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「100年前から見た21世紀の日本: 大正人からのメッセージ」大倉 幸宏

2023/02/04公開 更新
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「100年前から見た21世紀の日本: 大正人からのメッセージ」大倉 幸宏


【私の評価】★★★☆☆(70点)


要約と感想レビュー

 平成時代は大正時代と酷似しているといわれています。第一次世界大戦が1914(大正3)年にはじまると日本は好景気にわきました。成金が生まれ、ハイカラ、大正ロマンと呼ばれる1980年後半のバブル時代のような浮かれた時代だったのです。ところが1918(大正8)年に大戦が終わると、日本は反動不況に入ります。1923(大正12)年には関東大震災が発生。1990年以降の失われた20年と同じように経済が長期停滞したのです。東日本大震災が2011年ですので、ちょうど70~90年ずれてリンクしているように見えます。


 この本では、大正という時代が、現在社会とどう似ていて、どう違うのか振り返ります。当時は丁稚奉公の形で働く年少者もまだ多く、店員を17、18時間も働かせている状況でした。1911年にやっと工場法が制定された程度で、現代の週40時間労働と比べれば2倍は働いていたということになります。


・小学教員にはその学校勤務中余裕というものがまったくない。朝から帰るまで勤務に追われて少しも休息時間というものがない(西川三五郎「立憲的教育施設の実態」)(p39)


 1920年(大正9)年の衆議院議員選挙の投票率は86.7%と非常に高いのですが、選挙権が付与されていたのは、国税を3円以上納めている満25歳以上の男性だけでした。1925(大正14)年に納税条件が撤廃され、満25歳以上の男性が選挙権を持つようになりましたが、女性が選挙権を得るにはさらに20年以上の時間がかかっています。当時は圧倒的に男性社会であり、政治への意識が強かったことがわかります。現代では男女平等ですが、日本の選挙の投票率は50%くらいですので、政治への意識は低いということになるのでしょう。


 面白かったのは、朝日新聞が現代と同じように捏造記事が多く、社会主義者で売国新聞と批判されていたことでしょう。1922(大正11)年に記事審査部を作り、1928(昭和3)年に校閲部が創設されたということで、当時から記事の内容チェックが杜撰だったことをカバーしようとしたのです。朝日新聞の報道姿勢は、今に始まったことではなかったのです。


・朝日新聞を目して、ある者は『名誉の毀損者』・・ある者は『社会主義者』・・またある者は、『憲政会の御用新聞』・・・『売国新聞』・・・として同新聞を、憎悪し、嫌忌(立憲青年自由党「国賊大阪朝日新聞」)(p158)


 「明治時代の学生と比べると、大正の学生は覇気がない」との記載を読むと、現代の「草食系」につながるものがあると感じました。また、大正期にもセクハラ問題や、詐欺・悪徳商法といったものがあり、現代は少しはましになっていますが、解決すべき課題なのでしょう。


 全体として、数字やデータが少なく書籍の引用と定性的なコメントが多い点が気になりました。大正と平成の類似点というところでは興味はつきませんので、もう少し調べてみます。大倉さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・白刃の閃きも見ぬ座上の大和魂は、戦場に於いては役に立たない。演壇の前の忠義心は、弾丸の下には通用しない(本多数馬「現代の日本と婦人の任務」)(p4)


・新聞広告に記された僅かな情報を頼りに商品を購入しようとして騙される事件は尽きなかった・・機械式時計の広告のように思わせておいて、実は日時計(p180)


・日本人の特徴として、一般に「真面目」「親切」「誠実」・・自分の身内や知人に対しては親切だが、赤の他人に対しては冷たい(p59)


・石井(満)は、カップルを冷やかしたり、雑踏でわざと女性に寄りかかったりする男性を例に挙げ、公然と下品な言動をする男性の姿が日常的な光景となっている日本の現状を嘆いている(p133)


▼引用は、この本からです
「100年前から見た21世紀の日本: 大正人からのメッセージ」大倉 幸宏
大倉 幸宏 、新評論


【私の評価】★★★☆☆(70点)


目次

プロローグ 100年前の日本人は
第1章 働く人たちへ
第2章 指導者たちへ
第3章 すべての日本人へ
第4章 若者たちへ
エピローグ 100年後の日本は


著者経歴

 大倉幸宏(おおくら ゆきひろ)・・・1972年、愛知県生まれ。新聞社、広告制作会社勤務等を経て、現在はフリーランスのライター


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