【書評】「半うつ 憂鬱以上、うつ未満」平 光源
2025/09/29公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(87点)
要約と感想レビュー
「半うつ」で助かる人がいる
医学部受験に失敗し、3浪が決定してから約3か月間、うつ病に苦しんだ精神科医が「半うつ」という病名を提案する一冊です。
世の中には、名前のない病気がたくさんあります。そして、名前を付けることで、支援方法が明確になり、本人も周囲も助かることが多いのです。
例えば、更年期障害、ADHD、ASD(自閉症スペクトラム障害)などは昔は病名がなかったので、ADHDは落ち着きがない人、更年期障害は老化現象と見られていたのです。
もし、「うつ病」未満の「半うつ」という病名があれば、著者もうつ病になる前に、誰かに相談できていたのではないか、あんなにも苦しまなくて済んだのではないかと著者は思うのです。
「半うつ」という名前があることで、・・「あ、これは半うつという状態なんだ」・・そう思えるだけで、心は軽くなるはずです(p11)
うつ病を治す方法
うつ病を治すには、まず、食事と睡眠の改善からと著者は説明します。しっかり食事を取って、しっかり寝ることで、気分が改善して興味や喜びを感じられるようになってくるのです。
特に睡眠については、精神医学的には、成人で6時間未満の睡眠が週に3日以上続くと「睡眠不足」と定義されます。うつ病で眠れない原因は、上司からの圧力や、明日の不安が、「動物の私」が「危険な状態」として感じ取ってしまい、「考える私」は眠りたいのに、眠らせてくれないというのです。
したがって、睡眠を取るためにも仕事を休んで、静かな時間を取り戻し、リラックスできる時間を増やすしかないのです。
また、筋肉を動かさないと血流が悪くなるので、やる気を出すためにも、運動することもよいのです。
心の土台は「食う」と「寝る」から(p90)
うつ病を予防する方法
うつ病を予防するためには、頑張り過ぎないことです。
週に1日だけは自分だけの静かな時間をつくりましょう。反対に、週に1日は誰かと触れ合う時間をつくりましょう。お腹が空いたら食べる。眠いと感じたら寝る。トイレに行きたいと感じたら、出す。これが無理をしない練習なのです。
「嫌だな」「きついな」と感じたら、一度立ち止まって「今やる必要があるか?」自問すればよいのです。
完璧主義の人なら、100点じゃなくても、0点より60点の方がずっといいと考えてみましょう。
どうしても悪いことばかり考える人は、ぜひ眠る前に「今日良かったこと」を3つ思い出してみるのも効果的です。
頑張り過ぎない人のほうが・・・遠くへ行ける(p138)
他人の期待から自分の期待へ
実は著者自身も、いやな仕事を続けていたのです。3浪までして精神科医になったのに、そこは教授のコマとなって、人の足りない病院の応援に行くだけの指示待ち会社員のような生活が待っていました。
仕事でも、患者さんの話をじっくり聞いてあげたいのに、先輩からは「薬を使ったほうが効率的だ。2週間で良くなる」と儲かるアドバイスしかなかったのです。
しかし、東日本大震災で多くの人の死に直面した著者は、薬を使わない精神科医として独立することになります。ここから先は、別の一冊になるのでしょう。
精神科医が、本当の意味での心のアドバイザーになる時代になってきたのかもしれません。平さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・出世競争で戦って出世を勝ち取りたければ、ぜひ勝ち取ってください。でも、あなたが半うつになったとしたら、それまでの生き方があなたの本当の望みではなかったかもしれません(p200)
・半うつチェックシート・・朝起きるのが辛く、朝起きた時点で「もう疲れている」と感じる・・「あの時ああしていれば」と自分を責めることが増えた」(p14)
・恥ずかしがらずに「辛い」と言ってください。苦しい自分を、「苦しい」と認めてあげてください(p54)
・死にたいと思うということは、あなたの心が「生きよう」とする機能を取り戻し始めている証拠です・・回復に向かっているからこそ、死にたくなってしまうわけです。生きることにワクワクできない自分を許してあげてください(p188)
▼引用は、この本からです
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平 光源 (著)、日刊現代
【私の評価】★★★★☆(87点)
目次
第1章 憂鬱以上、うつ未満
第2章 半うつになるのも、しょうがない
第3章 半うつにつけるくすり①「食う・寝る」心に燃料を補給する
第4章 半うつにつけるくすり②「セロトニン」ほどよいブレーキのかけ方
第5章 半うつにつけるくすり③「ノルアドレナリン」安全で快適なアクセルの踏み方
第6章 半うつにつけるくすり④「ドーパミン」止まりかけたエンジンの動かし方
終章 精神科医だって、ちゃんと苦しいし、辛い
著者経歴
平 光源(たいら こうげん)・・・東北のとある精神科医院を営む精神科医。高校時代、自分の不登校によって医学部受験に失敗。3浪してうつになり、ある本がきっかけでうつから回復した経験をふまえて、約25年、精神科医として心のケアに当たる。支援学校学校医、老健施設往診医、いのちの電話相談医、傾聴の会顧問など、その活動は多岐にわたる。精神保健指定医、精神科専門医、日本医師会認定産業医。
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