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【書評】東インド会社は国家を経営していた「マネジメントの文明史 ピラミッド建設からGAFAまで」武藤泰明

2020/12/31公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー


大航海時代が株式会社の原点

会社の経営(マネジメント)という視点で、世界の5000年の歴史を見ていこうという意欲的な一冊です。


大航海時代、高リスク高リターンの貿易船を出航させるために、小口の投資家から金を集めました。航海から得られた利益は投資家に配分されるのですが、こうしたお金の集め方が株式会社の原点となったのです。


ただし、英国は南海会社を許可して世界初の「株式バブル」を生み、この大失敗に懲りて株式会社を禁止するという二重の失敗をしています。


大航海時代のはじまり・・・オスマン帝国は、アジアと欧州の間で活動する商人たちに、高い関税をかけるようになりました・・・胡椒の価格が高くなって、欧州は困り始めた。それなら胡椒の産地と直接取引をしたいと考えるようになりました(p88)

会社と国家の密接な関係

面白いのはイギリスの東インド会社は、株式会社でありながら、実質的にインドという国を経営していたということです。東インド会社の収入の半分は税金で、タバコ、アヘン、塩、アルコールの専売で稼ぎ、費用として徴税費、司法、税関、軍事費などが並んでいます。


イギリスは東インド会社を通じて植民地インドを経営し、税金を徴収し、軍事力を整備し、アヘンを栽培して中国に輸出して儲けていたのです。麻薬カルテル顔負けですね。


そういえば、シリコンバレーに新興企業が集まったのは、スタンフォード大学等に対して軍事予算が投入されたことだという。レーダー、コンピュータ、エレクトロニクスのベンチャーが成功していったのです。


東インド会社の収支・・・収入は多い順に地租税(54%)、アヘン(14%)、関税(8%)でした・・・費用を見ると司法関連の項目の支出があります。どう見ても、東インド会社は国そのものなのです(p106)

違法でなければなんでもやる

貿易の基本は、安全な寄港地を遠方につくり、仮に現地民に反発されたら武装集団化して征服するというものです。海賊とは武装した商人であり、基本は農業・漁業と交易で、最悪でも略奪と征服すればいいと考えていたわけです。


現代社会は、税金を収めないGAFAに対して各国からの風当たりが強いのですが、業務においてもGAFAは「えげつない」ことをしているらしい。例えば、アマゾンはクラウド事業は黒字で、ECは赤字です。ライバルの商品を低価格で販売して、その会社を買収したりしているのです。


欧米人は違法でなければなんでもやるので、日本人には「えげつない」と見えるのでしょう。経営学の一般教養として幅広い知識を得ることができる良書だと思いました。武藤さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・ドイツの場合は、国を代表するような会社が歴史の長い同族会社という場合が見られる点が、ほかの国と違うところ・・・光学装置のツァイス、自動車のBMW、自動車部品のボッシュなどです(p236)


・労働者の解雇が容易な順に並べると、米、日、独になります。ドイツの場合、明確な理由がなければ解雇できません(p243)


・英国は「発明家」、ドイツは「職人、技術者」が産業革命を推進したのに対して、米国では19世紀初頭に、すでに「経営者」が登場していたように思えるのです(p264)


・米国企業は、万国博覧会に驚くようなものを出品します。それが互換性部品・・・19世紀になると農機のほか、家庭用ミシン、金銭登録機、そしてタイプライターが量産されるようになりました・・・部品が規格化されていると、壊れた部品を取り寄せてユーザーが自分で取り替えれば済むようになります(p268)


・19世紀初頭に米国で割賦(かっぷ)販売が始まります。最初は家具。それが50年代に入ると、ミシンのシンガー・・・致命的な問題は、遠くに住んでいて顔が見えないことです。信用力もはっきりとしません・・・この問題を解決したのがフランチャイズ方式なんです(p272)


・リナックスやウィキペディアのビジメスモデルは、企業のR&Dマネジメントにも影響を与えました。ひとことで言えばオープン・イノベーション。イノベーションの担い手を、社外まで拡張して求めていくということです(p369)


・日本のリバース・イノベーション・・・小型店の成功と言えばコンビニ・・・さらに言えば、日本の小型車・富士ゼロックスの小型コピー機(p376)


・研究開発はリスクがあって、四半期利益を求める投資家との間には深い溝がある。何がそれを埋めていくのか・・・イノベーションを起こした企業を買う。GAFAもたくさんの会社を買収しています(p388)


▼引用は、この本からです

武藤 泰明、日本経済新聞出版


【私の評価】★★★☆☆(79点)


目次


1 会社以前
2 大航海時代と会社の成立
3 英国―産業革命の成立・発展・衰退
4 ドイツ―大企業と重工業の誕生
5 米国―マネジメントと経営者の創出
6 個人によるイノベーションと非営利組織の時代



著者経歴


武藤泰明(むとう やすあき)・・・1955年広島県生まれ。東京大学大学院修了後、三菱総合研究所を経て、早稲田大学教授。日経ビジネススクールでは会社役員・経営幹部向けシリーズの代表を務めている。専門はマネジメント。公職は(特非)日本ファイナンシャル・プランナーズ協会常務理事、(公財)笹川スポーツ財団理事、(独)鉄道・運輸機構特別顧問ほか


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