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「Numbers Don't Lie: 世界のリアルは「数字」でつかめ! 」バーツラフ・シュミル

2022/07/01公開 更新
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「Numbers Don't Lie: 世界のリアルは「数字」でつかめ! 」バーツラフ・シュミル


【私の評価】★★★☆☆(75点)


要約と感想レビュー

100人を救うために1人を犠牲にする

私は理系なので、物事は数字で説明してほしいという思いがあります。著者もこの本のタイトルどおり、「数字」で世界を理解したいタイプなのでしょう。


最初にワクチンについての記載があります。ワクチンの費用と便益(利益)を比較すると何十倍もの利益があるというデータがあるのです。もちろんワクチンの種類によって差があるのですが、ワクチンにはデメリットもありますが、メリットのほうが大きいことを検証しながら開発されているのです。


欧米では100人を救うために1人を犠牲にするということをいとわないという考え方が、当たり前のように浸透しています。1人の犠牲については公的に保証するという考え方なのです。一方で、1人の犠牲を心配して感情的な議論がまかりとおり、100人の命を犠牲する国もあります。こうした命に係るところではデータに基づいた議論ができる国のほうが優れているのではないでしょうか。


予防接種は費用便益比がとびぬけて高い・・医療費・・・得られたはずの賃金、感染による生産性の低下などを考えあわせた結果、ワクチンに1ドル投資するたびに16ドルの便益が見込める(p30)

人間の人口はどんどん増えている

面白いところは、ロシアのウクライナ侵攻で問題となっている小麦の供給量でしょう。1965年から2017年にかけて世界の人口は2.3倍になったのですが、小麦の耕作面積当たりの収穫量は3倍となっているのです。


著者が心配しているのは、小麦の面積当たりの収穫量が横ばいになっていることです。人間の人口はどんどん増えているのに、小麦の収穫量がそれに合わせて増やすことができるのかが、私達の課題なのです。


食料によっては国別の格差もあるし、国の中の格差もあり、難しい問題です。それでもマクロ的に見れば、いずれ大きな問題となる可能性があるということなのでしょう。


茎が短い短稈(たんかん)品種の小麦・・・東アジアとアメリカ大陸などの小麦を交配したもので、1935年に日本で発表された(p121)

数字で考える

エネルギー関係の記載のところではネットで情報を集めるブロガーレベルの内容で少しがっかりしました。広く浅く掘るのか、狭く深く掘るのか悩ましいところですが、10人くらい専門家へ取材すれば、物事の本質は見えてくると思うのです。


わかり易く解説した一冊として入門編としてはこれで十分だと思います。シュミルさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・18歳日本人男性の身長・・・1900年160.0cm・・・2020年172.6cm(p40)


・イギリスのGDPに占める製造業の割合は9%で、カナダは10%、アメリカは11%・・・日本、ドイツ、韓国はそれぞれ、19、21、27%(p80)


・日本は世界のクロマグロ漁獲量の80%を消費している(p133)


・40年前、フランスの成人の約半数以上がほぼ毎日ワインを飲んでいたのに、いまや日常的にワインを飲む成人の割合はわずか16%だ(p143)


・フライト中に命を落とす確率は、陸上でふつうに暮らしているときより1000分の5高くなるだけなのだ。喫煙による死亡リスクはフライト中の死亡リスクより100倍高い。車の運転も似たようなもの(p281)


・奇跡の1880年代・・・水力発電所・・キャッシュ・レジスター・・4ストローク内燃機関・・コカ・コーラの原液のレシピ・・回転ドア・・電動式エレベーター・・自転車・・ボールペン・・電気アイロン(p292)


▼引用は、この本からです
「Numbers Don't Lie: 世界のリアルは「数字」でつかめ! 」バーツラフ・シュミル
バーツラフ・シュミル、NHK出版


【私の評価】★★★☆☆(75点)


目次

第1章 世界の人々――暮らしはどう変化して、どこに向かうのか?
第2章 世界の国々――グローバル時代における力関係を読み解く
第3章 食――身体にも地球にもやさしい「食べ方」とは  
第4章 環境――賢い選択をするために、知っておくべきこと
第5章 エネルギー――燃料と電気をめぐる不都合な真実
第6章 移動――この200年での驚異の進化とこれからの課題
第7章 機械――現代世界の基礎をつくった発明品とは



著者経歴

バーツラフ・シュミル(Vaclav Smil)・・・カナダのマニトバ大学特別栄誉教授。エネルギー、環境変化、人口変動、食料生産、栄養、技術革新、リスクアセスメント、公共政策の分野で学際的研究に従事。カナダ王立協会(科学・芸術アカデミー)フェロー。


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