【書評】「ベラルーシ獄中留学記」照井 希衣
2026/10/02公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(78点)
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要約と感想レビュー
鉄道撮影ベラルーシで拘束される
2024年12月、ベラルーシで鉄道を撮影していた日本人が拘束されました。著者の照井希衣さんです。
ベラルーシは旧ソ連の構成国で、ロシアによるウクライナ侵攻後は、日本の外務省はベラルーシのほぼ全土を危険レベル3、「渡航中止勧告」としています。
ところが著者は、外国の鉄道を撮影するのが大好きな、いわゆる「撮り鉄」でした。2023年には知人もベラルーシに1か月滞在し、国鉄やナローゲージを撮影しており、安易に真似をしたと思われます。
著者は頻繁にロシアやウクライナなどを訪れており、海外の鉄道好きの世界では、ちょっとした有名人だったのです。
2024年7月には、ベラルーシ在住の日本語教師だった中西雅敏さんも、ウクライナ国境周辺の鉄道や橋などを撮影したとして、スパイ容疑で拘束されています。
かつてソ連において、鉄道は軍事施設と同等の扱いで撮影は禁止されていた。もちろんベラルーシも例外ではなかった。しかし、ソ連崩壊後は鉄道の撮影は違法ではなくなったはずだ(p9)
著者は性同一性障害の「撮り鉄」
この本のポイントは、著者が大学時代に性同一性障害の診断を受けていることです。男性として生まれましたが、性自認は女性。大学進学を機に一人暮らしを始め、メイクをし、女性の服を着て、女性として大学に通うようになります。女性として生活することで、初めて自己肯定感を持てるようになったという。
ところが、そんな著者が旧ソ連の鉄道を撮影していた知人とルコで5日間行動をともにし、「撮り鉄」になってしまうのです。壮大な荒野を長大編成の貨物列車が進んでいく光景を見て、シャッターを切った瞬間には、震えるほどの快感を覚えたという。
知人の影響でベラルーシで鉄道撮影したら、突然拘束され、拘置所に入れられることになったのです。
大学時代、私は性同一性障害の診断を受けている。男性として生まれたが、性自認は女性だ。大学の卒業式では袴を着たし、女性として就職した(p37)
ベラルーシ獄中生活
ベラルーシの拘置所では、爆音で流れる国歌で起床。朝食、身体チェック、持ち物検査が終われば、やることは何もありません。暖房も十分ではなく、部屋は凍えるほど寒い。シャワーは週に一度、土曜日だけ。歯ブラシもシャンプーもなく、睡眠、食事、トイレをすべて同じ空間で行う。替えの服どころか、下着さえありません。
著者は拘置所の中で日記を書いていました。ところが、そのノートは看守に破り捨てられてしまいます。それを非難したら、2人きりになったところで平手打ちを受け、何度も殴られたという。
特に恐ろしいと思ったのは、日本大使館との領事面会です。日本国大使館は、著者が拘束されてから何度も面会を申し入れていました。ところがベラルーシ当局からは、「本人が希望していない」として拒否され続けたというのです。もちろん著者は、「断るわけがない」のですが、領事面会が実現したのは、拘束から3か月以上たってからでした。
看守は日記が書かれたノートを破り捨ててしまった・・・2人きりになった途端、突然、平手打ちを食らった・・・何発殴られただろうか・・拘置所の看守という立場の公務員が暴力を振るう現実に驚いた(p149)
KGBが恐れる「写真」
ロシアのウクライナ侵攻が続く中、ウクライナ国境近くの鉄道や橋を撮影する行為は、スパイ活動のように映ったのでしょう。本人にその意図がなくても、ベラルーシKGBは「趣味」なのか「情報収集」なのかを判断できない以上、拘束する必要があったのです。
私も2005年頃、カザフスタン旅行中に空港の写真を何気なく撮っていました。この本を読んで、「趣味で写真を撮る」ことが、場所によっては「攻撃のための情報を集める」ことと同じだと気づきました。
日本では鉄道や橋、港湾、空港などの写真を自由に撮影し、ネットで公開できます。スパイ天国と言われる一つの要因なのでしょう。照井さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・ベラルーシ在住の日本語教師だった中西雅敏さんは、ベラルーシ・ウクライナ国境地帯の写真を6年間で9000枚以上撮影し、日本に送ったなどとして拘束された(p8)
・佐藤さんは、海外の中でも、特に旧ソ連の鉄道をたくさん撮影していた・・2023年、佐藤さんはベラルーシに1か月間滞在していた。国鉄だけでなくナローゲージ(軽便鉄道)も撮影したらしく、その様子はインターネット上に公開されている(p21)
・2023年の夏、アルバニアで性被害を受けた・・・鍵がないドミトリータイプのホステルに宿泊した・・・なぜか私が寝る予定のベッドにホステルのオーナーがずっと腰掛けている・・・私がつけていた女性物の下着を剥ぎ取り、性交しようとしてきたのだ(p108)
▼引用は、この本からです

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照井 希衣、小学館
【私の評価】★★★☆☆(78点)
目的
第1章 拘束
第2章 投獄と性同一性障害
第3章 獄中留学
第4章 KGB
第5章 母と父
第6章 在ベラルーシ日本国大使館
第7章 カウントダウン
第8章 解放
著者経歴
照井 希衣(てるい きい)・・・2000年神奈川県生まれ。2024年12月、ベラルーシにて鉄道を撮影していたところを拘束された。2025年6月、トランプ大統領の働きかけでルカシェンコ大統領の恩赦により釈放。
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