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「古代日本の官僚-天皇に仕えた怠惰な面々」虎尾 達哉

2022/07/24公開 更新
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「古代日本の官僚-天皇に仕えた怠惰な面々」虎尾 達哉


【私の評価】★★★☆☆(73点)


要約と感想レビュー

 645年から中大兄皇子と藤原鎌足らが行った大化の改新では、12階をすべて半減して、大臣クラスの最上位6階と最下位の建武を加えています。著者はこれは12階の官僚制度がうまくいっていなかったからと分析しています。


 当時の官僚が怠惰であった理由として著者があげるのは、任官予定者の無断欠席の多さです。そのため、代返といって、欠席者に変わって返事(称唯)をする役職が作られ、実際には無断欠席しているが、任官予定者は出席したものとみなすことまでしていたというのです。


 特に神護景雲2年(768)には、称徳女帝が藤原仲麻呂を武力で駆逐して即位したため、その旧仲麻呂派が任官(異動)を不服として大量の無断欠席(任官拒否)が起こったという。また、天平宝字5年(761)の淳仁天皇の勅には、「辺境の地(陸奥・出羽、西海道諸国など)の国司に任命すると、重病だと称してこれを辞退しようとする」ということが書かれてあるという。


 774年からは東北の蝦夷征伐を行った38年戦争がはじまる頃であり、中央ではこのように天皇の下のこのような官僚たちによって蝦夷が討伐されたということに、意外な印象を持ちました。虎尾さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・律令官人は、実は過剰な君臣観念にとらわれることなく、時に自己の利益を優先させる合理性やしたたかさを持っていた(p5)


・上級豪族が現代のキャリア、中小豪族が同じくノン・キャリアといったところか。現代は能力主義だが、古代は能力以前にまず門地、つまり家柄・氏育ちなのである(p20)


▼引用は、この本からです
「古代日本の官僚-天皇に仕えた怠惰な面々」虎尾 達哉


【私の評価】★★★☆☆(73点)


目次

第1章 律令官人とは何か―前史とその世界
第2章 儀式を無断欠席する官人
第3章 職務を放棄する官人
第4章 古来勤勉ではなかった官人たち
第5章 官人たちを守る人事官庁
終章 官僚に優しかった「専制君主国家」


著者経歴

 虎尾達哉(とらお たつや)・・・1955年、青森県生まれ。京都大学大学大学院文学研究科博士課程中退。博士(文学、京都大学)。専門は日本古代史。著書に『日本古代の参議制』『藤原冬嗣』『律令官人社会の研究』などがある。


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