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「キツネを飼いならす: 知られざる生物学者と驚くべき家畜化実験の物語」リー・アラン・ダガトキン、リュドミラ・トルート

2024/07/04公開 更新
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「キツネを飼いならす: 知られざる生物学者と驚くべき家畜化実験の物語」リー・アラン・ダガトキン、リュドミラ・トルート


【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー

キツネの家畜化実験

ロシアで60年前から行われていた、キツネの家畜化実験について説明した一冊です。生物学では、「なぜ、わずかな動物しか家畜化されなかったのか?」「動物の行動には、遺伝と学習のどちらが大きく関わっているのか?」など、未解決の課題があるという。


キツネの家畜化実験により、これらの課題へのヒントがわかるかもしれないのです。キツネは年に一度しか繁殖しません。キツネの家畜化実験は、もっともおとなしいキツネを選び、交尾させ、それを毎年、繰り返していったのです。


家畜化のプロセスとともに・・垂れた耳、巻いた尻尾、ぶち、一年に一度だった交尾の回数の変化がなぜ起きるのか(p31)

家畜化で遺伝子レベルの変化が起きる

自然のキツネは臆病で攻撃的なのですが、おとなしいキツネだけ選別を続けると、攻撃的なキツネの比率は減っていきました。人間に対し、尻尾を振ったり、かまってほしいと近づいてくるキツネの比率が増えていったのです。キツネの顔つきも鼻づらは短く、耳も垂れ、友好的な行動とともに、友好的な顔つきになっていったという。


著者たちの研究者グループは、従順な母ギツネの子宮から胚を取り出し、攻撃的なキツネの子宮に移す実験もしました。その結果、子ギツネたちは、攻撃的な育ての母親のようではなく、遺伝上の母親と同様に従順だったのです。家畜化されたキツネの遺伝子解析でも、イヌの家畜化に関わった十二番染色体に類似性が見られたということで、家畜化により遺伝子レベルの変化が起きることが示唆されたのです。


従順なキツネの鼻づらはより短く、丸く変化し、友好的な行動と似つかわしい友好的な顔つきになった(p153)

ヒトは家畜化されたサルなのだろうか

イヌの家畜化は1万5千年前、ヒツジとネコは1万500年前、ヤギは1万年前、ブタとウシは9千年前に家畜化されたという。今回のキツネの家畜化実験ではたったの60年で家畜化されたのですから、思ったよりも家畜化は容易に起きるのだと思いました。


この本では、現代社会ではヒトも、動物と同じように家畜化されているのではないか、ヒトは家畜化されたサルなのだろうかという問いを紹介しています。確かに会社員や官僚は、組織に家畜化された人間なのかもしれません。ダガトキンさん、トルートさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・家畜化された哺乳類に起きた変化はよく似ている・・点、ぶち、白ぶち・・垂れた耳、丸まった尻尾、幼い顔立ち(p20)


・シマウマは、繁殖可能なほどウマとは近縁の種だ・・しかしウマと遺伝的に近い関係にあるにもかかわらず、シマウマの家畜化はうまくいかなかった(p33)


・カケスは九か月のあいだに貯蔵した六千から1万1千個のドングリの貯蔵場所を憶えている(p194)


▼引用は、この本からです
「キツネを飼いならす: 知られざる生物学者と驚くべき家畜化実験の物語」リー・アラン・ダガトキン、リュドミラ・トルート
リー・アラン・ダガトキン、リュドミラ・トルート、青土社


【私の評価】★★★☆☆(79点)


目次

序論 なぜキツネはイヌのようになれないのか?
1 大胆なアイディア
2 もう火を吐くドラゴンはいない
3 アンバーの尾
4 夢
5 幸せな家族
6 繊細な相互作用
7 言葉とその意味
8 SOS
9 キツネのように賢く
10 遺伝子の激変



著者経歴

リー・アラン・ダガトキン(Lee Alan Dugatkin)・・・ルイビル大学の生物学科教授、科学史家


リュドミラ・トルート(Ludmila Trut)・・・ シベリアのノボシビルスクの細胞遺伝学研究所の進化遺伝学教授。1959年以降キツネの家畜化実験の主任研究者


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