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「死ぬまで生きる日記」土門蘭

2024/02/28公開 更新
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「死ぬまで生きる日記」土門蘭


【私の評価】★★★★☆(84点)


要約と感想レビュー

ずっと「死にたい」と思っていた

著者はぼんやりとした不安から毎日、「死にたい」と思っていたという。どうして自分は楽しめないんだろう?どうして自分は寂しいんだろう?と、不安になってしまうのです。著者はカウンセリングを受け、自分のこころの不安に向き合うことを決断します。


カウンセラーが最初に著者にアドバイスするのは、「死にたい」と思ってもいいと、自分を許すことです。そんなことを考える自分はダメだ、と考えると二重に自分を否定してしまうことになるからです。そして、日々の生活の中で、幸せだったり、気持ちがいい瞬間を探すように宿題を出します。人はプラスよりマイナスのことに意識を取られがちで、小さな幸せを意識して記録するのです。


『条件なし』の幸せ・・お風呂に入って気持ちがいい時とか、お花を見て綺麗だなと思う時とか(p58)

帰るような場所なんてない

どうして著者はここまでマイナス思考なんだろう?と読み進めていくと、著者は日本人の父と韓国人の母の間に生まれたハーフであることがわかります。そして、両親は不仲から離婚。日本語を話せない母と二人で、母を支えながら日本で生きてきたのです。


著者はカウンセリングを通じて、自分の「死にたい」という気持ちは、「帰りたい」「帰るような場所なんてない」という気持ちであることに気づきます。韓国人から、韓国語を学ぼうとしない自分が良く思われていないこと。日本語のできない母親を守ろうと頑張ってきたこと。日本人の中で生きていても、寂しさ、切なさを感じること原因を実は著者自身もはっきり認識しているようで、そうでもないのです。


私には、帰るべき家庭の不在と、自分は韓国と日本の間で何なのだというアイデンティティの不在が著者のこころを不安定にしているように感じました。


「帰りたい」・・「死にたい」に替わる言葉・・・帰るような場所なんてない。その寂しさ、切なさを、私はずっと感じていた気がする(p164)

幸せがなくなるのが怖い

毎日「死にたい」と思っている人の思考に驚きました。著者の場合、「幸せ」になりそうになると、「幸せ」がなくなるのが怖いので、それなら「幸せ」などない方がいいと思ってしまうというのです。著者は桜を見ていると、すぐに散るから辛くなるし、欲しい物や服も「汚すと嫌だから」と買うのを諦めていたというのです。人の思考の不思議さを感じました。


ただ、カウンセリングを受けることで、美味しい食事の後に、いつもなら罪悪感を感じるのに、怖い気持ちも認めつつ、満足する気持ちも感じることができるようになってきたという。乗馬では、馬が人の操作に従うと楽になると繰り返し教え込むことで、人の操作に従うように調教されます。人も場合によっては、自分が幸せになってはいけないと調教される可能性があるのだ、と感じました。


私は「幸せ」になるのが怖い。もし一度でもそれを味わってしまったら、それが失われることに耐えられないと思ってしまうからだ(p74)

ぼんやりした不安

著者は自分の気持ちを、芥川龍之介が自殺した理由とする、「ぼんやりした不安」がまさにその通りだと言っています。世の中にはうつ病と診断され、ほとんど眠れない人や、常に死を考えている人がいます。うつ病はだれもがかかる病なのでしょう。


逆にいえば、うまくやれば、どのような逆境にも耐える思考の人も作れるのではないかとも考えました。つまり、体験や思考を通じて人格形成や思考パターンが形作られるのであり、操作可能だということです。


人の思考パターンについて考えさせられる一冊でした。土門さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・手のひらがビリビリしてくる。ストレスを感じると、手が痺れるのだ(p33)


・『幸せ』に対して恐怖を感じる・・『幸せ』を失うのが怖いから(p74)


・人の脳は、ポジティブなことよりネガティブなことの方が記憶に残りやすくなっています(p75)


・自立は、依存先を増やすこと、希望は、絶望を分かち合うこと(p235)


▼引用は、この本からです
「死ぬまで生きる日記」土門蘭
土門蘭、生きのびるブックス


【私の評価】★★★★☆(84点)


目次

第1章 私は火星からやってきたスパイなのかもしれない
第2章 「『死にたい』と感じてもいいのだと、自分を許してあげてください」
第3章 「自分で自分の『お母さん』になれたらいいですね」
第4章 「肯定も否定もせずに、ただ感情に寄り添ってみてください」
第5章 「『解決しよう』と思わなければ、問題は問題ではなくなるんです」
第6章 「私はずっと、日本人になりたかったんです」
第7章 「『過去』は変えられなくても、捉え直すことはできます」
第8章 「あなたは、必死に生きようとしています」
第9章 地球以外の場所で、ひとりぼっちでものを書く人たち
第10章 居心地の良いように「火星」を作り替えていけばいい
第11章 「生きている限り、人と人は必ず何かしらの形で別れます」
第12章 「書いて、読むことで、私たちは何度でも出会えます」
最終章 「お守り」を感じながら生きていく



著者経歴

土門蘭(どもん らん)・・・1985年広島県生まれ。小説・短歌などの文芸作品や、インタビュー記事の執筆を行う。著書に歌画集『100年後あなたもわたしもいない日に』(寺田マユミとの共著)、インタビュー集『経営者の孤独。』、小説『戦争と五人の女』、エッセイ『そもそも交換日記』(桜林直子との共著)がある。


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