【書評】「一気読みシェイクスピア」木村龍之介
2026/11/04公開 更新
Tweet
【私の評価】★★★★☆(84点)
Amazon.co.jpで詳細を見る
要約と感想レビュー
英語を勉強するならシェイクスピア
私は海外事業に7年間携わり、アメリカのニューヨーク、スイスのバーデン、カザフスタンの事務所で働いた経験があります。
そのため、英語を勉強するならシェイクスピアくらいは読まなければならないと思った時期がありました。結局シェイクスピアを読まないまま、今に至っています。
そこで今回、シェイクスピアの全37作品を解説したこの本を読んでみることにしました。415ページもあり、先週から読み始めて、ようやく読み終わりました。
著者は演出家として、シェイクスピア作品を現代の演劇として演出しているのです。
シェイクスピアが400年以上前に、これらの物語を書いたとは信じられません。英語を勉強するためというよりも、イギリス人というものを理解するために、シェイクスピアを読む価値があるのでしょう。
「シェイクスピアは物語のすべての型を作った」と言われていますが、まさに私たちが今触れているすべてのエンタメの原点がここにあります(p3)
人間を描いた37作品
「ハムレット」「ロミオとジュリエット」「マクベス」などの名前は知っていますが、詳しい内容までは知りませんでした。
この本のよいところは、作品のあらすじだけでなく、当時の社会背景、登場人物まで解説してくれることです。しっかりネタばれです。
例えば「ハムレット」は、父親を殺された王子が復讐に苦悩する物語です。
著者は、有名な「to be か not to be」という迷いから、最後には「let be(なるがまま)」という境地に至る、ハムレットの成長物語として解説しています。
また「ロミオとジュリエット」の「ああ、ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの?」というジュリエットのセリフは、ロミオへの愛を表現しています。
著者によれば、最初の2回の「ロミオ」は愛する恋人本人を指し、3回目は敵対するモンタギュー家に属する社会的な存在としてのロミオを指しているというのです。
もちろん、著者の解釈がすべて正解とは思いません。しかし、こうした解説がなければ、私のような初心者には、何がわからないのかさえわからないでしょう。
「オセロー」のテーマは、ずばり「嫉妬」です・・・「ああ、用心なさい、将軍、嫉妬というやつに。こいつは緑色の目をした化け物だ」(p98)
シェイクスピアに学ぶ人生哲学
興味深かったのは、シェイクスピアの作品には、現代の人生哲学にも通じる視点が描かれていることです。
例えば「ヘンリー五世」は戦場で、部下たちに「俺たちは歴史のヒーローになるぞ!」と熱く訴えます。現場の人々を感情に訴えて奮い立たせる姿は、現代のリーダーにも通じるものがあります。
一方、「ヴェニスの商人」では、金、銀、鉛の三つの箱から正しい箱を選ぶ場面が登場します。
金の箱は「世界中の誰もが欲しがるもの」、銀の箱は「自分にふさわしいもの」、鉛の箱は「欲しいもののために、持っているものをすべて投げ打つ覚悟」を意味しています。
私は、欲張りなお婆さんは大きいつづらを選び、誠実なお爺さんは小さいつづらを選ぶ「舌切り雀」を思い出しました。
さらに「アテネのタイモン」では、お金を配っている間は周囲からチヤホヤされていた主人公が、財産を失うと、誰からも助けてもらえなくなります。
著者は、当時のイングランド国王ジェームズ一世が浪費家だったことや、シェイクスピア自身の父親も裕福な暮らしから没落したことを紹介しています。
お金でつながった人間関係は、お金がなくなれば消えてしまう。現代社会も同じなのです。
ヘンリー五世はあくまで感情的に、ストレートに訴えます。「俺たちは歴史のヒーローになるぞ!」という、現場への熱い呼びかけです(p317)
現代に生きるシェイクスピア
シェイクスピアの作品は、現代社会にも影響を与えています。
例えば、明石家さんまが司会を務めていた「恋のから騒ぎ」は、シェイクスピアの「から騒ぎ」から名前を取っています。
また、2012年のロンドン・オリンピック開会式では、「テンペスト」の一節が使われました。「テンペスト」は、復讐する力を持った主人公が、最後には「復讐しない」ことを選択する物語です。
一方で、著者は「テンペスト」に、植民地支配に対する皮肉が含まれていると解説します。
シェイクスピア自身が、イギリスによる北米植民地建設を進めたヴァージニア会社と結びつきがあったこと。そして「テンペスト」が、他人の土地に土足で踏み込んでいく物語だからです。
37作品を学んでみて、まだまだ修行が足りないとわかりました。
木村さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・マクベス・・・荒野に三人の魔女が現れて、合唱します。「きれいは汚い、汚いはきれい。飛んで行こう、よどんだ空気と霧の中。」(p106)
・王様のキャラ・・ジョン王は「無能」、リチャード二世は「ポエマー(詩人)」、ヘンリー四世は「苦労人」、ヘンリー五世は「名君」、ヘンリー六世は「優柔不断」、リチャード三世は「暴君」、ヘンリー八世は「浮気者」(p287)
・薔薇戦争・・「赤バラ」のランカスター家と、「白バラ」のヨーク家・・・紅組を倒して功績を上げたリチャードなのですが、彼は王様になれませんでした。なぜなら、三男坊だったから・・・「俺はワルになる!」と宣言するのです・・・「殺人マシーン」・・リチャード三世はどこかロボット的です(p153)
・終わりよければすべてよし・・・自分の戦略通りに人を動かし、したたかに思いを叶えていく・・自分が幸せになる選択、それこそがヘレンにとっての正しい生き方である。そう思うと、とても今っぽいなぁと思います(p275)
▼引用は、この本からです

Amazon.co.jpで詳細を見る
木村龍之介、大和書房
【私の評価】★★★★☆(84点)
目次
第1章 人間凝縮の島 (ハムレット/夏の夜の夢/ジュリアス・シーザー/十二夜)
第2章 どうにもならない感情の島 (ロミオとジュリエット/オセロー/マクベス/アントニーとクレオパトラ)
第3章 この世界はどうなる?の島(リア王/リチャード三世/タイタス・アンドロニカス/トロイラスとクレシダ/コリオレイナス)
第4章 おしゃべりがとまらない!の島(から騒ぎ/お気に召すまま/間違いの喜劇/ウィンザーの陽気な女房たち/恋の骨折り損/ヴェローナの二紳士)
第5章 今の視点で観たい!の島 (ヴェニスの商人/アテネのタイモン/じゃじゃ馬馴らし/終わりよければすべてよし/尺には尺を)
第6章 人間クロニクルの島 (歴史劇って何?/ジョン王/リチャード二世/ヘンリー四世(全二部)/ヘンリー五世/ヘンリー六世(全三部)/ヘンリー八世)
第7章 奇跡が起きる島 (冬物語/シンベリン/ペリクリーズ/テンペスト)
著者経歴
木村龍之介(きむら りゅうのすけ)・・・1983年生まれ。演出家。東京大学文学部でシェイクスピアを研究。在学中から蜷川カンパニーなどプロフェッショナルな現場で演技・演出を学び、2012年に演劇カンパニー「カクシンハン」を創設、多数のシェイクスピア作品の演出を手がける。海外にも活動の幅を広げ、2026年にルーマニアで開催された「国際シェイクスピア・フェスティバル」では蜷川幸雄以来日本人2人目としてオープニングアクトに招聘、『シン・タイタス』を演出した。同時代のエンターテインメントとしてシェイクスピアをアップデートし続けている。
この記事が参考になったと思った方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
![]()























コメントする