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「四国辺土 幻の草遍路と路地巡礼」上原 善広

2023/01/20公開 更新
本のソムリエ
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「四国辺土 幻の草遍路と路地巡礼」上原 善広


【私の評価】★★★★☆(88点)


要約と感想レビュー

 本のソムリエが四国遍路に興味を持ったのは、民主党の菅直人が首相退任後に、四国遍路に出たというニュースを見たからです。この本では同和出身の著者が、四国遍路を歩きながら、そこで出会った人との会話を通じて四国遍路の本質を伝えてくれます。


 四国遍路とは空海(弘法大師)が修行したといわれる四国霊場八十八箇所の寺々を巡礼することです。徒歩で二、三ヶ月かかり、車やバスを使えば、10日ほどで回れるという。


 著者が四国遍路に興味を持ったのは、四国遍路をなりわいとしていた老人が、実は殺人未遂事件の指名手配犯だとわかって逮捕されたという事件です。著者は同和地区が四国遍路道沿いにあることもあわせて取材することにして、四国遍路に出発したのです。


・同和地区ちゅうのは旧遍路道沿いにある。じゃのに同和と遍路が関係ないのは、そりゃあ昔は同和が番太(警備)やっとたからやろうな(p49)


 歩いて四国遍路する人は、年間2000人くらいとのことなので、常に数百人が歩いているということでしょう。その中でも、「生涯遍路」「プロ遍路」などと呼ばれる四国遍路で生活している人がいるという。


 もともと江戸時代の四国遍路というのは、故郷を追われた困窮者が最後にたどりつく最後の砦のようなものでした。現代でも不倫のカップルが歩いていたり、ヤクザをやめたチンピラが四国遍路をしていることもあるという。指名手配犯が四国遍路をしていたという話も、あながちありえない話ではないのです。


 実際、著者が取材した四国遍路をしている人たちは、一癖も二癖もある人であり、過去に人に話せないようなことを経験している人が多い印象でした。「なぜ遍路に来たのか」と聞くのは良くないとされていることがわかるような気がしました。


・遍路同士で、なぜ遍路に来たのかを訊くことは良くないとされている(p35)


 実際に四国遍路をしてみないと、四国遍路の本質はわからないのだろうと感じました。そして、「何かあるから遍路をする。何もない人は遍路になんか出ない」と言われるように、菅直人にも表に出せない何かがあったのでしょうか。


 現代の四国遍路では、善意(無料)の宿泊施設「善根宿」や遍路小屋があり、交通機関を使えば八十八箇所の寺を回ることはそれほど難しくないようです。何か心にある方は、四国遍路をしてみてはどうでしょうか。上原さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・四国遍路では時おり「遍路すると不幸になる」と説教されることがある(p12)


・善根宿というのは、もともと江戸時代まではハンセン病者や密偵、泥棒を泊めるための宿だ(p32)


・草遍路が善根宿に泊まらないのは気を遣うからだと聞いていたが、確かに・・一泊3000円はくだらない宿に無料で泊まるのは気が引ける(p167)


・道後温泉の馬場・・・一茶には路地の人々を描いた俳句が270ほどあることから、放浪の旅のなかで一茶は、自ら馬場にはいって泊まったようだ(p228)


▼引用は、この本からです
「四国辺土 幻の草遍路と路地巡礼」上原 善広
上原 善広、KADOKAWA


【私の評価】★★★★☆(88点)


目次

第一章 辺土紀行 徳島―高知
第二章 幸月事件
第三章 辺土紀行 高知―愛媛
第四章 托鉢修行
第五章 辺土紀行 松山―香川
第六章 草遍路たち



著者経歴

 上原 善広(うえはら よしひろ)・・・1973年大阪府生まれ。ノンフィクション作家。大阪体育大学卒業後、ノンフィクションの取材・執筆を始める。日本各地の被差別部落を訪ねた『日本の路地を旅する』で、2010年第41回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。


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