人生を変えるほど感動する本を紹介するサイトです
本ナビ > 書評一覧 >

「ときめき老後術: ひとり暮らしの骨董ざんまい」上坂 冬子

2024/04/23公開 更新
本のソムリエ
本のソムリエ メルマガ登録[PR]

「ときめき老後術: ひとり暮らしの骨董ざんまい」上坂 冬子


【私の評価】★★★★☆(81点)


要約と感想レビュー

骨董品収集のきっかけ

骨董の写真と、著者のイラストがいいなぁと図書館で手にした一冊です。著者は独り身なので、作家としての収入を骨董品に注ぎ込み、深夜に古い骨董品を見て過ごすのが至福のひとときだという。


骨董収集のはじまりは、自分の料理をきれいな食器に盛り付けることをイメージしながら食器頒布会に申し込みしたことだという。そこから、作家として有名になり講演会に呼ばれた山口県萩市で、小ぶりの高価な抹茶茶碗を買い求めたのが、高額な骨董品収集のきっかけになったのです。


最近は、「最後の晩餐」はどの皿を使って、何をその上に乗せて出そうかと考えることがあるという。


古い船箪笥があり、深夜にその引き出しから古い皿、小鉢を取り出してニッコリ笑って過ごすのが私にとって至福のひとときだ(p8)

惹きつけられるものを買う

骨董品にはニセモノがつきものですが、いいなぁと気に止めたものの、本物かなぁ?価格は適正なのか?などと思い悩んで何度買い逃したことか。その買い逃したときのことを思い出し、その悔しさで、何度も地団駄を踏んだというのですから、尋常ではありません。


さらに、思ったより安いと、「どうせ安かったんだから」とどこか軽蔑している自分に気づいたり、高いときには、損したんじゃないかと不安にもなるという。だから、著者は「人生も、骨董も、チャンスは一度逃したら簡単には戻らない」と自分を励ましつつ、惹きつけられた骨董品を買い求めるようにしているというのです。


私自身が気に入っているから、ホンモノでもニセモノでもかまわない。素人にとっては、ホンモノにちがいないと信じて疑わないところが大切なのである(p89)

欲しいもののあるうちが花

骨董とは株式投資と似ていると思いました。買った価格が適正なのは不安になるし、買わない決断をしたときに後悔することもあるので、これだけ配当があり、業績が上がっているよい会社なのだからと思ったら、買うべきなのです。


骨董品の場合は、それを所有し鑑賞するときの喜びが配当となるというわけです。価値が上がれば上がったでうれしいし、ニセモノだとしても喜びは変わらないのですから。


ある種、骨董品は病気だなと感じつつ、著者は独り身なので自分の収入を好きなものに使って文句を言われる筋合いはありません。著者の母親の「欲しいもののあるうちがこの世の花の時期だ」という言葉が、人生の買い物の本質を示しているのでしょう。上坂さん、良い本をありがとうございました。


無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信)
3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。

この本で私が共感した名言

・太田垣連月(れんげつ)の作品を知る前に、その人生に惹かれた。17歳で結婚して25歳で夫を亡くし、そのあと29歳で再婚して33歳でその夫も病没したばかりでなく、それまでに生んだ4人の実子も失った(p40)


・私は銀座の和菓子屋の名店で、夏目漱石が愛したという「空也」が、卵を材料にして寒いシーズンだけ作る黄身瓢という黄色の瓢箪形の和菓子が何よりの好物である(p70)


・故郷の愛知県に戻ると、必ず立ち寄るのが県立陶磁資料館である。あるとき五客組の吸坂(すいさか)の皿に見とれた(p80)


▼引用は、この本からです
「ときめき老後術: ひとり暮らしの骨董ざんまい」上坂 冬子
上坂 冬子、海竜社


【私の評価】★★★★☆(81点)


目次

赤い船箪笥につめた楽しみ
趣味を持つなら働き盛りに
欲しいと思ったら勝負する
チャンスを逃した悔しさをテコに
何にでも飛びつく若さ
鑑定あれこれ
男の執念が再興した窯
衝動買いの失敗
花の皿
帯に短し、襷に長し
買いたいもののあるうちが花
他人と同じことはしない
忘れられない法事の引き出もの
手まわしよくやったつもりなのに
遊び半分で成功した例はない
自分本位のすすめ
新興国 アメリカを見下す
遺品の行方を思い煩う
お茶にはちょっとうるさいので
いっしょにさざめく友もなし
六百円がもたらした信頼の絆
ホンモノでもニセモノでも構わない
ひとりで稼いでひとりで使う
最後の晩餐
インターネットで再開した男性
あとがき 書き出したら心ときめいて



著者経歴

上坂冬子(かみさか ふゆこ)・・・1930年、東京に生まれる。1959年、『職場の群像』で第1回中央公論社思想の科学新人賞を受賞したのを機に、ノンフィクション作家として執筆活動に専念する。1993年、第41回菊池寛賞と正論大賞を受賞


この記事が参考になったと思った方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓ 
 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ


ブログランキングにほんブログ村



<< 前の記事 | 次の記事 >>

この記事が気に入ったらいいね!

この記事が気に入ったらシェアをお願いします

この著者の本


コメントする


同じカテゴリーの書籍: