「ロッテを創った男 重光武雄論」松崎隆司
2022/04/27公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(77点)
要約と感想レビュー
ロッテというとパクリというイメージしかありませんが、本当のところがどうなのだろうか、という問題意識を持って手にした一冊です。ロッテ創業者の重光武雄こと辛格浩(しんきょくほ)は早稲田高等工学校に学び、真面目に働いて、日本人から資金を出してもらって、油脂工場を運営します。人から信頼される人間だったのでしょう。
戦争で工場は焼けてしまいますが、戦後は原料のひまし油から石鹸、靴墨、ポマードを製造し、闇市で売って財をなしました。その後、ガムに進出し、シェアを拡大。チョコレート事業にも進出していきます。バブル時代も投機に走ることなく、事業に使うために不動産を購入しており、真面目に事業に取り組む姿勢が伝わってきます。
・湿地や水田、埋め立て地などを安く手に入れて、そこに生産設備などを設けて活用していくことを好んだようだ。結果的に、これらの土地は膨大な含み利益を持つようになる(p176)
ロッテの発展の特徴は、常に後発者としてトップの会社を「模倣と工夫」してシェアを拡大してきたということです。悪くいえば、うまくいっている先発企業をパクッてきたということです。もちろん、まったく同じではなくちょっと工夫と改善を加えるのです。
ロッテリアはマクドナルドの模倣。ロッテワールドはディズニーランドの模倣。ホテルロッテは京王プラザホテルを真似る。コリアセブンは、セブンイレブンの真似。「チョコパイ」は森永の「エンゼルパイ」、「雪見だいふく」は「わたぼうし」の真似。ロッテにはパクリ事業がたくさんありますが、この本ではタイムマシン経営と表現しています。
確かに絶対失敗しないために、先行企業を研究し、模倣し、工夫を加えているのは事実なのでしょう。松下電器も真似した電器と言われたこともあるし、アンドロイドOSもiPhoneの真似ですから。
・重光は、日韓市場を股にかけた「真のタイムマシーン経営」を成功させた先駆けである(p384)
韓国ロッテグループは、韓国の第5位の財閥となっています。2015年のデータでは韓国ロッテの売上高は6兆5千億円、日本ロッテの売上高は3000億円となっています。日本で稼いだ資金を韓国に投資していくことで、韓国の巨大財閥に成長したということです。ロッテの印象としては、確実に利益をあげていくために合法の範囲で真面目に経営に取り組んでいるという印象でした。パクリについても法的に罰せられていませんので合法ギリギリを狙っているのでしょう。
ロッテは創業者が亡くなった後もタイムマシン経営を続けていくのでしょうか。今後もロッテを見守っていきたいと思います。松崎さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・日本企業に多く見られた「模倣と工夫」の精神に通ずるものだが、それを徹底した(p14)
・「ロッテのガムは、お口の恋人!」・・このフレーズ、ドリフターズの仲本工事の母親が応募した案を重光が採用したと伝えられている(p145)
・「世界で一番民族差別の激しいのは日本においてない・・・むしろ韓国人で良かったと思う」と激しい心情を吐露したこともある重光(p172)
・食品でブランドとして国名を付けているのはガーナと明治のブルガリアヨーグルトだけである。ガーナ産カカオを主に使うため、黙認されている(p190)
・本来誠実で、クリーンな朴大統領から『7億円出せ』と要求がありました。政権を維持していくためにはやむを得なかったのかもしれません(p207)
・韓国ではこうした建物を任せる場合はだいたい3%ぐらいは総責任者のポケットに入ることになっている(p306)
【私の評価】★★★☆☆(77点)
目次
はじめに―故郷に錦を飾る
1 青雲の志を胸に
2 「ガム」でつかんだ成功
3 ガーナチョコレートと韓国進出
4 日韓逆転の1980年代
5 韓国有数の財閥への道
著者経歴
松崎隆司(まつざき たかし)・・・経済ジャーナリスト。1962年生まれ。中央大学法学部を卒業。経済専門出版社を退社後、パブリックリレーションのコンサルティング会社を経て、2000年、経済ジャーナリストとして独立。企業経営やM&A、雇用問題、事業承継、ビジネスモデルの研究、経済事件などを取材。『エコノミスト』『プレジデント』『サンケイビジネスアイ』などに寄稿
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