「逆ソクラテス」伊坂幸太郎
2021/03/29公開 更新

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【私の評価】★★★★☆(88点)
要約と感想レビュー
小説はあまり読まない私ですが、東北大学出身で仙台を舞台に描いてくれる伊坂さんには親近感があって手にした一冊。逆ソクラテスって何?と思っていたら、5つの短編小説の最初のタイトル。
小学校の先生がある生徒を駄目な子だ、と扱っていて、それに反発した子どもたちがソクラテスは「自分がすべて知っているわけではないことを知っていた」と話している。その先生は逆ソクラテス、ということです。
子どもたちは先生が間違っていることを証明しようといろいろ作戦を立てるのですが、どうなるのでしょうか。
・教師期待効果・・・先生が、『この生徒は将来、優秀になりそうだ』と思って接していると、実際に優秀になるんだって(「逆ソクラテス」p23)
最後の「逆ワシントン」も面白い。ワシントンとは、アメリカ初代大統領のワシントンが子どもの頃、父の大切な桜の木を切ってしまって正直に告白したら褒められたというお話。
母親からワシントンのように真面目で約束を守る人間が勝つと言われてそれを信じた僕は・・・どうなるのでしょうか。
実はワシントンの話の頃には桜の木はアメリカになかったなど裏の話もあるのですが、世の中すべて理論どおりにいくものではないのです。そこが人生面白いところなのでしょう。
・もしかしたら、大人になって大怪我して、担ぎ込まれた救急病院の担当医が、昔、自分がいじめていた相手だったら、どうする?怖くない?(「逆ワシントン」p244)
小説なのに著者が大人になって学んだことを織り込んで、子どもの視点でドラマを作っていく点はうまいなと、思いました。人間完璧ではないし、育ち方も違うし、それぞれ事情があるから、思い込みで判断してはいけない。
弱いものをいじめていると世の中狭いので後で復讐されることを考えると怖くてできないとか。人生とは、おもしろいものなだ、と思わせてくれる一冊ということで★4としました。
伊坂さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・大人になってモテるのは足が速い男じゃないんだぞ・・・じゃあ、大人になったら誰がモテるの・・・金を持ってるやつだ・・・でもな、最終的には、威張らないやつが勝つよ(「スロウではない」p69)
・目の前が真っ暗になるほどの絶望を覚えた小学五年の自分に教えてやりたかった。大人になって笑って話せる時が来るぞ、と。(「スロウではない」p74)
・バスケの世界では、残り一分を何というか知ってるか?・・・永遠だよ、永遠(「アンスポーツマンライク」p175)
・子育ては初めてだし、何が正解なのかいつも分からない・・・だから謙介も親になったら、お父さんたちの良かった部分は真似して、駄目だった部分はやめるんだぞ。そうすれば、ほら、だんだん完成形に近づいていくんじゃないか?(「逆ワシントン」p246)
【私の評価】★★★★☆(88点)
目次
「逆ソクラテス」
「スロウではない」
「非オプティマス」
「アンスポーツマンライク」
「逆ワシントン」
著者紹介
伊坂幸太郎(いさか こうたろう)・・・1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、「死神の精度」で第57回日本推理作家協会賞(短編部門)、08年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞・第21回山本周五郎賞を受賞。他の著書に『重力ピエロ』『終末のフール』『残り全部バケーション』『AX』『ホワイトラビット』『クジラアタマの王様』、阿部和重氏との合作『キャプテンサンダーボルト』などがある。
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