ヒトラーは偽札を作っていた「ヒトラー・マネー」ローレンス・マルキン
2021/01/03公開 更新本のソムリエ [PR]
Tweet
【私の評価】★★☆☆☆(65点)
要約と感想レビュー
第二次世界大戦の最中に、ナチス・ドイツは敵対するイギリスのポンドの偽札を偽装していたという。偽札が出回ることでポンド札の信用が落ち、ポンド札を使うことで実益もあるということで、効果はあったようです。もちろんポンド札には偽札防止のための秘密の目印があるのですが、その秘密をイギリスは外国に開示しなかったため、イギリス本土ではなく大陸でポンド札が出回ったのです。
1943年から偽札の責任者となったドイツのフリードリヒ・シュヴェントは、偽札を額面の三分の一で売却することとし、実行部隊の部下の取り分は額面の25%だったという。ドイツの利益は差し引き8%でした。1944年、ポンド札の流通総額は10億ポンドでしたが、偽札はその13%にも達していたという。
こうした敵国の通貨を偽造することは、イギリスでも先例があったのです。1794年、イギリス首相のウイリアム・ピットは、フランス革命政府のアシニア紙幣の偽物を大量に印刷しています。フランスのナポレオンもイギリスのポンドを偽造して反撃したという。
偽札は作るまでが大変ですが、通貨の信頼を下落させるには効果的な作戦なのでしょう。北朝鮮が偽ドル札を作っているようですが、戦争行為に近く大丈夫なのでしょうか。マルキンさん、良い本をありがとうございました。
無料メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」(独自配信) 3万人が読んでいる定番書評メルマガ(独自配信)です。「空メール購読」ボタンから空メールを送信してください。「空メール」がうまくいかない人は、「こちら」から登録してください。 |
この本で私が共感した名言
・ゲシュタポ本部・・・財務省の会議室で検討されようとしている計画は、ドイツ帝国銀行で、何百万、何千万という偽のポンド紙幣を刷って敵国イギリスの上空から散布し、あとはイギリス経済が崩壊するのを黙って見ていよう、という単純明快なものだった(p16)
・覇権国なき戦間期に、通貨は武器となってしまった。各国政府は自国製品を守るために通過を引き下げ、関税を引き上げるなどの通商操作を行ったが、これは他国から雇用と利潤を奪うことにほかならなかった。いわゆる『近隣窮乏化政策』である。競争力強化のための通貨引き下げを最初に行ったのは、ドイツだった。1920年代に入るとフランスが続き・・・(p25)
・ヒトラーは・・・1938年にはイギリスとフランスを脅迫してチェコスロヴァキアを勢力圏に納める。そうやってチェコさえ手に入れば、ヨーロッパに平和が戻るというのがヒトラーの殺し文句だったわけだが、これがじつは真っ赤な嘘だった。同じ年のうちに、ナチス・ドイツ軍の精鋭がウィーンに進軍・・(p28)
【私の評価】★★☆☆☆(65点)
目次
帝国の陰謀
アンドレアス作戦の興亡
大英帝国への偽札攻撃
古きよきアメリカの精神
ベルンハルト作戦の誕生
偽造チームを選抜する
第十九棟の囚人たち
国境なき通貨戦争
華麗なる偽札請負人
偽ポンド札と諜報戦
偽ドルの行方
終戦、死の行進
エピローグ
著者経歴
ローレンス・マルキン(Lawrence Malkin)・・・ニューヨーク生まれ。朝鮮戦争に歩兵として参加ののち、陸軍本部でプレス・リリースの作成に従事。その後AP通信、週刊誌「タイム」、日刊紙「ヘラルド・トリビューン」などの特派員として、長年にわたりロンドン、パリ、ワシントン、ニューデリー、マドリード、国連などをカバーする。ロンドンからの金融報道に対し、海外特派員協会からの賞を受ける。戦後国際通貨史上の大事件である、ポンドの切り下げとニクソン・ショックを現場から報じる。1990年代ニューヨークに戻り、ヘラルド・トリビューン紙の金融記者としてウォール街の動静を報じる。
この記事が参考になったと思った方は、
クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓
人気ブログランキングへ
この記事が気に入ったらいいね!
コメントする