【書評】「マネジャーの全仕事 いつの時代も変わらない「人の上に立つ人」の常識」ローレン・B・ベルカー、ジム・マコーミック, ゲイリー・S・トプチック
2026/05/05公開 更新
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【私の評価】★★★★☆(81点)
要約と感想レビュー
新任管理職への助言
1982年にアメリカで刊行され、新任管理職向けの定番書として読み継がれてきた一冊です。40年以上版を重ねているということは、本書の内容がアメリカの実情に合っているということなのでしょう。
新任管理職にとって、着任直後が最も難しい時期となります。
なかには、明らかに答えられないような質問をわざとぶつけて、新任管理職の反応を試す部下さえいるといいます。これは「この人は知らないことを素直に認められる人か、それとも知ったかぶりをする人か」を見極めるテストのようなものです。
こうした状況への対処として著者が勧めるのは、着任直後は腰を据えて仕事に取り組むことです。
経営陣から業務の刷新を明確に命じられているのでなければ、いきなり変化を起こすのは得策ではありません。変化は誰にとっても脅威であり、変化は部下の抵抗を招き、管理職自身への印象も損ねます。
まずは現状をよく観察し、信頼を積み重ねることが先決なのです。
着任に際しては、「運用に関わる変更はすぐにやらない」と決めておこう・・・たいていの人にとって変化は脅威であり、意識的にでも無意識にでも、とにかく抗(あらが)ってしまうものだ(p25)
部下思いのマネジャーになる
著者が一貫して強調するのは、「部下思い」のマネジャーになることの重要性です。管理職の評価は、最終的には担当部署の業績によって決まります。そしてその業績を左右するのは、直属の部下が本気で動いてくれるかどうかにかかっているからです。この点は、多くの管理職が見落としがちな真実です。
部下の仕事ぶりを正しく把握し、成果が出たときは素直に褒め、うまくいかなかったときは適切にフィードバックする。自分が得た情報は積極的に部下と共有し、会社の方針に沿って動けるよう支援する。こうした基本的な行動の積み重ねが、部下の信頼と動機づけを生み出します。
さらに著者は、部下一人ひとりのモチベーションの源泉を把握することを勧めています。出世を目指している人、上司からの承認を求めている人、報酬を最優先にしている人。それぞれの動機に合わせた関わり方をすることで、成果は大きく変わってきます。
権力を振りかざさず、穏やかに接することが、部下との良好な関係の基盤になると著者は述べています。
あなたの今後の昇進については、社長よりも部下の影響が大きい。この豆知識は常に明白であるにもかかわらず・・・自分のキャリアを実際に左右する部下を軽視しがちである(p26)
困った部下への対処法
管理職である以上、さまざまなタイプの部下と向き合わなければなりません。
攻撃的な人、いい加減な人、精神的に不安定な人、手柄を横取りする人、指示に従わない人、不満ばかりを口にする人。こうした問題を抱えた部下を放置すれば、職場全体の雰囲気が悪化し、チームの成果にも影響が出ます。
著者が推奨する対処法は、変えるべき点とその理由を、本人に率直に伝えることです。相手を責めるのではなく、相手の成功を願っているという姿勢で伝えることが大切です。
話し合いを通じて改善が見られればよし、改善されない場合は、最終手段として解雇という選択肢もありえるのが、アメリカの書籍だと思いました。その際は会社のガイドラインに従い、上司や人事部と連携しながら対応することが求められます。
困った部下・・・「仕事で成功してほしいから話しているんだよ」、「態度の問題が改善できれば、仕事がずっとうまくいくはずだ」と相手に伝えよう(p105)
組織内で出世する秘訣
上司のタイプはさまざまで、ワンマン、分析肌、モチベーター、気配り屋など、千差万別です。著者は、上司の好みや意思決定のスタイルを把握したうえで仕事を進めることで、業務がスムーズに進むと述べています。
また、自部署の利益だけを優先した発言を繰り返していると、発言の信頼性が失われ、重要な場面で意見を求められなくなるリスクがあります。常に全社の視点から発言する習慣が、長期的な信頼につながります。
そして著者が挙げる出世の秘訣として、最も印象的なのが「自分の後継者を育てること」です。自分が昇進しても担当業務が滞らない状態をつくっておくことが、次のポジションを任せてもらえる必須条件になるからです。
自己アピールはさりげなく行うことが大事といった助言もあり、1982年のアメリカの書でありながら、どこか日本的なものを感じさせる内容でした。これが時代や国境を越えて通用する「人の上に立つ人の常識」なのでしょう。
ベルカーさん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・いきなり変化を起こそうとせず、じっくり取り組もう・・・年長のマネジャーなら「決定力がある」と評価される行動を、若いマネジャーがやると、「性急だ」とレッテルを貼られてしまう(p241)
・変化への抵抗を減らす方法・・・「どうすればこの変更を部署に実装できるだろうか」と部下に尋ねよう・・・抵抗していた部下を巻き込んだ途端、最高の推進者になってくれることさえある(p143)
・マネジャーは幅広い役割を演じ分けねばならない。コーチ、業務基準の設定者、業績評価者、教師、動機づけのプロ、ビジョナリーなリーダー、(p58)
・新人の配属のタイミングは、「改善の種まき」の時期でもある。新しい部下には以下のようなことを伝えておこう・・・教育期間が終わったら、現在の業務を改善するための提案をしてください(p133)
▼引用は、この本からです

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ローレン・B・ベルカー、ジム・マコーミック, ゲイリー・S・トプチック(著)、
ディスカヴァー・トゥエンティワン
【私の評価】★★★★☆(81点)
目次
第1部 マネジャーになるあなたへ
第2部 新しい仕事に取り組む
第3部 心を掴み、人を動かす
第4部 人事評価を行う
第5部 成長し、さらに上を目指す
第6部 人としての総合力を高める
著者経歴
ローレン・B・ベルカー(Loren B. Belker)・・・約30年間にわたり、アメリカ中西部の大手保険会社の役員を務めた。1982年に刊行した本書はマネジメントの定番書として、8つの言語に翻訳される世界的ベストセラーとなった。第4版を著した後、他界
ジム・マコーミック(Jim McCormick)・・・コンサルタント、エグゼクティブ・コーチ。不動産、建設業にてキャリアを積み、全米を代表する建築設計会社のCOOを経て独立。リスクからイノベーションを生みだすノウハウを提供し、グローバル企業のリーダー育成に尽力している。南カリフォルニア大学工学部卒、カリフォルニア大学アーバイン校MBA。著書多数。スカイダイビングの世界記録も持つ
ゲイリー・S・トプチック(Gary S. Topchik)・・・マネジャー育成を専門とするコンサルティング会社、シルバースター・エンタープライジズのマネジング・パートナーを務めた
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