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「クララとお日さま」カズオ・イシグロ

2024/01/09公開 更新
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「クララとお日さま」カズオ・イシグロ


【私の評価】★★★★☆(87点)


要約と感想レビュー

AFとは人工知能アンドロイド

クララはAFです。AFって何?と読み進めました。読んでいるうちに、AFとは人工知能を持った太陽から栄養(エネルギー)をもらって作動しているアンドロイドとわかりました。クララが売られていった家には、キャリアウーマンの母親と病弱な女の子ジョジーが家政婦さんと一緒に住んでいます。


隣の家には病弱な母親と男の子リックが住んでおり、ジョジーとリックは愛しあっているようなのですが、時々関係が悪くなるのです。その原因は、ジョジーがリックにブルッキングズ大学に行くように勧めていることでした。ブルッキングズ大学は少数の遺伝子操作が未処置の生徒を受け入れているからです。遺伝子操作で向上処置を受けた子供だけが教育を受けられるので、処置をうけたジョジーは未処置のリックと一緒に大学に行きたかったのです。


ブルッキングズっていう大学があって、少数だけ未処置の生徒を受け入れてくれるの(p212)

人工知能は排ガスを出す機械を破壊

人工知能を持っているクララは、自分で考えて行動することができます。クララは病弱なジョジーを健康にすることを使命だと理解していました。クララは、お店の窓から死んだように見えていたホームレスと犬が、太陽の光によって生き返ったように見えた経験と、自分にエネルギーを与えてくれる太陽に特別な力があると考えました。


太陽のエネルギーによってジョジーを健康にしてもらうために、クララは家から見て太陽が沈むところにある納屋に行って、ジョジーの健康を太陽にお願いします。太陽の通り道である納屋が、太陽の休憩所であるとクララは考えたのです。


また、クララは店の前にあった排ガスを出す機械を破壊します。排ガスは大気を濁らせ、太陽を困らせているからです。優秀な人工知能は、公害によって地球環境を破壊する人間を排除しようとするかもしれないと思いました。


わたしはジョジーを救い、健康にすることが使命だと思ってきました。でも、そちらのほうがいいのでしょうか(p305)

大切なものは、その人を愛する人々の中にある

ジョジーの体調が悪化する中で、大人たちはジョジーとそっくりのアンドロイドを作ろうとします。その努力はジョジーの体調がよくなることで無駄になるのですが、ジョジーとまったく同じアンドロイドを作ることはできませんでした。人工知能のクララは、なぜまったく同じアンドロイドができない理由について、ジョジーと同じものを作ろうとしたことが間違いであると指摘しています。本当に大切なものは、ジョジーの中だけにあるのではなく、ジョジーを愛する人々の中にあるのだから、ジョジーのアンドロイドを作るだけでは意味がないというのです。


人工知能クララが淡々と語るストーリーは、「日の名残り」で執事が淡々と語るのと同じ感覚に陥りました。そうした独自の世界観を描けるからこそノーベル文学賞を受賞したのでしょう。イシグロさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・あの子らは乱暴ですが、それも見かけほどではないかもしれません。独りぼっちが怖くて、だからあんなふうに振る舞うのかもしれません(p120)


・ぼくがこの部屋を好きな理由、わかる?ここは君のにおいがするんだ(p244)


・あの大きな親切を、ぜひジョジーにもお願いします。ジョジーには、いまあの特別の栄養が必要です(p388)


▼引用は、この本からです
「クララとお日さま」カズオ・イシグロ
カズオ・イシグロ 、早川書房


【私の評価】★★★★☆(87点)



著者経歴

カズオ・イシグロ(かずお いしぐろ)・・・1954年長崎生まれ。1960年、5歳のとき、海洋学者の父親の仕事の関係でイギリスに渡り、以降、日本とイギリスのふたつの文化を背景に育つ。その後英国籍を取得した。ケント大学で英文学を、イーストアングリア大学大学院で創作を学ぶ。1982年の長篇デビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年発表の『浮世の画家』でウィットブレッド賞を受賞した。1989年発表の第三長篇『日の名残り』では、イギリス文学の最高峰ブッカー賞に輝いている。2017年にはノーベル文学賞を受賞。2018年に日本の旭日重光章を受章し、2019年には英王室よりナイトの爵位を授与された


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