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「ウクライナ人だから気づいた日本の危機」グレンコ・アンドリー

2020/06/15公開 更新
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【私の評価】★★★★★(93点)


要約と感想レビュー

ウクライナはスパイ天国だった

ウクライナは2014年、ロシア軍の侵攻によりクリミア半島をロシアに併合され、領土の東側をロシアに実効支配されました。ウクライナ人の著者は、侵攻される前のウクライナ人は、今の日本人と似ていたというのです。当時のウクライナは、スパイ活動し放題のスパイ天国だったのです。軍隊はなくていい、と主張する人がいたのも同じ。集団的自衛権への反対が根強かったし、愛国者にファシストというレッテルが貼られたのです。軍隊の人気がなく、軍事費が増えなかった。売国奴が大統領になってしまった。本当にウクライナと日本の政治的環境は似ていたのです。


ウクライナも日本のように、国防意識皆無で、軍隊不要説が蔓延していたのです。平和ボケです。ウクライナ国民と日本人が似ているのにびっくりしました。安全保障について無知で、防衛費を削り、基地の設置に反対する日本人は、ウクライナと似ていることを直視しなくてはならないのでしょう。


・現在の日本人は、戦争が起きる前のウクライナ人と同じ思考・・・中国は拡張主義や侵略主義を実行している。既にブータンなどから実際に領土を奪っており、東シナ海や南シナ海で明らかに領土を拡張する準備をしている・・・同様のことが日本に起こり得ないとなぜ断言できるのか(p144)


マスコミ、政治家、官僚が世論を操作

ウクライナではマスコミ、政治家、官僚にロシアに好意を抱く勢力が存在し、世論を操作していたという。軍拡・集団的自衛権に反対。傲慢な隣国を大事な相手と呼ぶ。情報操作が行われていました。


日本でもマスコミ、政治家、官僚に共産・独裁国家に好意を抱く勢力が存在し、世論を操作しています。防衛費増加・集団的自衛権に徹底反対。傲慢な隣国との友好が大事という報道が多く、それに反対の意見にはファシスト、ネトウヨ、差別と批判する。ウクライナでも日本でも、パターン化された組織的な情報活動を感じさせます。


ウクライナの指導者たちは、すべての核兵器を放棄するという決断をしました。日本の場合には、日英同盟を破棄するという失敗をした歴史があります。仮に民主党政権が続き、日米同盟を破棄するようなことがあれば、日本はウクライナのようになっていたのかもしれません。


・日本の政治事情はウクライナの政治事情に似ている・・・愛国者をファシスト、ナチとレッテル貼り・・・政界、行政機関、軍隊、警察、保安庁、報道機関などにも、ロシアに好意を抱き、意図的にロシアに都合のいいようにウクライナの国益を損ねている人間や組織が存在する(p79)


NATO加盟国は第三者同士の戦争に巻き込まれたことがない

日本のマスコミには、「こちら側が武装しているからこそ、相手を刺激して、相手も武装する。そして軍拡競争が始まる」とか、「武装しないで話し合おう」などと主張している評論家が存在しています。ウクライナがそうだったように、日本の防衛力を弱くして、中国、ロシア、北朝鮮が侵略する準備をしているのではないでしょうか。


ウクライナ情勢については、マスコミではあまり報道されないので、報道されないところに真実がありそうだ、と感じました。なぜ、ウクライナがNATOに加盟しようとしたのか。それは、NATO加盟国は一度も第三者同士の戦争に巻き込まれたことがないからなのです。安保法制の議論の中で、集団安全保障で「第三者同士の戦争に巻き込まれる」と主張していた人は嘘を主張していたということなのです。


ウクライナの状況をしっかりと勉強して、左翼政党や左翼マスコミの嘘を見抜くという視点も大事なのでしょう。ウクライナの情勢をもう少し勉強していきたいと思います。アンドリーさん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・2010年、ついに売国奴が大統領に当選してしまった・・・クリミア半島に駐留していたロシアの黒海艦隊の駐留期間を・・25年間も延長した(p91)


・「ロシアは都合がいい時だけ約束を守るが、都合がわるくなったら約束を平気で破る」と言われている。そうではない。ロシアは最初から約束を守るつもりはまったくない・・・ロシアは歴史上、自ら結んだ条約を何度も平気で破ってきた(p19)


・ロシアがよく使うやり方・・・ロシアの権益がどこにもないところへ侵入してきて、権益の存在を主張する。そして、その後「妥協しよう」と言いだして、その権益の半分を相手に認めさせようとする。それは形としては妥協に見えるが、実はロシアが一方的に利益を得るだけだ(p31)


・独裁国家の理不尽な要求を呑んでも、最終的に攻撃を免れることはできない・・・日本でも、隣の独裁国家の理不尽な要求に対して、おとなしく受け入れて、相手を「刺激しない」ことを主張する人が多い・・・独裁国家は限度を知らないので、無茶な要求が通っているということを感じたら、さらに無茶な要求を次から次へと突きつけるのだ(p141)


・中国、南北朝鮮の反日プロパガンダ・・・史実に基づいていない虚偽を世界中に拡散し、国際的に日本の印象を悪化させている。また沖縄では、存在しない民族の問題を扇動し、日本本土と沖縄県の分断工作を企み、国際的に沖縄県の分離を正当化しようとしている(p136)


・中国はチベットはウイグルで虐殺や同化政策など、極悪非道行為を現在も行っている・・・将来、日本が中国の侵略を受け、占領された時に、他国が、「日本はかわいそうだが、ウチは中国との商売があるから仕方ない」と言って、日本を支援することを拒否したら、日本人のみなさんはどう思うか(p226)


・1970年代以降、日本は対中ODAを始め、さまざまな形で中国を支援してきた・・・「恩を売ったら、中国は親日になるだろう」という夢を抱えながら。しかし、結果は真逆だった。日本の支援で強くなった中国は、侵略の牙を日本そのものに向けたのだ。前世代のお花畑思想のツケが現世代に回ったのだ(p29)


▼引用は、この本からです

グレンコ・アンドリー、扶桑社


【私の評価】★★★★★(93点)


目次

第1章 ロシアにダマされっぱなしの日本
第2章 ウクライナ侵略に成功したロシアのハイブリッド戦争
第3章 国家を死に至らしめる14の「政治的な病」
第4章 ウクライナはこうして共産主義を排除した
第5章 ウクライナ人に日本の諸問題はどう映るか
終章 日本こそ次の世界のリーダーになるべき



著者経歴

グレンコ・アンドリー(Gurenko Andrii)・・・国際政治学者。1987年、ウクライナ・キエフ生まれ。2010年から2011年まで早稲田大学で語学留学。同年、日本語能力検定試験1級合格。2012年、キエフ国立大学日本語専攻卒業。2013年、京都大学へ留学。2019年3月、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程指導認定退学。アパ日本再興財団主催第9回「真の近現代史観」懸賞論文学生部門優秀賞(2016年)。ウクライナ情勢、世界情勢について講演・執筆活動を行なっている。


ウクライナ関係書籍

「物語 ウクライナの歴史―ヨーロッパ最後の大国」黒川 祐次
「ウクライナ人だから気づいた日本の危機」グレンコ・アンドリー
「暗黒地帯(ダーク・ゾーン)(上・下)」トム・クランシー
「悲しみの収穫―ウクライナ大飢饉」ロバート・コンクエスト


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