共合作、つまり協力関係を作り、国民党から資金を引き出していました。さらには、日本軍に国民党軍の情報を提供して、日本軍からも資金をもらっています。これは、国民党軍と日本軍を戦わせ、自らは戦う姿勢だけを見せて力を蓄えておくというのが中国共産党の作戦だったのです。中国では、騙されるヤツが悪いのです。


 中国共産党は戦争では常に負けていましたが、スパイ活動と工作作戦により中国共産党の軍事力を保持したうえで、日本軍と国民党軍を戦わせ消耗させることに成功し、日本が敗戦すると国民党軍を攻撃して、台湾に追いやることに成功するのです。歴史は、毛沢東の考えるとおりに進みました。その後、毛沢東は日本軍に情報を提供していた秘密を知る共産党員を抹殺しています。


・日中全面戦争(1937年)が始まってからしばらくすると、毛沢東は中共のスパイを上海や香港に派遣し、日本の外務省系列の諜報機関「岩井公館」の岩井英一や、陸軍参謀の特務機関「梅機関」を設置した影佐禎昭などと接触させた・・蒋介石の国民党軍の軍事情報を日本側に提供し、国民党軍が弱体化することを狙ったのである・・証拠に、中共側スパイは日本側から多額の報酬をもらっている(報酬に関しては皮肉にも、厳しい検閲を受けたはずの90年代末の中共側資料に書いてある)(p126)


 中国で生き残ることは、非常に難しいとわかりました。最後に勝つのは、全体をコントロールして、最後に裏切ることをいとわない人なのです。遠藤さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・抗日戦争(日中戦争)の間は正面に出て日本軍と戦ったりせず、小さなゲリラ戦をやっては大きく宣伝し、いかに中共軍がすばらしいかを人民に浸透させる・・・日本が敗退したら一気に国民党軍を打倒し新中国を誕生させる(p107)


・『毛沢東年譜』・・「南京失陥」という4文字以外は、何ひとつ書いていないのである。なぜか・・なぜなら、そのとき最前線で戦っていたのは蒋介石が率いる国民党軍で、・・この事実が明るみに出ることを恐れたからだとしか考えられない(p117)


・岩井は・・1938年2月、ふたたび上海に赴任した。その目的はまたもや「(軍が起こした)戦争の早期終結のため」・・このときソ連スパイ、ゾルゲの仲間だった朝日新聞社の尾崎秀実が近衛内閣のブレーンになっており、コミンテルンの命令に従って蒋介石と日本が共倒れすべく、日中戦争を長引かせるためか、1938年1月16日、近衛に「蒋介石を相手にせず」という言葉を吐かせたものだから、岩井の事業は困難を来していた(p134)


・このころ中国では、日本軍が今後「北進するのか、それとも南進するのか」が最大の関心事となっていた。北進すれば日本軍はソ連と戦うことになり、ソ連はドイツと日本の両方から攻撃を受けることになる。これはソ連と提携している中共にとっては不利な体勢だ(p174)


・日本はいつも、肝心のところで毛沢東を助けている・・南進を決めた瞬間に日本は敗北への道を選んだというのが、中国における定説だ(p176)


・毛沢東はともかく、蒋介石が率いる国民党軍が第一線で戦ったような「過去の話」には触れてほしくなかったし、訪中するものが次から次へと「過去を謝罪する」ことに、うんざりしていたのである(p244)


・1964年7月10日に日本の社会党の佐々木更三や黒田寿男ら社会党系の訪中代表団と会ったときの会話が『毛沢東思想万歳(下)」・・に載っているが、興味深いのは、毛沢東自身は主として「進行」あるいは「占領」という言葉を使っているのに対して、日本語訳では、それらを「侵略」で統一していることだ(p245)


・朝鮮戦争後、対中包囲網を形成し台湾を支援し始めたアメリカほど「悪の国」はない・・そのため毛沢東は、尖閣諸島を含めた沖縄県を明確に日本の領土と称して「アメリカは植民地支配をやめて日本に帰せ」と主張していた(p259)


・江沢民は、日中戦争時代は日本軍閥側の官吏の息子としてぜいたくな暮らしをしていた・・自分の出自が中国人民に知られなどしたら国家主席どころか共産党員としての資格も剥奪されると、江沢民は恐れたにちがいない。自分がどれだけ反日的であるかを示すために、江沢民は1994年から始めた「愛国主義教育」の中で必死になって反日煽動を行い、出自を隠そうとした(p265)


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【私の評価】★★★★★(90点)


目次

はじめに──中華民族を裏切ったのは誰なのか?
第一章 屈辱感が生んだ帝王学
第二章 「満州事変」で救われる
第三章 日中戦争を利用せよ――西安事件と国共合作
第四章 日本諜報機関「岩井公館」との共謀
第五章 日本軍および汪兆銘政権との共謀
第六章 日本軍との共謀と政敵・王明の手記
第七章 我、皇軍に感謝す――元日本軍人を歓迎したわけ
おわりに――毛沢東は何人の中国人民を殺したのか?



著者経歴

 遠藤 誉(えんどう ほまれ)・・・筑波大学名誉教授 理学博士。1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。


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