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「限りある時間の使い方 人生は「4000週間」あなたはどう使うか?」オリバー・バークマン

2024/07/03公開 更新
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「限りある時間の使い方 人生は「4000週間」あなたはどう使うか?」オリバー・バークマン


【私の評価】★★★★☆(87点)


要約と感想レビュー

タイムマネジメントの限界

イギリスの新聞記者が、時間管理について掘り下げた一冊です。著者は、仕事やお金の不安からスキマ時間を使って、ライターの副業をこなしていました。しかし、いくら頑張っても、ToDoリストを作って、処理していっても不安は消えなかったのです。


どうでもいい仕事は片づきますが、重要な仕事は先送りされ、締切直前になってようやく取りかかり、中途半端な仕事で終わるという始末。時間を無駄にしたくないのに、難しいタスクに着手せず、簡単なタスクに逃げる自分がいるわけです。


著者は、現実を受け入れ、すべてをやることはできないと認めることで気持ちが楽になったという。つまり、いくら効率的に仕事をしたとしてもすべてのことは達成できないのです。


限界を受け入れるというのは、つまり「何もかもはできない」と認めることだ(p43)

自分の限界を受け入れる

限界を受け入れるというのは、自他ともに期待されることをすべてできるわけではないと理解するということでしょう。著者は頑張っていましたが、自分に要求するレベルが高すぎて、これで充分であるという満足感を得られないと気付いたのです。日々のあらゆる努力をし続ければ、理想の未来がやってくるわけではないのです。


大きすぎる期待に応えようとするよりも、目の前のことをやってみる。そう考えるほうが、気楽に一歩を踏み出せるというわけです。私には明石家さんまの口癖である「生きているだけで丸儲け」に近い考え方だと感じました。


現実から逃げるのをやめれば苦痛がやわらぐ・・・やり遂げるには・・今起こっていることをそのまま見つめたほうがいい(p132)

やることを絞り込む

そして限界を受け入れるということは、やることを絞り込むということです。ところが、その絞り込むのが難しいのです。


なぜ、読書をするのか。なぜ、異業種交流パーティーに参加するのか。なぜ、副業するのか。なぜ、旅をするのか。自分はいったい何のために生きているのか?という問いに答えなくては、絞り込めないからです。


そうすると、将来の不安からやっていることがあるのではないか。ありのままの自分ではなく「あるべき姿」に縛られてやっていることがあるのではないか、と問いは膨らみます。「今日が人生最後のつもりで」という考え方がありますが、そう考えても著者も実際には絞りきれていないという。


重要なものから重要でないものへと順番に並べて・・そのうち上位の5つに時間を使う・・適度に魅力的な選択肢こそが危険であるということだ(p96)

平凡な幸せ

自分はいったい何のために生きているのか?という問いに対し、著者は「ありふれたものに新しさを見いだす」という提案をしています。散歩をしてみたり、写真を撮ったり、野鳥観察をしたり、日記をつけたり、子どもと遊ぶのです。


なぜ、そんな平凡な幸せを提案するのか、気づきの事例として世界を旅しながら仕事をするノマドワーカーのエピソードを紹介しています。そのノマドワーカーは、日本の小さな町で、家族が一緒に自転車に乗っているのを見て泣き崩れたという。自分は自由を手に入れたのと引き替えに、家族と過ごす平凡な幸せを手放してしまったことに気づいたというのです。


人は自分にとって大切なことを選択しているつもりでも、本当に大切なことを大切にしているとは限らないということなのです。


1年間世界中を旅するという一見遊びに満ちた体験さえも、「より豊かな経験をした自分」になるための手段だったりする(p168)

人の幸せの形は人それぞれ

この本では、一人でいるより、集団の中でルールに身を任せるほうが、自由になれることもあることを紹介しています。軍隊や組織の一員として活動することや、始業時にラジオ体操をする日本の会社員など仲間と一緒に体を動かすことで団結心が強まる事例は多いのです。


また、歌手のロッド・スチュワートが、20年間、趣味として巨大な鉄道模型を制作してきたことも紹介しています。結局、人の幸せの形は、人それぞれということでしょう。自分が満足する小さなことをやりながら、その枠の中で、自分が幸せになればいいのです。一燈照隅万燈照国という言葉を思い出しました。


著者自身も人生の答えを持っていないようですが、それでよいのだと思いました。バークマンさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・18世紀後半、イギリスの農民たちは都市部に移り住み、工場で働く労働者になった・・こうして、時間に値段がつけられた(p31)


・不安・・この人生しかないということ・・ただ一度きりのチャンスだということ(p39)


・仕事が速いね、という評判が広まれば、あちこちからどっさり仕事が降ってくる(p53)


・会社の副社長を務める彼女は・・出張の途中で「自分の人生が嫌いだ」と気づいたとき、あなたはすでに、よりよい人生への第一歩を踏み出している(p236)


▼引用は、この本からです
「限りある時間の使い方 人生は「4000週間」あなたはどう使うか?」オリバー・バークマン
オリバー・バークマン、かんき出版


【私の評価】★★★★☆(87点)


目次

イントロダクション 長い目で見れば、僕たちはみんな死んでいる
PART 1 現実を直視する
第1章 なぜ、いつも時間に追われるのか
第2章 効率化ツールが逆効果になる理由
第3章 「時間がある」という前提を疑う
第4章 可能性を狭めると、自由になれる
第5章 注意力を自分の手に取り戻す
第6章 本当の敵は自分の内側にいる
PART 2 幻想を手放す
第7章 時間と戦っても勝ち目はない
第8章 人生には「今」しか存在しない
第9章 失われた余暇を取り戻す
第10章 忙しさへの依存を手放す
第11章 留まることで見えてくるもの
第12章 時間をシェアすると豊かになれる
第13章 ちっぽけな自分を受け入れる
第14章 暗闇のなかで一歩を踏みだす
エピローグ 僕たちに希望は必要ない
付録 有限性を受け入れるための10のツール



著者経歴

オリバー・バークマン(Oliver Burkeman)・・・イギリスの全国紙ガーディアンの記者として、外国人記者クラブ(FPA)の若手ジャーナリスト賞などを受賞した気鋭のライター。著書『解毒剤 ポジティブ思考を妄信するあなたの「脳」へ』が世界各国で話題を呼んだ。ガーディアン紙で心理学に関する人気コラムを毎週執筆中。ニューヨーク・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルといったアメリカの有名紙、雑誌サイコロジーズやニュー・フィロソファーにも記事を寄せている。ニューヨーク在住。


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