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「北方領土の謎」名越 健郎

本のソムリエ 2022/05/06メルマガ登録
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「北方領土の謎」名越 健郎


【私の評価】★★★☆☆(72点)


要約と感想レビュー

 ウクライナへのロシア侵攻で、ウクライナ人がシベリア、極東に送り込まれているという報道を読んで手にした一冊です。2014年のロシアのクリミア侵攻時にもウクライナ東部から住民1600人が北方領土に移住したという。


 元々北方四島へのロシアによる入植は、独ソ戦で焦土化したウクライナやベラルーシからの難民が多かったのです。ソ連軍の北方領土占領後、そうした西部のソ連人の入植が進みますが、戦後2年間は日本人とソ連人が共同生活をしていました。北方領土には自分の意思で残った日本人4300人、ソ連人1400人が共同生活していたという。ソ連はその後の1947年から1948年に日本人全員を日本送還するのです。


 その後の北方領土の人口は、1980年代に3万人超にまで増えましたが、1989年のソ連崩壊後、2万2千人程度まで減少し、1994年の地震で産業、生活基盤が崩壊して1万5千人以下に減りました。ソ連時代の北方領土の労働者は、給与が本土の三倍もらえるなど優遇されていました。ところが、1989年のソビエト崩壊により給与が支払われず1994年の地震の復興もままならず、北方領土は荒廃していったのです。


・アネクドート(小話)・・・四島の住民が幸せになる方法は、日本に宣戦布告し、すぐ降伏して日本の捕虜になることだ(p25)


 1990年代、日本は北方領土交渉と並行して、北方領土とのビザなし交流を進め、四島の支援事業や患者受入を行っています。政治的にもエリツィン大統領と平和条約の締結を目指すことで合意するなど最も北方領土返還が近かった時期なのでしょう。


 ところが、その後のプーチン政権になって北方領土は戦争によって得た領地といういことでウクライナと同じように帰属交渉に応じるつもりははいというスタンスに変わります。北方領土はオホーツク海から太平洋への出入口であり、北方領土を手放すことは戦略的にありえないというのがプーチンの考え方だと思われます。


 プーチン政権となった2000年頃から北方領土へのロシアの投資も増え始め、現在は人口1万7千人程度にまで増えています。現在、コロナウイルスの影響でビザなし交流は中止されており、ロシアのウクライナ侵攻によりビザなし交流、自由訪問は停止されています。


 今回のウクライナ侵攻でもウクライナ人を選別し、シベリアや極東への移住を賞金付きで推奨しているとの報道があります。北方領土は再度、ウクライナ難民(ウクライナは拉致と表現)の入植地として活用されるのでしょう。


・対独戦勝記念日はロシア最大の祝日だが、北方領土にとっては9月2日の対日戦勝記念日のほうが特別な意味を持つ(p44)


 北方領土の歴史を復習しました。歴史は繰り返すようにも感じましたし、北海道がロシアに半分支配される可能性があったことも知りました。私達は歴史に学ぶ必要もあるし、できれば悪い歴史は繰り返さないようにし、良い歴史を真似る必要があるのでしょう。


 ロシアがこのような状況では、北方領土が帰ってくるどころか、北海道の防衛は大丈夫なのか不安になるところです。私たちはこれからどうすれば良いのか、よく考えたいと思います。名越さん、良い本をありがとうございました。



この本で私が共感した名言

・スターリンは・・「釧路と留萌(るもい)を結ぶ線以東の北海道はソ連軍が日本軍の降伏を受ける」と提案し、・・トルーマンは・・これを拒否、北海道分割は幻に終わった(p47)


・面積は竹島が0.21平方キロ、尖閣諸島が5.53平方キロに対し、北方四島は5003平方キロ。四島は竹島の約2万4千倍、尖閣の910倍に当たり、千葉県、福岡県に匹敵する(p4)


・島民側もビザなし交流をやめるつもりはない。少ない経費で日本を観光旅行でき、日本製耐久消費財などを買う便宜的な手段となっている(p31)


・千島にいた日本人将校は全員がシベリアへ抑留された(p47)


・国後の古釜布郊外には瀟洒な一戸建てが目につくが、ウニ漁を操る船主らの「ウニ御殿」・・・八割のウニ漁船が違法操業(p189)


▼引用は、この本からです
「北方領土の謎」名越 健郎
名越 健郎、海竜社


【私の評価】★★★☆☆(72点)


目次

はじめに―日本人が知らない北方領土の実情
第1章 知られざる70年
第2章 開発計画の光と影
第3章 島民の生活が第一
第4章 北方領土犯罪白書
第5章 日本への視線
おわりに―北方領土の行方



著者紹介

 名越健郎(なごし けんろう)・・・1953年岡山県生まれ。東京外語大卒。時事通信社に入社。バンコク、モスクワ、ワシントン、モスクワ各支局、外信部長、仙台支社長を経て退社。2012年から拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授


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