「本当は怖い世界史: いつの世も人間は変わらない」堀江 宏樹
2023/02/02公開 更新本のソムリエ [PR]
Tweet
【私の評価】★★★☆☆(76点)
要約と感想レビュー
人間の欲望や無知、狂気は、今も昔も変わらないということを教えてくれる一冊です。「欲望」といえば、人間が子孫を作り繁栄してきたのは強力な性欲のためでしょう。そして、人は権力を持つと性欲を抑えることができなくなるようです。
例えば、愛妻の早すぎる死を悼んでタージマハルを作らせたムガル帝国の皇帝シャー・ジャハーンは、年に1度、女性を品定めするため、8日間にわたる市場を開いていたという。ルイ15世の筆頭愛人(すごい表現)であったポンパドゥール夫人は、セックスが嫌いだったので、自分で少女を集めたルイ15世のための娼館「鹿の園」を運営していました。総計300人以上の少女たちが、ルイ15世に奉仕し、60人もの私生児が生まれたというのです。
・「王冠を被った娼婦」・・エカテリーナの最愛のパートナーとされているのが、グレゴリー・ポチョムキンという優秀な軍人でした(p84)
「無知」といえば、今考えると、なんでそんなことをやっていたのか?ということも興味深いものです。例えば、放射性物質といえば、現在ではごくわずかでも風評被害がでるくらいですが、1929年の時点で成分が放射性である健康のための医薬品が、80品目もあったというのです。1934年にキュリー夫人が、ラジウムの放射線による白血病で死亡しているように放射能の危険性はわかっていなかったのです。
15世紀から18世紀にかけてカトリック教会に支配されていたヨーロッパでは、魔女狩りが行われていました。ドイツでは、2000人あたり約3人が魔女として処刑されたという統計があるという。ヨーロッパは日本より進んでいるというイメージがありますが、このような無知による失敗を経験しながら科学技術を発達させてきたということなのでしょう。
・ナイチンゲール・・生まれたのは、1820年・・当時、病院に行かねばならないのは下層階級だけでした・・看護婦とは、売春婦が兼業するような卑しい職業と認識されていた(p24)
「狂気」といえば、1943年頃、ドイツのナチスが「すべての女性は35歳までにドイツ男性との間に子どもを4人もうける」という政策を検討していたこと。また、中国では去勢された宦官(かんがん)が官僚として宮仕えしていましたが、これは征服した民族の男たちを辱めるために去勢し、支配者の召使いにさせるという思想があったというのです。
一見「狂気」に見えますが、現代社会で中国がウイグル自治区で行っているウイグル女性と中国男性を強制的に結婚させようとしたり、ウイグル女性が妊娠できないようにしていることと同じ思想のように感じました。過去も現在も人間の狂気は、何も変わっていないのかもしれません。
もう少し歴史を体系的に学びたいと思いました。堀江さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・1547年、イヴァンは史上初めて「ツァーリ(ロシア皇帝)」・・イヴァンを批判した場合、その人物が所属する町全体が「消滅させられた」こともありました(p221)
・15世紀のイギリス国王リチャード3世・・・DNAは、彼の父方の血・・つまり歴代の英国王の血筋を引き継いでいなかった(p150)
・ガンジーは、1人で眠るのが寒くてつらいとの理由で、甥の妻のアバーという女性も裸にさせ、自分に添い寝させていました(p21)
【私の評価】★★★☆☆(76点)
目次
1章 誰もが知る人物の「恐ろしい真実」―隠そうとしても、隠しきれなかった"裏の顔"
2章 いつの時代も、「愛憎」が世を動かす―"男と女"がいる限り、生まれ続けるドラマ
3章 「権力」をめぐる闇は深い―あらゆる野心と欲望が、そこで交錯する
4章 無知にして残酷...「民衆」のもつ力―人は集団になるほど、過激になっていく
5章 「女」ほど、怖い生き物はない―その愛、その情熱、その凄まじい執念
6章 人の「心に棲む悪魔」が現われる―"理性"と"狂気"がせめぎ合う瞬間
著者経歴
堀江宏樹(ほりえ ひろき)・・・1977年生まれ、大阪府出身。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒。日本、世界、古代、近代を問わず、歴史の持つ面白さを現代的な視点、軽妙な筆致で取り上げている。綿密な検証と考察、臨場感溢れる描写には定評がある
この記事が参考になったと思った方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信) 3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。 |
この記事が気に入ったらいいね!
コメントする