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「戦争の未来-人類はいつも「次の戦争」を予測する」ローレンス・フリードマン

2022/08/22公開 更新
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「戦争の未来-人類はいつも「次の戦争」を予測する」ローレンス・フリードマン


【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー

 未来の戦争について予測した論文やミリタリー小説を分析した書籍です。私たちは未来の戦争を予測することができるのでしょうか。この本は2017年に出版されていますので、ロシアのウクライナ侵攻についてどのように書いてあるのか興味があって読んでみました。


 結論からいえば、2014年からロシアとウクライナの戦争ははじまっており、そして、ロシアはチェチェンとシリアで機甲部隊を投入して町を完全に破壊し、市民を無差別に虐殺してきたということです。つまり、ロシアのウクライナ侵攻は二度あることは三度あるとすれば、想定の範囲内であったのです。


・ロシアの成功・・・二度目の介入ではグロズヌイを大砲を航空兵力によって破壊しつくしており、これに対して反乱勢力は何も対応できなかった(p322)


 歴史を見ると、リベラル・理想主義者は、自由社会経済が広まり、世界が一つの市場となれば、経済相互依存状態となり、戦争によるデメリットが大きすぎて戦争はなくなると信じていました。その一方で、国家はそれぞれ「正しさ」を持っており、その「正しさ」が他の国と違う場合、必然的に戦争となる可能性が高いというリアリズムを信じる人たちは、戦力のバランスを保つことを目指してきたのです。


 その究極的な考え方は、核兵器による「相互確証破壊」(MAD)であり、何があっても相手国を破壊し尽くせる核兵器がすでに準備されているのです。そして現在、一番恐れるべきは、核兵器が拡散しており、核兵器が使われる恐れがあるということでしょう。核兵器はアメリカが日本に二度使って おり、ハードルは低いのです。


・「経済相互依存状態は戦争を避けようとする圧倒的なインセンティブを提供することによって平和を促進するはずだ」と想定する自由貿易主義者のリベラルな楽観論(p43)


 戦争の歴史を振り返ってみれば、戦争とは一方が短期間に勝利できると考えるパターンと、追い詰められて緩慢な死よりどちらに転ぶかわからない戦争を選択するパターンがあるとわかりました。


 日本周辺の中国、北朝鮮、ロシアの脅威を考えれば、相手に短期間で勝利できると思わせないことが大事だとわかります。逆に考えれば、短期間で勝利できるように日本の防衛力を削いでおくのが中国、北朝鮮、ロシアの戦略となるのでしょう。


 ただ、相手国が核兵器を持っている場合には、どうすればいいのかといえば、核を含めた「集団防衛」「協調的安全保障」または核兵器の保有なのでしょう。実務的な日本の安全確保を望みます。フリードマンさん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・今から見ればナイーブに見える第一次世界大戦前の楽観主義や、第二次世界大戦に先立つ恐怖に彩られたリアリズム、もしくは核紛争がもたらす本当に恐ろしい将来像(p27)


・戦いを続けるコストというのは、戦いのすべての段階において、敗北を認めるコストよりも低いように見えるものだ(p56)


・イギリスの首相ネビル・チェンバレンはヒトラーとの宥和を最も熱狂的に受け入れた人物であり、「役に立たないお花畑な人物」の代名詞となってしまった(p106)


・2016年後半には、ロシアの航空機が包囲された都市アレッポに救援物資を運んでいた輸送部隊を攻撃している・・病院を計画的に爆撃することも行っている(p323)


・アルカイダが・・・核物質や核装置の獲得を検討していたという証拠があった。さらに、イラン、北朝鮮、リビアに関連技術を販売していたパキスタンのA.Q.カーンの築いていたネットワークが発覚したことも衝撃的であった(p411)


・日本の安倍晋三首相は、2014年に中国が日本の尖閣諸島の領有権の主張を行ったことを受けて、100年前のヨーロッパの状況と現在のアジアの状況が不気味なほど似ていると述べている(p414)


▼引用は、この本からです
「戦争の未来-人類はいつも「次の戦争」を予測する」ローレンス・フリードマン
ローレンス・フリードマン 、中央公論新社


【私の評価】★★★☆☆(79点)


目次

イントロダクション  次に来る戦争のリスク
第一部
第一章 決戦
第二章 勝負のつかない戦い
第三章 不和の家
第四章 残酷さによる勝利
第五章 平和の失敗
第六章 総力戦
第七章 恐怖の均衡
第八章 抜け出せない核時代
第九章 突然の平和
第二部
第10章 戦争の科学
第11章 死者を数える
第12章 民主制度と戦争
第13章 新しい戦争と失敗国家
第14章 古くからの憎悪と「資源の呪い」
第15章 介入
第16章 対反乱から対テロへ
第17章 対テロから対反乱へ
第18章 野蛮行為の役割
第19章 防止策ではなく治療法
第三部
第20章 ハイブリッド戦争
第21章 サイバー戦争
第22章 ロボットとドローン
第23章 メガシティと気候変動
第24章 迫り来る戦争
第25章 「次の戦争」の未来



著者紹介

 ローレンス・フリードマン(Lawrence Freedman)・・・1948年生まれ。ロンドン大学キングスカレッジ名誉教授。軍事史・戦争学の権威。冷戦や核戦略の歴史についての決定版を書いている他、イギリスのフォークランド紛争に関する政府の公史の編纂に関わったり、イラク戦争の是非を問うチルコット委員会のメンバーを歴任。戦略そのもののアイディアについて決定書を記した。


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