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「仕事と人生に効く教養としての映画」伊藤 弘了

2023/06/27公開 更新
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「仕事と人生に効く教養としての映画」伊藤 弘了


【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー

黒澤明、溝口健二くらいは見ておきましょう

家族に誘われて映画館で「名探偵コナン」や「鬼滅の刃」を時々鑑賞するくらいの本のソムリエですが、映画について知らなくては!と手にした一冊です。日本映画は海外の映画愛好家から高い評価を受けてますので、外国人と話すときのネタとして最低限の知識を持っておきましょう。


この本では、1950年代以降に活躍した日本の映画監督として黒澤明、小津安二郎、溝口健二、成瀬巳喜男を紹介しています。特に溝口健二はヨーロッパの映画愛好家に好かれ、黒澤明はハリウッドで高い評価を受けているという。彼らの古典的名作を見ておくだけで、話のネタには困らないということです。映画といえば話のストーリーや演技に目がいくのですが、数十秒をワンテイクで撮る長回しなど、カメラワークにも監督の工夫があることがわかります。


・古典的名作・・・ハズレを引く可能性が低い・・じっくり鑑賞するだけの価値がある(p131)


映画の歴史は120年程度

映画という形で商業化されたのは、1895年パリのグラン・カフェで、リュミエール兄弟が「シネマトグラフ」による有料の上映会を開催したことが最初です。映画の歴史は120年程度なのです。初期の欧米の映画は、遊園地や地方巡業の見世物の一つとして上映されていたという。そしてアメリカでは、1920年頃からカリフォルニア州ロサンゼル市のハリウッドが映画産業の中心地となっていったのです。


当時設立されたユダヤ系のパラマウント、20世紀フォックス、ワーナー・ブラザーズ、RKO、メトロ・ゴールドウィン・メイヤーなどが1950年くらいまでにメジャーとなっていくのです。この本のつかみは、なぜ「トイ・ストーリー」の主人公がカウボーイとスペースレンジャーなのかという問いになっています。アメリカの映画を見れば、アメリカの西部フロンティア精神を愛する気持ちがわかるということなのです。


・カウボーイとスペースレンジャー・・アメリカにとって西部のフロンティア開拓は「明白なる天命」でした(p12)


映画や小説は文化

小説と同じで映画を見ることで、それぞれの国の国民性や文化を理解する一助となるのだと思いました。もちろん映画は娯楽であり、ただ鑑賞するだけでも価値がありますが、監督の工夫や意図がわかれば、さらに楽しみも深まるとのです。小説を読むと3,4時間はかかりますので、映画なら2時間ちょっとで楽しめるとすれば、小説と映画を見て、比較して楽しむというのも有りかな、と思いました。


映画の入門編と理解しました。伊藤さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・映画が誕生したのは1895年・・ラスコー洞窟壁画は約2万年前・・もっとも古い物語の一つである「ギルガメシュ叙事詩」の成立が4000年前(p80)


・途中で離席されることをそれほど恐れなくてもいいというのが、映画製作上の強み(p44)


・ピクサー・・前身はルーカスフィルムのCG部門でした・・ジョブズが買収・・買収額は1000万ドルでした(p115)


・独ソ戦を題材にしたベラルーシ映画を見ることで、先の大戦に対するベラルーシ人に意識の高さを感覚的に捉えることができました(p65)


▼引用は、この本からです
「仕事と人生に効く教養としての映画」伊藤 弘了
伊藤 弘了、PHP研究所


【私の評価】★★★☆☆(79点)


目次

プロローグ 「トイ・ストーリー」は難しい?
第1講 映画を見たらどんないいことがあるか―人生が劇的に変わる5大効用
第2講 映画史を知ればビジネスの基本がわかる―イノベーションと産業の歴史
第3講 日本の古典映画はなぜ世界で評価されるのか―黒澤・溝口のすごい仕事術
第4講 絵画のように映画を見る―人間の真実を描いた小津の『東京物語』
第5講 映画で考える「家族のあり方」―是枝裕和『海街diary』の視線劇
第6講 映画のトリックに騙されてみる―ヒッチコックから学ぶ「バイアス」にとらわれない方法
第7講 映画の「嘘」を知る―人の心を動かす映像戦略
最終講 あなたの感想が世界を変える―情報を整理し、表現する力



著者経歴

伊藤弘了(いとう ひろのり)・・・映画研究者、批評家。1988年生まれ。愛知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学。現在は関西大学、同志社大学、甲南大学で非常勤講師を務める。また、東映太秦映画村・映画図書室にて資料整理の仕事を行なっている。


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