「現代アメリカ宗教地図」藤原 聖子
2024/01/06公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(76点)
要約と感想レビュー
アメリカの主流はWAPS
統一教会ってキリスト教系なんだよな、といった程度の知識しかないので、宗教の基本を学ぶつもりで手にした一冊です。
アメリカの主流は、ホワイト・アングロ・サクソン・プロテスタント(イギリス系白人でプロテスタント信者)です。プロテスタントの中でも保守派(バプティスト、ペンテコステ派など)は約25%で、アメリカ人の4分の1を占め、リベラル派(プレスピテリアン、アングリカン=エピスコパル、コングレゲーショナリストなど)は約5%だという。
プロテスタント保守派は、「右派」「右翼」「原子主義(根本主義・ファンダメンタリズム)」「福音派(エヴァンジリカル)」と呼ばれています。保守派プロテスタントは、社会がキリスト教の教義から距離を置くようになる前の状態である、家族の絆が固く、モラルが守られた時代を理想としています。中絶や同性愛には反対です。保守派は慈悲深いイエスを愛し、保守派プロテスタント以外の人たちは、最終的には救われないので、まずは自分の宗派に改宗させようとするという。
アメリカの諸宗教・・2007年の国勢調査・・プロテスタント51.3%、カトリック23.9%、モルモン1.7%、エホバの証人0.7%、正教0.6%、ユダヤ1.7%、仏教0.7%、イスラム0.6%(p39)
無神論では、神は心の弱い人の現実逃避
アメリカは「世界の警察」として、世界に影響力を行使してきましたが、その元には旧約聖書に由来する「神に選ばれし民」という考え方があるという。旧約聖書にある「神に選ばれし民」はもともとユダヤ人が使っていましたが、ピューリタンが、世界の人の模範となるように神に選ばれた特別なクリスチャンであるという意識を形成し、その広げる教義がキリスト教から民主主義に代わっていったというのです。
また、保守的なキリスト教は反共であり、共産主義=無神論という理解がアメリカ社会にあるという。ここでいう「無神論」(atheism)とは、「神は存在しない。神は非科学的であり、心の弱い人間の現実逃避の手段にすぎない」と宗教を否定する立場だからです。このようにアメリカの政策にキリスト教の考え方が、大きく影響を与えているのです。
アメリカ人のキリスト教徒は、平均してイギリス人の倍の頻度で教会に通う(p14)
終末(ハルマゲドン)は永遠の救いのスタート
イスラエルとの関係でいえば、クリスチャン・シオニズムという、イスラエル・パレスチナ紛争は予言されたハルマゲドンの始まりであるという考えがあるという。つまり、イスラエルが中東で勝利すれば世界の終末が近づき、キリスト教徒である自分たちが救われる日が近づくのだと考えている宗派があるというのです。
キリスト教徒にとっては、終末は恐ろしい破滅のときではなく、敬虔はキリスト教徒はその間避難したり、戦って勝ち残り、永遠の救いがスタートすると信じているのです。終末(ハルマゲドン)を求めるということが信じられませんが、それが宗教のすごいところなのかもしれません。藤原さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・困っている人たちに広く手を差しのべることは望ましいというのが合同メソジストを含むリベラル派の考え方である。これを「社会正義」という(p57)
・アメリカの学校では、朝、授業の前に、起立して胸に手を置き、星条旗に向かって忠誠の誓いをする(すべての学校で行うわけではない)(p72)
・筋肉的キリスト教という超教派的なプロテスタントの運動・・バレーボールやバスケットボールが、YMCA(キリスト教青年会)の体育館のなかで発案されていった(p112)
【私の評価】★★★☆☆(76点)
目次
1 アメリカ人は宗教的か
2 アメリカの諸宗教の位置関係
3 キリスト教諸派―政教関係の歴史的逆転
4 市民宗教と結社―本当に政教分離国家か
5 「見えない宗教」―政教分離の産物
6 新宗教―政教分離との両面的関係
7 宗教保守―アンチ政教分離
8 マイノリティの宗教―政教分離の虚偽を突く
著者経歴
藤原聖子(ふじわら さとこ)・・・1963年東京都生まれ。東京大学文学部卒業、シカゴ大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。大正大学教授。専門は比較宗教学
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