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「最速で身につく世界史」角田陽一郎

2024/06/20公開 更新
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「最速で身につく世界史」角田陽一郎


【私の評価】★★★★☆(82点)


要約と感想レビュー

歴史は繰り返す

「さんまのスーパーからくりTV」のプロデューサーであった著者が、世界史の面白さを教えてくれる一冊です。


著者が高校を卒業した1989年は、歴史が大きく動いた年でした。日本では1月に昭和天皇が崩御し、6月には中国天安門事件が発生。11月にはベルリンの壁が崩壊しました。著者は、200年前の1789年にはじまった民主革命であるフランス革命と同じように、目の前で歴史が動いていることに感動し、歴史に興味を持ったのです。


歴史は繰り返すと言われますが、2020年からの新型コロナウイルスのパンデミックも、200年前のコレラパンデミックと似ています。19世紀にも欧米、日本でコレラで多くの人が亡くなっているのです。


200年前の19世紀は、まさにコレラの時代でした・・作家の夏目漱石(1867-1916)は青春時代をこのコレラ・パンデミックの時代に過ごしている(p328)

世界史は侵略の歴史

世界史は侵略の歴史でもあります。ウクライナ侵攻しているロシアの歴史を見ると、13世紀にキエフ公国がモンゴル帝国に征服され、1480年にモスクワ大公・イヴァン3世がモンゴルの支配からこの地を奪回しています。


スペインは1519年にメキシコのアステカ王国を滅ぼし、1532年にペルーのインカ帝国を滅ぼしています。1549年にはスペイン人のフランシスコ・ザビエルがキリスト教を日本に伝えていますが、日本も弱ければ、滅ぼされたのでしょう。


島国のイギリスは海軍に富をつぎ込み、東インド会社の拠点であるインドを1858年に植民地化します。イギリスは他の地域では商品を輸出できる市場が確保できれば、自由貿易を推進しています。


このような侵略の歴史を見ていくと、栄枯盛衰、おごれる人も久しからずであるとわかります。強国は軍事力で権力を握り、その権力で裕福になると軍事力は減衰し、軍事力を持つ代替者で補うようになり、やがてその代替者が、権力を握るようになるのです。


カルロス1世の息子・フェリペ2世は、スペイン帝国最盛期に君臨・・フィリピンとは「フェリペの領土」という意味です(p189)

フランス革命にワクワクする

フランス革命の各派閥の争いは、「機動戦士ガンダム」の地球連邦軍とジオン公国との対立以上のストーリーが展開され、著者はワクワクするという。そして著者は、将来的に世界最多数になると言われているイスラム教徒と、世界最多の人口を持つ中国が世界の主軸となっていくだろうと予想しています。


地震、疫病、革命、戦争、不況、飢饉などは繰り返し起きており、今後も繰り返されるのでしょう。角田さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・朱子学・・上下の秩序・大義名分を最も重んじ礼節を尊ぶ思想・・度が過ぎると、過去重視による未来の否定、継続の重視による確信の否定につながります(p123)


・11世紀の十字軍の頃から中世ヨーロッパ地域では・・気候が温暖化し、寒冷地だったアルプス以北のヨーロッパが温かくなりました・・畑が開墾され、ムギの収穫量が倍増(p142)


・産業革命・・工場労働者・・学校制度が発展・・「食べるために働く」から「働くために食べる」(p225)


・ペスト(黒死病)。14世紀のイングランドでは、ペストが人口の半分を死に追いやり、それにより中世の封建鮮度を維持するだけの農民の労働力が不足し、結果的に封建領主の地位が下がって、農民の地位が向上し始めた(p329)


▼引用は、この本からです
「最速で身につく世界史」角田陽一郎
角田陽一郎、大和書房


【私の評価】★★★★☆(82点)


目次

第1講 文明の話
第2講 水の話
第3講 宗教の話
第4講 思想の話
第5講 帝国の話
第6講 商人の話
第7講 中華の話
第8講 民族の話
第9講 征服の話
第10講 周縁の話
第11講 発見の話
第12講 芸術と科学の話
第13講 国家の話
第14講 約束の話
第15講 理想の話
第16講 革命の話
第17講 産業の話
第18講 統合の話
第19講 分割の話
第20講 戦争の話
第21講 イデオロギーの話
第22講 お金の話
第23講 情報の話
第24講 未来の話
第25講 環境の話



著者経歴

角田陽一郎(かくた よういちろう)・・・バラエティプロデューサー、文化資源学研究者。1970年千葉県生まれ。東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSテレビに入社。TVプロデューサー、ディレクターとして「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマたちへ」「EXILE魂」などを制作。2009年ネット動画配信会社goomoを設立。映画『げんげ』監督、音楽フェスティバル開催、アプリ制作、舞台演出、その他多種多様なメディアビジネスをプロデュース。2016年にTBS退社、フリーに。番組プロデュースや企業コンサルなどの傍ら、東京大学大学院・人文社会系研究科・文化資源学研究専攻・文化経営学修士課程へ入学。現在、東京大学文化資源学研究専攻文化経営学博士課程に在籍中。


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