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「投資される経営 売買される経営」中神 康議

2021/05/25公開 更新
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「投資される経営 売買される経営」中神 康議


【私の評価】★★★★☆(80点)


要約と感想レビュー

 財務を勉強しようと手にした一冊です。読んでみると財務というより、ファンド運営者による投資家目線の経営改善提案でした。著者が社長を務める「みさき投資」の特徴は、成長の可能性のありそうな会社に対し、株主として経営改善提案を行っていくというもの。著者は「働く株主」と表現しています。


 例えば日本で圧倒的なシェアを持つベビー用品の会社に、海外市場調査や海外競合分析に基づく海外進出案を提案し、海外売上比率を10→50%へ拡大させ、配当が5倍となったという。株主総会で株主提案はすべて否決され、無視されるのが普通ですが、「みさき投資」の場合は大口株主としてコンサルタント会社レベルの提案を行うのです。


・自分が大好きな会社・大好きな経営者に投資させてもらい、「会社にとってなにが良いことなのか」を一生懸命考えて提案を持っていく(p4)


 会社員として参考となるのは、海外の企業との比較でしょうか。


 海外の優良企業は、本業で稼ぐ力が日本企業よりも高いという事実。
 日本企業でも細分化した管理会計や集中戦略によって収益性を高めている会社もあること。
 日本では社債市場の厚みがないため、日本企業は実質的に株式か銀行借入でしか資金調達できない現実。


 銀行の貸し剥がしが何度も行われたため、実質無借金経営の会社が増えているが、金利水準が史上最低水準であることから、貸し剥がしリスクを考慮しながら資本コストを下げることが可能など。


・わが国ではこの20年程度の間に3回程度、「貸し剥がし」と言われる銀行行動があったようです・・・「金輪際、借入は行わない」という考えを経営者が固めることも無理からぬことかもしれません・・・今は人類史上、最も借入金利が低い時代にあります・・・資本構成のあり方をもう一度冷静に考えてみることに意味はあるのではないでしょうか(p201)


 大口株主として経営者に対して高いレベルのコンサルティングを行うというのは、画期的な考え方だと思いました。コンサルティング会社が契約した会社の株式を保有して、責任を共有してコンサルしているようなものなのですから、運命共同体として無料でコンサルしてくれるのはありがたい。


 もう少し財務について勉強してみます。中神さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・どんなに優れた投資家でも毎年10%のリターンを確実に出し続けるのは困難です(p21)


・日本の投資家には短期投資家が多い・・・2014年の東証の売買回転率(株式売買代金/時価総額)は133%だったという数字です。ニューヨークの42%やスイスの56%と比較してみると、かなり高い(p30)


・経営者の変遷や現在の経営陣の人物像なども調べます。過去10~20年程度に遡って新聞・雑誌の記事検索を行い、経営陣がどういう経営哲学を持っているのか、どのような手を打ちどんな成功や失敗をしてきたのか(p75)


・「在庫は悪」という感覚や、「売掛サイトは延びきっていないか」という感覚を大事にし、バランスシートの隅々にまで目を行き渡らせて律する経営が「投資される経営」です(p196)


・日本企業のROEが低り理由は明らかです・・・「本業で利益を上げる力」が弱く、欧米企業の半分程度しかないことにあるのです(p156)


・3Mは56期連続増配ですから花王の2倍以上です・・・長期で営業利益率20%超を維持しているのです(p141)


・オムロン・・・自社の事業を100近い「事業ユニット」に細分化しました。そしてROICと成長率で各事業ユニットの評価を行い、選択と集中を機動的に実施してきました(p120)


・半導体製造装置メーカー・ディスコ・・・「WILL会計」と呼ばれれる、管理会計制度・・・従業員一人ひとりのレベルまで可視化しています(p124)


・亀田製菓の田中通泰社長(当時)が「8大ブランド戦略」を打ち出し、「ハッピータン」や「柿の種」といった有力商材だけに特化することで収益性を大きく高めた事例もあります(p172)


・エーザイでは、配当更新の策定に「DOE(株主資本配当率)」という指標を使っています・・・安定したリターンを求める長期投資家を惹きつけやすくなるのです(p133)


・今現在、日本の企業経営者の資金調達の手段は2択になっています。株式市場に嫌われがちな株式での資金調達か、いざとなったら取り上げられるかもしれない銀行借り入れしか、実質的に存在しないのです(p205)


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▼引用は、この本からです
「投資される経営 売買される経営」中神 康議
中神 康議、日本経済新聞出版


【私の評価】★★★★☆(80点)


目次

第1章 なぜ投資家は分かりづらい行動をとるのか―投資家生態学
第2章 会社には(当たらずとも遠からずの)「絶対価値」がある
第3章 持続的に価値が上がる会社とはどんな会社か
第4章 「投資される経営」―持続的価値向上の事例集
第5章 「投資される経営」のための基本ガイド
おわりに 投資家という存在の意味


著者経歴

 中神 康議 (なかがみ やすのり)・・・みさき投資株式会社代表取締役社長。大学卒業後、経営コンサルティング業界に入る。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)、コーポレイトディレクション(CDI)のパートナーとして、約20年弱にわたり幅広い業種で経営コンサルティングに取り組む。数多くのクライアント企業価値向上の実体験を元に、『働く株主』(R)投資モデルの有効性を確信。2005年に投資助言会社を設立し、上場企業への厳選長期エンゲージメント投資活動を開始。2013年にはみさき投資株式会社を設立し、引き続きエンゲージメント投資に取り組んでいる。


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