トラック輸送の生産性を高めるには?「ルポ トラックドライバー」刈屋大輔
2024/05/14公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(77点)
要約と感想レビュー
物流2024年問題とは
2024年4月からトラックドライバーの時間外労働が、年間960時間に制限されました。物流2024年問題とは、この時間外の制限によって輸送能力が低下して、国内物流に悪影響が予想されているのです。年間960時間ということは月80時間。これで輸送能力が14%減るというですから、トラックドライバーの労働時間はさらに長いのです。
バブルの頃のトラックドライバーは、長時間勤務でも頑張れば年1000万円も稼げる仕事でした。1990年の新規参入の規制緩和により、物流コストが下がり、トラックドライバーの平均給与は500万円程度です。給与が低いこともあり、トラックドライバーは慢性的に不足しています。さらに時間外の制限で、ますます輸送能力低下し、物流コストは上がっていくのでしょう。
また短期的には、残業代が減るのでトラックドライバーが副業で収入を得ようとする可能性もあり、過労によるトラブルの発生も不安要素なのです。
1980年代後半には、「年収が1000万円を超えるトラックドライバーも少なくなかった」が、1990年の規制緩和で事業者間の競争が激化(p36)
トラック輸送の生産性の課題
トラックドライバーの不満としては、工場にジャストインタイムで積み降ろししなくてはならないのに、待機場所が少ないことでしょう。多くのトラックは決められた時間になるまで、高速道路のPA,SAや倉庫周辺の路上などで待機しているのです。
また、待機している時間も労働時間ですから、法的に必要な休息時間を取りながら、時間外の上限を守るのは難しい事業者も出てくるでしょう。従来はトラックドライバーの立場が弱く、できるだけ荷主の要求どおりにしてきましたが、法律を守ると荷物を運べないので、そのしわ寄せはどこに行くのでしょうか。
コンテナ輸送に注目すると、東京のコンテナターミナルでは、待機時間が平均2時間以上、最長では8時間となっており、トラックドライバーはトイレにも行かず、順番を待っているという。これは日本の多くのコンテナターミナルが昼間しかオープンしていないためです。海外の主要港では、港湾荷役を365日24時間体制で行っていることと比べると、問題があると著者は指摘しています。
海外の主要港では、接岸した船での積み降ろしやコンテナヤードのハンドリングといった港湾荷役を365日24時間体制・・ところが、日本では未だ港湾荷役の稼働時間を制限している港が少なくない(p115)
軽トラ運送業への女性の進出
著者は軽トラ運送業への女性の進出を予想しています。軽トラ運送業とは、軽自動車一台で開業できる魅力的な仕事なのです。例えば、軽トラ運送業の典型的な一日は、午前六時すぎから、途中一時間の休憩を挟んで午後八時頃まで働くとして、業務委託料は一日当たり1万8千円。月26日稼働で46万8千円になるという。
軽トラドライバーの時給は1400円程度で、パートに比べれば高いので、軽トラ業に挑戦する女性も増えるだろうというのです。ネットの輸送が増えれば、時給も増えるでしょうから、今後有望なのかもしれません。
もう少し輸送問題について調べたいと思います。刈屋さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・新型コロナ・・B2B貨物が一気に冷え込んだのとは対照的に・・・B2C貨物の荷動きは「巣ごもり消費」の拡大で急伸している(p91)
・トラックドライバーには乗務終了後、継続八時間以上の休息期間を確保することが法的に求められている・・副業としてハンドルを握ることは、このルールに抵触する恐れがある(p79)
【私の評価】★★★☆☆(77点)
目次
第一章 長距離トラックドライバー
第二章 軽トラの一人親方
第三章 アマゾンを運ぶドライバーたち
第四章 宅配便ドライバー
第五章 新型コロナと戦う
第六章 女性ドライバーの素顔1
第七章 女性ドライバーの素顔2
第八章 ドライバー不足解消に向けた処方箋
第九章 宅配便を「置き配」するギグワーカー
第十章 荷物も運ぶようになった
第11章 ト ラ ッ ク ド ラ イ バ ーはも う 要 らな い?
著者経歴
刈屋大輔(かりや だいすけ)・・・1973年生まれ。物流ジャーナリスト、青山ロジスティクス総合研究所代表。青山学院大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。経営学修士号(MBA)。物流専門紙『輸送経済』記者、『月刊ロジスティクス・ビジネス』副編集長などを経て現職。一般社団法人フラワーリボン協会常務理事
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