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「チャップリン自伝:栄光と波瀾の日々」チャールズ・チャップリン

2023/06/26公開 更新
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「チャップリン自伝:栄光と波瀾の日々」チャールズ・チャップリン


【私の評価】★★★★☆(82点)


要約と感想レビュー

人気スターとなったチャップリン

1920年代、チャップリンはロサンゼルスのハリウッドで映画を作り、人気スターとなり大金持ちとなります。契約に基づき映画をひたすら作りながら、結婚もしています。当時のチャップリンの悩みといえば、恋愛問題と映画の評価によって上がり下がりする芸能人としての人気だったようです。チャップリンは、「映画は仕事じゃありません、子供の遊びみたいなものです」と言っているように、傑作映画を作り続けるチャップリンは金の卵を生む映画人だったのです。


興味深いのは、「良いアイデアを生むヒントは、考え続けることである」と証言していることです。アイデアをたくさん出して、そのアイデアを絞り込んでいくことで、良いアイデアになるというのです。ひたすら考えるというのは、アイデアのヒントになるようなならないようような助言ですが、チャップリンにとっては映画は遊びのようなものですから、考え続けることができたのでしょう。


アイデアはそれを一心不乱に求め続ければ訪れるということだ・・・たくさん溜めたあとに除いてゆくという方法こそ、自分が求めているものを探す手段になるだろう(p71)

チャップリンは反独裁、反拝金主義

大金持ちになったチャップリンは、戦争の時代に生きた人でした。チャップリンが喜劇を作っているときに、現実社会では二度の大戦を経験することになるのです。「人類は世界規模の大量殺人を止めることはできなかった」とこの本では書いています。


特にヒトラーについては、多くの人がナチスにも良い点があると言っている時代から、チャップリンはナチスの危険性に気づいていました。ヒトラーの「アーリア人至上主義」という現実を無視して作り出されたスローガンに不信感を持っていたのです。プーチンの「ウクライナはネオナチ」、習近平の「中華民族の偉大なる復興」にも同じような感覚を覚えるのは私だけでしょうか。


チャップリンは、ヒトラーをモノマネした「独裁者」という映画を作りました。撮影中にヒトラーはロシア侵攻を開始します。ナチスはすでにアメリカのさまざまな機関やマスコミに侵入しており、「独裁者」の上映への嫌がらせや、「チャップリンは共産主義者」と報道するマスコミもあったのです。チャップリンは、「独裁者」の結びの演説で次のように言っています。「兵士のみなさん!隷属のために戦ってはなりません!自由のために戦ってください!」チャップリンは独裁や共産主義のために戦うのではなく、自由のために戦うことをいとわないのです。


わたしが愛国者でないのは事実である・・愛国心という名のもとに600万人ものユダヤ人が殺されたのに、どうしてそんなものが許せようか?(p389)

チャップリンは自由と平和を愛するリベラル

不思議なのは、当時アメリカではチャップリンが愛国者ではなく、共産主義者であると批判されたことです。結局チャップリンはアメリカからスイスに移住してしまうのです。チャップリンは、「独裁者」で愛国の名の下に敵国に侵略するプーチンのような独裁者を批判し、「モダンタイムス」で人間性を認めない機械的な仕事を批判しただけだったのですが、当時のアメリカでは共産主義的と考えられたのです。


今、考えればチャップリンは独裁者や金さえ儲かればいいという拝金主義を嫌っただけであり、自由と平和を守りたかっただけなのです。チャップリンこそ、真のリベラルであったと言えるのでしょう。チャップリンさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・わたしが人生の無意味さについて長々と論じると、ダグラスのほうは、人生とは予め定められたものだから運命は重要だと主張する(p49)


・一晩のセックスは小説の丸1ページ分を無駄にすると信じていたバルザック同様、私も一夜のセックスはスタジオの丸一日の仕事を無駄にすると考えていた(p62)


・偉大な俳優の必須事項は、演技をしている自分を愛せることだ(p175)


・「殺人狂時代」・・全米在郷軍人会をはじめとする圧力団体からの脅迫状を受け取ったところでは、上映のキャンセルを余儀なくされた(p605)


▼引用は、この本からです
「チャップリン自伝:栄光と波瀾の日々」チャールズ・チャップリン


【私の評価】★★★★☆(82点)



著者経歴

チャールズ・チャップリン (Charles Chaplin)・・・1889‐1977。ロンドン生れ。両親とも芸人。母のヴォードヴィルのカーノー一座と共に渡米。1913年キーストン喜劇映画会社に入り、浮浪者スタイルや、笑いと涙、風刺と哀愁に満ちた作品で卓越した評価を受ける。'52年赤狩りで米国を追われ晩年はスイスに居住。'75年3月には英国王室から大英帝国勲章第二位(ナイト・コマンダー)を授与される


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