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「優れたリーダーはみな小心者である。」荒川 詔四

2023/02/13公開 更新
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「優れたリーダーはみな小心者である。」荒川 詔四


【私の評価】★★★★☆(86点)


要約と感想レビュー


メンバーの主体性を尊重する

著者は世界最大のタイヤメーカーであるブリジストンの元CEOです。著者の仕事のスタイルは、メンバーの主体性を尊重することです。そのために、メンバーの気持ちを繊細に感じ取りながら、丁寧にコミュニケーションを重ねるという。特にブリジストンのような巨大企業では数年で職場が変わります。新しい職場で成果を出していくためには、自ら知恵を絞り、率先して行動するだけでなく、周囲の人が「協力してやろう」と共感してくれるようでなくてはならないのです。


周囲の人に協力してもらうためには、職権を利用して命令する方法もあります。ただ、厳しい言葉を使うと、反発される可能性が高まります。著者も最初の赴任地であるタイで、在庫管理のできていない現地人に厳しい言葉で指導していたら、総スカンをくらったという。


これはまずいと、現場に入って、笑顔で一緒に課題を解決していったら、協力してもらえるようになったというのです。著者は20代で、部下の自主性を引き出すことの重要性に気づいたのでした。


ミスをした部下を怒鳴りつけて「だからお前はダメなんだ」などと人格否定に走る上司を見るたびに、気分が悪くなる(p95)

良い関係を作り上げる

面白かったのは、著者がタイで営業をしていたときのエピソードです。ある時、他国からの注文が突然のキャンセルで大量の在庫を抱えることになったという。著者は得意先にお願いして回ったところ、いつも値切ってくる付き合いづらい社長が大量の在庫を引き受けてくれたというのです。数年後、その取引先を訪れたときに、なんとまだその時の在庫が倉庫に眠っていたというから驚きです。


単純に表現すれば無理な「押し込み営業」だったのですが、その取引先の社長は「このタイヤはお前から買った大切なタイヤだから売るわけにはいかない」と冗談を言っていたというのです。いかに著者が丁寧に接していたことで、良い関係を作り上げていたということでしょう。失敗したときに、ある人は足を引っ張られ、ある人は助けられる。人の運命は、周囲の人との関係によって変わるのです。


私がこれまで接してきた一流のリーダーはみな、「繊細さ」を持ち合わせていました(p2)

課題を見つけて解決する

著者は山形出身で繊細でありながら、常に仕事の課題を見つけ出して、解決しようとしてきたという前向きな姿勢に感動を覚えました。一般的に繊細な人は、周囲との人間関係は良いのですが、仕事の成果がいまいちであることが多い。反対に仕事ができても繊細でなければ、ちょっとしたことで足を引っ張られて上には行けないのです。


「繊細さ」と上司にでも直言できる前向きさの両方をバランスよくもっている著者だからブリジストンで出世できたのでしょう。繊細だから不安で現場に足を運ぶ。繊細だから部下の提案が、妥協の産物ではないかと不安になる。繊細だから仕事の質が高まるのです。


「誰でも、社長になったとたんに裸の王様になる」などと、本質を語る姿勢に感銘を受けました。私の35年の組織での生活経験からも納得できる内容です。荒川さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・トラブル対応で最悪なのは、相手のことを考えず、一方的にこちらの主張を押し通そうとすることです(p42)


・部下が精神的に折れないように十分に配慮しなければなりません。しかし、部下がちょっと困ったら・・「助け船」を出すのは弊害も大きい・・「過保護」の上司は、部下を殺してしまいかねないのです(p59)


・部下を評価するときには、「成功したかどうか」よりも「やり切ったかどうか」(p71)


・定年間際の人々も貴重なアドバイザーになります・・後先考えることなく、ズバズバと本質を語ってくれます(p204)


▼引用は、この本からです
「優れたリーダーはみな小心者である。」荒川 詔四
荒川 詔四、ダイヤモンド社


【私の評価】★★★★☆(86点)


目次


第1章 「小心な楽観主義者」が最強である
第2章 「臆病者」しか生き残れない
第3章 「心配性」だから強くなる
第4章 「組織の力学」に敏感であれ
第5章 すべては「理想」から始まる


著者経歴


荒川詔四(あらかわ しょうし)・・・株式会社ブリヂストン元CEO。1944年山形県生まれ。東京外国語大学外国語学部インドシナ語学科卒業後、ブリヂストンタイヤ入社。タイ、中近東、中国、ヨーロッパなどでキャリアを積むほか、アメリカの国民的企業ファイアストン買収時には、社長秘書として実務を取り仕切る。タイ現地法人CEOとしては、国内トップシェアを確立するとともに、ヨーロッパ現地法人CEOとしては、欧州事業の立て直しを成功させる。その後、本社副社長などを経て、2006年に本社CEOに就任。2008年のリーマンショックなどの危機では世界中の工場の統廃合・新設を進め、基礎研究に多大な投資をする。ROA6%という当初目標を達成する。2012年3月に会長就任。2013年3月に相談役に退いた。キリンホールディングス株式会社社外取締役などを歴任。


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