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「ゴリラからの警告「人間社会、ここがおかしい」」山極 寿一

2022/04/22公開 更新
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「ゴリラからの警告「人間社会、ここがおかしい」」山極 寿一


【私の評価】★★★☆☆(71点)


要約と感想レビュー

 著者は京都大学霊長類研究所でゴリラの研究をしています。ゴリラの特徴は、人間と同じようにオスが子どもの世話をすることです。これは霊長類のなかでは珍しいことだという。ゴリラは10頭前後の家族的な集団で暮らしていて、オスは母親たちが置いていった子どもたちの面倒を見るのです。ゴリラはそれだけ人間に近いのです。


 しかし、ゴリラの赤ちゃんは3~4年も母乳を吸って育つので、集団で赤ちゃんを育てる必要があります。子どもの世話をするという点でゴリラと人間は似ているのですが、人間の赤ちゃんは2年ほどで離乳するので、子育ては楽になります。つまりジャングルから出た人間は、ゴリラよりたくさんの子供を生み育てるように進化したのです。


・ゴリラはいつも仲間の顔が見える、まとまりのいい10頭前後の群れで暮らしている(p67)


 その他にも人間は類人猿とだいぶ違う生活をしています。まず、人間を除くすべての類人猿が毎晩、樹木の上に一人用のベッドをつくって眠っているのに対し、人間は家を作ったり、ベッドのような道具を作って寝ます。また、複数の家族を含むコミュニティ(共同体)を作るのは、ゴリラやサルなどの類人猿には見られない人間だけの特徴です。


 ヒトはジャングルを出て、他の類人猿とは違い、道具を使い、共同体を作って、生き延び、勢力を増やしてきたということです。ヒトは社会的な動物といわれるいわれでしょう。


・すべての類人猿が毎晩樹上に一人用のベッドをつくって眠る(p25)


 著者は2014年から京都大学総長、2017年から日本学術会議会長を兼任しています。この本の後半はタイトルの「人間社会、ここがおかしい」というように人間を研究しているような内容となっています。なぜ、人間は環境を破壊するのか、なぜ、人間は戦争をするのか、なぜ、経済格差があるのか、今一度確かな目で世界を見渡してほしい、と訴えています。


 そうした理想主義視点で日本学術会議は地球温暖化への対応としてCO2排出実質ゼロ、軍事研究拒否の声明を出しているのだと思いますが、今一度確かな目で世界を見渡してほしいとも感じました。山極さん、良い本をありがとうございました。



この本で私が共感した名言

・人間はサルたちのように胃腸をもち、毎日食べる必要がある。肉食獣やクジラのように何日も何カ月も食べずにいることはできない(p12)


・群れで暮らすサルたちは、食べるときは分散して、なるべく仲間と顔を合わせないようにする(p15)


・ニホンザルは・・・相手が自分より強ければすぐに敗者の態度を示し、それ以上争いがエスカレートしないようにしている(p56)


・日本では15歳以下の子どもの数より飼われている犬猫の数が上回ったといわれている(p45)


・「他人にしてもらいたいと思うことをせよ」という黄金律は、共同体の内部のみに通用する話なのだ(p156)


▼引用は、この本からです
「ゴリラからの警告「人間社会、ここがおかしい」」山極 寿一
山極 寿一、毎日新聞出版


【私の評価】★★★☆☆(71点)


目次

第1章 なぜ人は満たされないのか
第2章 しなやかな人間を創る教育とは
第3章 人類が見落としている平和への近道



著者経歴

 山極寿一(やまぎわ じゅいち)・・・1952年、東京都生まれ。霊長類学・人類学者。京都大学総長。京都大学理学部卒、京大大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学、理学博士。ゴリラを主たる研究対象にして人類の起源をさぐる。ルワンダ・カリソケ研究センター客員研究員、日本モンキーセンターのリサーチフェロー、京大霊長類研究所助手、京大大学院理学研究科助教授を経て同教授。2014年10月から京大総長。2017年6月から国立大学協会会長、2017年10月から日本学術会議会長を兼任


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