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「眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎」ダニエル T.マックス

2023/09/01公開 更新
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「眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎」ダニエル T.マックス


【私の評価】★★★☆☆(78点)


要約と感想レビュー

狂牛病の原因は、プリオン(タンパク質)

BSE(狂牛病)で日本がアメリカの牛肉輸入を禁止したのは、2003年12月です。実は1980年代半ばに、狂牛病に罹った牛肉を食べることで狂牛病がヒトにも感染することを科学者が発見していました。狂牛病の原因が特定されてから、ヒトへの感染を防ぐ有効策がとられるまでに、およそ8年かかっているのです。


BSE病原体(プリオン)を牛が食べると、消化管を通って、末梢神経、中枢神経を通って、最後に脳に到達し、狂牛病を発症します。プリオンはウイルスやバクテリアのように振る舞うタンパク質なのです。少なくとも80万頭が狂牛病に罹っていますが、これだけ拡散した原因は、牧場で死んだ家畜の肉がタンパク濃厚飼料の原材料として使われていました。感染性病原体に牛が感染し、その牛が解体処理され飼料となり、飼料を食べた他の牛が感染するというサイクルが、何回も繰り返されていたのです。


・1990年代なかばに研究者たちが牛におけるプリオン病・・いわゆる狂牛病が種の壁を飛び越えてヒトにも感染することを発見(p31)


プリオン病の原因は感染するタンパク質

プリオン病には、致死性家族性不眠症(FFI)のように遺伝が原因のものと、CJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)のように原因がわからないものと、狂牛病のように人間が介在しているものがあります。タイトルの「眠れない一族」とは、致死性家族性不眠症(FFI)と呼ばれる遺伝性のプリオン病を持っている一族でFFIの父親か母親を持つ人は五割の確率でFFIを発症し、眠れなくなり疲弊し、最終的に死に至ります。


CJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)は発病すると抑うつ、不安などの精神症状が出て、1,2年で全身衰弱・呼吸不全・肺炎などで死に至ります。 イギリスではCJDの発症者の脳下垂体から抽出した成長ホルモンを子どもに投与したことによって、CJDの発症者が出ています。CJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)は感染するのです。


・CJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)、多発性硬化症、ALS、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンティントン病など、多数の神経変性疾患のうち、伝達できたのはCJDだけだった。それ以外は「うつらなかった」(p254)


CJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)もプリオン病

著者が警告するのは、アメリカでアルツハイマー病で亡くなった人46人の患者の脳組織を分析した結果、そのうち6人が、実際はCJDで亡くなっていたというデータがあることです。アルツハイマー病に罹っているアメリカ人は数百万人いるので、毎年数千人がCJDで亡くなっている可能性があるのです。


プリオン病については、治療法も確率されておらず、感染を防ぐしか予防方法はありません。タンパク質を食べるだけで発症するというプリオン病の存在は、病気で死んだ動物を食べてはいけないということなのです。長い一冊でした。マックスさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・狂牛病・・少なくとも80万頭の牛と160人の人間が感染している(p215)


・プリオンだけが感染性を持つタンパク質ではない・・アミロイドAアミロイド症は、関節リウマチのような慢性の炎症を抱えた人を襲う日和見性の疾患だが、このタンパク質も同じ性質を持つ(p259)


・アメリカでは今でも鶏糞を飼料として牛に与えるのが合法で、そのうえニワトリには牛の、一部はへたり牛のタンパク質を飼料として与えているし、プリオンは糞といっしょに排出されても生き残るので、牛は鶏糞を通して、汚染された自らのプリオンを摂取しているかもしれない(p290)


▼引用は、この本からです
「眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎」ダニエル T.マックス
ダニエル T.マックス、紀伊國屋書店


【私の評価】★★★☆☆(78点)


目次

本書に寄せられた書評/序章
第一部 闇の中の孤独
 第1章 医師たちの苦悩 1765年、ヴェネツィア
 第2章 メリノ熱 1772年、ヴェネツィア
 第3章 ピエトロ 1943年、ヴェネト州
第二部 闇を跳ね返す
 第4章 強力な呪縛 1947年、パプアニューギニア
 第5章 ドクタ・アメリカ 1957年、パプアニューギニア 
 第6章 動物実験 1965年、メリーランド州ベセスダ
 第7章 「ボウ(お手上げだ)!」 1973年、ヴェネト州
 第8章 化学者にうってつけの問題 1970年代後半~80年代前半、サンフランシスコ
 第9章 収束 1983年、ヴェネト州
第三部 自然の反撃
 第10章 地獄の黙牛録 1986年、イギリス
 第11章 おししい食品製品「オインキー」 1996年、イギリス
 第12章 プリオンで説明できる世界 70年代から今日まで、アメリカとイギリス
 第13章 ヒトはヒトを食べていたか 紀元前80万年、全世界
 第14章 ついにアメリカにも? 現在、アメリカ
第四部 目覚めのときは来るのか?
 第15章 致死性家族性不眠症の犠牲者たちのために 現在、ヴェネト州
あとがき 筆者に関してひと言/訳者あとがき/原註



著者経歴

ダニエル T.マックス(Daniel T. Max)・・・ニューヨーク生まれ。1984年ハーヴァード大学卒業。ワシントン・スクエア・プレス社、ホートン・ミフリン社、「ニューヨーク・オブザーバー」誌の編集者を経て、現在、作家・ジャーナリストとして活躍


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